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naki's blog

羅生岬_(1686文字)

外は雨。

干ばつが続いているので、

待望の雨である。

もっと降ってほしいと願っている。

昨夜、Blue誌の原稿を無事に編集長に渡し、

昨日に引き続き、読書半日としてみた。

今日は夢枕獏さんの『陰陽師、付喪神ノ巻』と、

北方謙三さんの『岳飛伝、第一巻、三霊の章』。

0525

そして芥川竜之介の初期作品である『羅生門』と『邪宗門』を。

この邪宗門の文章内に「うらうえ」という単語があり、

おぼえているような習ったような、はて?

辞書を引いてみると「裏表」という意味の、

昭和初期によく使われていた言葉だとあった。

こうして使われる表現がかすれるように消えていき、

その代わり、

新しい言葉が出現していくのはいつの世のならわしでもある。

でも特にこうした慣用句には、

そんな消失してしまうような、

つまり水性インクのような呪(しゅ)や宿命をまとっているように思えてきた。

邪宗門の文体と時代に引き込まれながら、

当時は誰もが知っていた

「陰陽師の護符」ということまでさかのぼり、

その時代の娯楽要素も含めて考えると、

それは多くの読者が、

芥川作品群に酔いしれたことは容易に推察できる事実だろう。

突然、

これら芥川作品の文体、つまり文章構成が、

翻訳的でもあるということに気づいた。

手塚治虫先生の作品を読むと、

視覚的、ストーリー、そして時間の進み方等々が、

映画的であることに対して、

芥川龍之介は、

「映像を闇の中で結ぶような文学」

という世界を貫き通したのだろうか。

とまぁ、こちらのことだが、

長い旅路であった原稿を書き終えると、

このように文章世界の中に浸ってしまうことが多々ある。

読み方もとらえ方も自由なのだと、最近わかってきた。

そこで、いつものことではあるが、

文章の勉強も兼ねて、

羅生門の文体で波乗り風に書いてみた。

題して『羅生岬』であります。

さてさて、はじまりはじまり…. 。

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羅生岬

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ある日の暮方の事である。

一人の風月人(サーファー)が、

羅生岬(フォードアーズ)で夕焼けを待っていた。

ささやかな岬には、この男のほかに誰もいない。

ただ、新月干潮で露出した、

大小の玉石に、青矢太刀(アローヘッド)が置いてある。

羅生岬が、聖暮綿帝(サンクレメンテ)にある以上は、

この男のほかにも、

波乗りをする滑走女(かっそうめ)や浮遊人(ふゆうびと)が、

もう二三人はありそうなものである。

それが、この男のほかには誰もいない。

この淡く、

それでいて濃い夕陽空が、

風月人のSentimentalismeに影響したのかどうかはわからないまま、

闇が、崖の方からゆっくりと降りてきた。

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翌日となって、

風月人は、

満潮のたよりない斜面をこの羅生岬で求めた。

沖風となる弱い北西風をまといながら、

海中着(ウエットスーツ)を着て沖に漕ぎ出ていった。

八尺四寸という長いような短いような太刀だが、

膝漕(ニーパドル)するに足りているようで、

左右に小さく傾(かし)ぎながら砂浜を背にしていく。

風月人はうねりを見つけたようで、

途端(とたん)に青矢太刀を陸側に回し、

力いっぱい数度漕ぎ、すばやく両手を付き、

海の上を弾(はじ)くようにその青い矢のような、

それでいて太刀のような木片に飛び乗った。

そうして、そこから、青矢太刀と一体となって、

波の勢(いきおい)いと、折からの春風にまかせて、

岸に向かって矢のように向かっていった。

うねりは一度たわみ、大きくなったかと思うと、

散らばらずに白波となって、

海面にはいつくばるように青矢太刀を追っていく。

鴎(カモメ)が3羽南から飛んできて、

風のやってくる方角に向かって去っていった。

いつのまにかあたりは海と、

曇天(どんてん)たる空が拡がるばかりである。

さきほどまでここにいた風月人と、

青矢太刀はどこにも見えなくなっていた。

その行方(ゆくえ)は、誰も知らない。

DCIM100GOPROG0294024.

photo by ©Tuckertuna

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(タイラーのアトリエ。絵はここまで進んでいます)

2art_David_21

私の早朝アート2種。

2art_Lamborghini Aventador LP700-4

春一番が通過したようですね。

風世界でも春認定日。

良い週のはじまりとなりますように!

今週もどうぞよろしくお願いします。