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NATION, Canvasボードをシェイプするライアンについて_The Pesos”CUMDOWN”MV!!_(2671文字)

 

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Calafia 2013 March

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精確である。

自身のマジックボードはもちろん、

他のメーカーのマジックボードの全てをスキャンして数値化している。

そこにはロッカーのカーブ、レイルのフォルム、

ボトムの起伏位置、

細部から拡がり、つながりまでの全ての数字。

それら数値を集めてみると、

ショートボードにはショートボードの絶対値というのが存在し、

ロング、ミッドレングス、フィッシュ、シモンズ系もまた同様であった。

それを基調ラインに適用すると、全てのサーフボードが変わった。

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これを今から7年半前、2007年に実行したのがライアン・イングル。

当時1500万円もしたシェイプマシンをローンで購入した。

これは個人事業主の全てを賭けた意気込みの現れであろう。

通常シェイプマシンを持っているサーフボード工場は、

有名ブランドで、

それはマシンシェイプをシャドウシェイパーに託すためのツールだろう。

人気モデルを量産するための道具。

「シェイパーになりたい」と憧れる若者は少なくない。

その彼らにサーフボードをまかせられる原型を作ることができる。

ライアンのシェイプマシンは最高機種で、

テイル形状とチャンネル以外のフォルムは全て細密に表現できる。

下位機種はノーズとテイルをつまんでロッカーと長さ、そして幅だけを削り出す。

ライアンはNATIONというボードメーカーを主宰している。

それまでの彼は、全くと言っていいほど無名で、

ダナポイントのローカルブランド

『インフィニティ』のプロダクションを担当するハンドシェイパーに過ぎなかった。

堅実を信条とする人生。

その彼が最高機種のシェイプマシンを購入するにあたって、

多少なりの打算と、やっていける確信があったといえる。

そのことについて聞いてみると、

やはりそのマジックボード数値を具体化して、

重要な各項目に委細なる数値をコンピュータシェイプに表現し、

シェイプベイ上での詳細なるファインシェイプ、

というダブルワークでサーフボード製作するのは、

どのメーカーもなしえていないことに気づき、

徹底的なるシェイプと、

先進的な製品を作っていけば成功する確信があったという。

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私からそのことについて追記すると、

通常のコンピュータシェイプは、

ある程度のポイントを押さえて、

サーフボードをモデルごとに表現していくものだが、

ライアンはここにその詳細委細を持ち込んで、

マシン上で具現できるところ全てに再現しはじめた。

全てである。

通常ハンドシェイプはベテランでも60分かかるのだが、

この詳細具現をハンドシェイプで実行しようとすると、

数十時間という膨大な時間がかかり、

職業シェイパーにとって現実的でないものになるという。

だが、そのややこしい工程を高性能マシンにまかせ、

さらにはカット後のシェイプブランクスに本人がさらなるディテイルを施している。

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このカットへの詳細の具現化という工程は、どのシェイパーもできないもので、

なぜライアンが可能としたかというと、

自身がマシンの優秀なオペレーター(操作者)でもあることに起因している。

そしてマシンカット後のファインシェイプも本人が実施するという豪華さ。

(コールもそうだが、シャドウシェイパーが存在していない)

そのサーフボードのすばらしさはまたたく間にサンクレメンテ周辺に拡がり、

今ではサーフブレイク周辺でNATIONボード、

またはCANVASボードを見ない日はないというほどの人気の高さとなっている。

そのCANVAS。

オーナーデザイナーであるクリスチャン・ワックが7年前、

ライアンの噂を聞きつけて、

ミニノーズライダーの原型を作ったことから始まっている。

そして今もライアンは全てのCANVASボードを製作している。

このデザインは今も大人気のベストセラーとなっている。

NATIONのすごいのが、

一切宣伝もしていないし、プロライダーも全くいないこと。

ゼロゼロ行進の宣伝広告費。

その理由は、生産数が増えると自身だけで製作できなくなることと、

さらにはサーフボード製作を大量生産する他メーカーへの警告も含めているという。

図式としてはサーフボードを多く売りたければ、

トッププロを起用(雇うということ)し、

広告を出稿し、雑誌社と仲良くし、

コンテストに顔を出して、

好きなサーファーたちに宣伝広告費代わりに

「私のボードを(無料で)乗ってください」と営業すれば、

1年後その生産数は瞬時に上がる。

もしそのボードにトッププロが乗れるようになれば、

オーダーが殺到するので、

自分が製作することはできなくなることも冷静に判断していた。

ただ、私もクリスチャン・ワックも、

さらには多くのサンクレメンテのトッププロ、

シェイパーたちもライアンのボードに対して大きな敬意を払っている。

彼のすさまじいほどの想像力とシェイプ技術に加えて、

冒頭に書いた膨大なる時間をかけた数値の蓄積が彼の全てを支えている。

これだけはライアンが歩を止めない限り、

これからも誰も追い抜けないものだと思う。

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(ライアンの項、明日に続きます)

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ライアンシェイプのレトロ風味&最新鋭のブリスフィッシュ(キャンバス)。

速度があるのでボードが浮き上がっているが、

その快適な操作性はツインフィンを忘れてしまうほどだった。

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Nate Vandergast on Sonic Boom

ソニックブームの噂を聞きつけたネイトが試乗すると、

加速性能に興奮し、ウープやエアなどのターンをしまくっていた。

下段の動画は、

NATION最新作のソニックブームに私が乗ったもので、

このようなユル系のウナクネ式であっても新次元の速さがこの動画に収められている。

Nation Sonic Boom 5’4″ [test model impression] from nakisurf on Vimeo.

それではまた明日ここでお会いしましょう。

どうぞすばらしい春の水曜日となりますように。

【水曜日のおまけ】

ヤタくんこと、

Yaan Pessinoが率いる「The Pesosが聴きたい」

というお問い合わせをたくさんいただきました。

ありがとうございます。

そこで『勝手にThe PesosのMV』を製作してみました。

第一弾は、私の大好きな曲”CUMDOWN”です。

「夢から覚めて現実に戻されていく心境を書いた」

とは作詞作曲したヤーン。

その気持ちがたっぷりと伝わっている私でございます。

Cumdown-The Pesos CARPET DOPE from nakisurf on Vimeo.