夏のようなそれでいてまだ春のような。
風はない。
波は朝陽を受けて輝き、
その柔らかい斜面はいつまでも南に伸びたり、
または北に、もしくは両方向に拡がっては消えていた。
ペソズのスクールバスがあり、
それはブラッドフォードのものだった。
当人は眠り足りないのか、
昨日の酒なのかはわからぬが朝睡をしていた。
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元丹丘(李白が尊敬していた道士)
神仙を愛す
朝には頴川の清流を飲み
暮には嵩岑の紫煙に還る
三十六峰長く周旋す
長く周旋し
星虹を躡(ふ)む
身は飛龍に騎(の)って耳に風を生じ
河を橫ぎり海を跨いで天と通ず
我は知る 爾の游心窮り無きを
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この画を見て、
李白の詩の一片を思いだしていた。
このブラッドフォードたちは誰に信服しているのだろうか?
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さて、今日のテーマは勝手に『陰陽師』(夢枕獏著)なので、
安倍晴明と源博雅が、
このサンオノフレのフォードアーズに茣蓙(ゴザ)を敷いて座り、
各人の波乗りを眺めながら酒を口に運んでいることとしよう。
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一.
ひときわ白いカモメが南から音もなく飛んできて、
ブラッドフォードのバスの上にふわりととまった。
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「晴明よーー」
博雅が波の音の合間に声をひそめて言った。
「何だ」
晴明が沖にある視線を動かさずに答える。
「今、すごいものを見たぞ」
「何を見たのだ」
「鳥が編隊を組んで波に乗るように飛んでいたのだ。しかも楽を奏でるようにゆるやかに、
そして波の印象的な場所では韻を踏むように羽根を翻して、そのままずっとずっと舞っていた」
「ほう」
「おまえは見なかったのか」
「見たよ」
「見て、おまえ、何も感じなかったのか」
「何のことだ」
「だからだな、晴明よ。あの鳥の舞いを見て何も想わなかったのか」
「うむ」
「鳥がだな、ここにいるどの波乗人よりも上手に波に乗ったのだぞ」
「うむ」
「まあよい、おまえはいつもそうだが、あれを見て何も感じなかったというのはおれにはわからん」
「よいか、博雅」
「うむ」
「鳥が波の上を舞うというのは、ただそれだけのことよ」
「うむ」
「しかし、いったんそれをおまえが口にするのなら、そこに呪が生まれることになる」
「また呪か。もうよい」
「まあ、聴け、博雅」
「聴いている」
「おまえがあの鳥を見て、美しいと想ったり、心を動かされるのであれば、それはおまえの心の中に美という呪が生じたということなのだ」
「むむう」
「だからよ、博雅、仏の教えに言う空(くう)というのは、まさにこのことなのだよ」
「なんだって?」
「仏の教えによればだな、この世にあるもの全ては、その本然(ほんねん)に空なるものを持っているらしい」
「色即是空というあれか」
「そうだ。鳥が波に舞って、それを源博雅が見て、はじめて美というものが生じるのさ」
「晴明よ、おまえやはりややこしいぞ」
「ややこしくはない」
「素直にきれいだった、と想えばよいではないか。不思議と想うたなら、そのまま不思議と想うたらよいではないか」
「そうか、不思議か…..」
そうつぶやいて、晴明は、何か考えることでもあるように、唇を閉じた。
「おい、晴明、どうしたのだ」
黙ってしまった晴明に、博雅が声をかける。
しかし、晴明は答えない。
「おい…..」
と、もう一度博雅が声をかけようとしたその時、
「そうか」
と、晴明は声をあげた。
「何が、そうかなのだ」
「波さ」
「波?」
博雅にはわけがわからない。
「博雅、おまえのおかげだぞ」
「何がおれのおかげなのだ」
「おまえが鳥の話をしてくれたからさ」
「ーーー」
「自分で鳥は鳥であるだけと言っておきながら、
おれの方こそ、そのことに気づいていなかったのだよ」
博雅には何がなんだかわからないが、
「そうか」
とうなずけば、
「実は、昨日から気にかかることがあってな。どうしたものかと迷っていたが、ようやくどうすればよいかがわかったのだ」
「晴明よ、それは何のことだ」
「おいおいに説明するよ。その前にひとつ頼まれてくれぬか」
「何をだ?」
「キャピストラノビーチに、摩訶天仇無須(ジャスティン・アダムス)という法師がいる。そこまで行ってもらいたいのだ」
「それはかまわぬが、その摩訶天という法師のところへ、何をしにいけばいいのだ」
「法師と言っても、実は波乗人のひとりだよ。最近法師となったのだが、昔からそこに住んでいる。これからそこに行って、次のようなことを訪ねてくれ」
「何をだ?」
「王舎城結集はいつでしたかとな」
「それで」
「おそらく知らぬと言うだろうよ。しかし、それであきらめてはいけない。このBradfordという記名と音が入った盤を持っていって、断られたらその盤をに渡して、その場で聴いてもらってくれ」
「それでどうなる?」
「たぶん話してくれるだろう。そうしたらすぐにもどってきてくれ。それまでに、おれは支度をすませておく」
「支度?」
「一緒に出かける支度さ」
「これから、おまえが摩訶天仇無須から教えてもらう場所だよ」
「よくわからんぞ、晴明ーー」
「じきにわかるさ。それよりもな、博雅、言い忘れていたが、摩訶天殿には、おれの使いだと言わぬことだ」
「何故だ」
「言わぬでも、この盤を見せればそれでわかるだろうからだ。よいか、むこうに行ってもおれの名は出すなよ」
とにかく、
「わかった」
博雅はそううなずいて、出かけていったのであった。
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(続く)
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さて、そのペソズの連中がいて、
最近ではS級というほど波が良い日となった。
このベーコン焼きはブラッドフォードのガールフレンド、
キャロラインによるもの。
彼女が合流した途端、
調理器具も食べものもアップグレードしたことに気づいた。
朝は少し混んでいたが、
11時くらいになったらどんどん人は上がっていってしまい、
最後はブラッドフォードと、ジャスティンだけになった。
波は余りまくっていて、もったいないと思いながら見ていた。
波情報は1−3フィート(膝から胸程度)と伝えているから空いているようで、
セットはフォードアーズが耐えられる最大のオーバーヘッドは軽くあり、
こんなターンができるフォードアーズはひさしぶりでありました。
本日の7本。
ちなみに全てに乗って、
五目ではなく、7目サーフィングとなった。
ブラッドフォードのカービング。
photo by Todd
トッドさんがオールドマンズ側から写真を撮ってくれていた。
こんなにも良い波だったのですね。
CANVAS、
”名がまだ決まっていないモデル”
の初乗り日はすばらしい時間となった。
https://www.nakisurf.com/blog/naki/archives/61835
クリスちゃんの弟カーソンが、
このボードをチェックしにきた。
コンケイブがいいのだろうか、
それともテイル形状か、
それとも全体的な総和だろうか。
美しい車がやってきたと思ったらロージーのもので、
これはシボレー社が1958年に発売したモデルだったという。
それでは今日もすばらしい日となりますように!
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