Tyler Warren, 10 min before sunset.
陽が落ちるときにパドルアウトして、
1本だけの波を狙ったタイラー。
うまくいい波に乗れると、無上の喜びとなる。
このオリジナルアイディアは1988年のノースショア。
23歳の私は、
ラニアケアで長いグレイトセッションを得て、
最後の1本を待っていた。
すると、
チャンズの方からトム・カレンがロングボードに乗ってパドルアウトしてきた。
「わートムカレンだなんという幸運だろうか!!」
と句読点なしで興奮して、
夕焼けに染まった彼の背中を見ていた。
すぐに一番良いセットがやって来た。
それをスルスルとピークに入っていって、
優雅に、そして完璧に乗っていった。
波の後ろから見とれていると、
そのままショアブレイクまで乗っていって上がっていってしまった。
「1本だけ!」
なんとかっこいいのだろうか!
時折その真似をしていたが、
それと同様のことをタイラーがやっていたので、
その27年前のことを思いだした夕焼け時間。
トム・カレンを継承するタイラーのボード。
私がそれに乗るのは、
そのときの記憶があるからなのだろうか。
□
最近よく登場するようになった谷田くん。
ヤタというのは日本名で、本名をYaan Pessinoという。
「ヤーン、どうしてヤタと言うの」
「あ、日本に行ったときに付けてもらったんだぜ。クールだろ?」
「へー。日本に行ったことがあるんんだ」
「日本が大好きなのさ。人がみんなやさしくてクールさ。
サントリーのヒビキが人生で一番おいしいお酒なんだぜ」
彼はこの車に住み、
毎日サーフしているハッピーなヒッピー風生活を送っている。
どうやって生活しているのかはわからないが、
アメリカは裕福な家庭もあるので、
ヤーンもその類だと思っていたら、
なんとシンガーソングライターで、
ライブ等で活躍していると知り、
その音楽をYouTubeのライブ録画で発見し、
聴いてみた。
https://www.nakisurf.com/blog/naki/archives/61850
1.最初は「なんだ」と少し失望した
2.2回目を聴いたら「悪くないんじゃないの」と感じた
3.5回聴いたら、フレーズを覚えた
4.サンクレメンテにあるスタジオ録音(せーの、で一括録音しているようである)版を聴いたらすばらしい音楽に驚いた
5.ヤーンの世界そのままが音楽になっていて、他の曲も好きになってきて、これぞウネクネ印だと思うようになった
6.その最初に聴いた曲Cumdownが人生で上位にくるほど大好きになり、一曲リピートですでに300回も聴いている
7.作詞したヤーン本人にCumdownのインスピレーションと、歌詞の意味を聞いたら震えるほど好きになった
その意味とは、
“(自分は)楽しい生活をしているんだけど、
徐々に現実が近づいてきている心境で、
覚めつつあるすばらしい夢を見ている。
夢よ覚めるな、でもまだ道路で寝てるぞオレは”
そんな歌であります。
そんなインスピレーションを念頭において聴くと、
涙が出るほど感じいってしまった。
自分には会社があり、家があり、仕事に追われる毎日。
大好きな波乗りができることで、
大自然の一員だと感じ、感謝して生きている。
ヤーンは、
学歴はもちろん、
仕事や実績というラインから軌道を外し、
自分の好きな生き方をしている。
車に住み、
24時間営業のウオルマートの駐車場の陰で睡る。
野草を炒めて食べて、200円の赤ワインを飲む。
人からもらったサーフボードでサーフしている。
洋服ももらったものだけを着る。
大好きな波乗りを毎日する。
友人たちがいて、彼に集うバンドもあって、
かわいいカノジョもいて、
毎日何回も引っ越しができる。
今までは、
「こんな生き方をしてはいけない。仕事がなければ不幸せになる」
そう社会から刷り込まれて、
懸命に勉強をして、真面目に仕事をして、
新聞を読み、ニュースを知り、
休みなく生きてきたが、
こういう反極にいるヤーンの笑顔を見て、
さらにはそのあふれるほどの幸せな毎日を見ていると、
不覚にもとめどなく涙があふれてしまった。
それは自分への予感なのか、
または何かがあったときに幸せに生きられるための示唆なのか。
人生の逃げ場というのは、
ここにあったのだと知った日。
ただ、自分は老後、貯蓄、
何も関係なくヤーンのように生きていけるのか?
自問の日々がはじまった。
□
週末のサーフバディの兒玉さん、
そしてGoPro写真を撮ってくれる前田さんと朝ご飯に。
「何が食べたいですか?」
「エッグ・ベネティクトやパンケーキとか、そんなものでしょうか」
「OK! 良いところがあります」
お連れしたのが、サンクレメンテ一番の老舗で、
さらには古今でも一番人気のSCカフェ。
到着すると行列するほどの人気で、
もうすぐテーブルが空くというので、
その入れ替わりの人を見てびっくり。
そこにはスーパーシェイパーのライアン・イングルと、
その奥さんリンジー(ASロングボード世界チャンピオン)でありました。
兒玉さんと前田さんとで記念撮影して、
それをインスタグラムに投稿した。
いざいざと着席すると、
リユニオンのプロライダーのジョシュ・エドワーズがサーバーで、
聞いてみると、週末だけここで働いているのだという。
彼からの連想でウナクネ・カフェと認定するに至った。
エッグ・ベネティクト。
バナナパンケーキ。
スペル違いの私への伝票。
その後、
ヤーンのバンドである『The Pesos』話で盛り上がっていると、
なんと当人ヤーンがテイラーと一緒にやってきた。
なんという奇遇。
「いまヤーンの生き方の話をしていたんだよ」
「やめてくれよ。笑」
この底抜けの笑顔。
心配事がなく、ストレスがなくて幸せで、
夕陽を毎日見ていたらこうなるのだろうか?
クリスチャン・ワックに借りたBliss Fish 5’4″
南うねりでサイズアップしている今日の相棒でした。
そして本日のMVPは西世古あつやくん。
春休みで日本から来ているイカチルでございます。
(イカスチルドレン)
見た目はイージーで、
じつは難解なサンオノフレ・レフトのスペシャルセットを、
バックサイドのフルレイルで滑ることができる人はそうはいない。
「かわいい子には旅をさせよ」
波乗りは大自然のアドベンチャー。
すばらしい9歳児であります。
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