Noah, Duck diving
摩訶天仇無須(ジャスティン・アダムス)
この帽子とサングラスがとってもHipだと思う。
アートで彼を表現した朝。
ブレークが、
故テリー・マーティンが彼のためにシェイプしたフィッシュを持っていた。
10年前というので、ティーンのブレーク用である。
5’0″ 19-1/4″ x 2-3/8″
さらにはタイラー・ウオーレンのスプレーアートも施してあって、
乗れそうだったので借りて乗ってみると、
これはおそろしいほどにウナクネ風味満載だった。
浮き方はソニックブーム(NATION)のようで、
泡になろうが、セクションが切り立とうがお構いなしに駆けていく。
ソニックブームについてはこちらを↓
https://www.nakisurf.com/brand/nation/sonic-boom/
インサイドの失速エリアも生きもののように滑り、
絶妙なる逸品だった。
故人というのがドナルド・タカヤマと一緒で悲しい。
もう二度とカスタムオーダーはできないのですね。
吉岡さんとシェアライドし、
感動満載で上がってくると、
フォードアーズの連中に囲まれてこのボードについての感想を求められた。
というのは、
このツインはブレークの生涯一番のマジックボードで、
だから10年経っても大事にしていて、
あまり人に貸すことはないのだとみんなは言う。
だから乗った感想を聞きたかったのだと知った。
「20分だけ」というクイックセッションだったので、
昨日から積みっぱなしのボードの出番はなかったが、
マジックボードに乗って、震えるような気持ちになっている。
今夜は近所でペソズライブがあるのだが、
しかも総帥のバンドにも参加したギタリストTarek Wegnerが参加するという。
告知がインスタグラムでさっきあった。
9時からだから4時間前。
なんとか行ってみようと思っている。
私はもうペソズに夢中なのであります。
#thepesos
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[今週始まった文学系の連載で、『勝手に陰陽師』です]
昨日読んでいない方はこちらのリンクからどうぞ。
https://www.nakisurf.com/blog/naki/archives/62656
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二.
しばらくして、博雅が戻ってきた。
「驚いたな、晴明よ、おまえの言っていた通りだったよ」
博雅は言った。
場所は、先ほどと同じフォードアーズの海岸であったが、晴明は茣蓙(ゴザ)を木陰に移していた。
「摩訶天仇無須(ジャスティン・アダムス)殿はお元気であったか?」
「元気も何も、あの楽曲を聴いた途端にあきらめたようだったぞ」
「それはそうだろう」
「それまでは、王舎城結集のことなど知らぬと言っていたのだが、すんなりと教えてくれた」
「場所は?」
「サンディエゴの美術研究所だ」
「そうか」
「なあ、晴明よ。あの音楽にはどんな意味があるのだ。摩訶天殿は、あなたはこの字を書いた人に会いましたか、と問うてきたぞ。おれがブラッドフォードはスクールバスの人とは知っている、でも見かけただけで話してはいないと言ったら、ほっとしたり、本当でしょうなと念を押してきたり、見ていて気の毒のようであったぞ」
「おぬしが鳥だからだよ、博雅ーー」
「おれが鳥?」
「そうさ。博雅はただ博雅としてそこにいるだけで、むこうが勝手に不安という呪にかかってしまったのさ。おまえがブラッドフォードに会っていないと正直に言えば言うほど、むこうは怯えたはずだ」」
「その通りだよ」
「それでよかったのさ」
「なあ、晴明、いったいあのサインにはどんな意味があるのだ?」
「ブラッドフォードだよ」
「ブラッドフォード?」
「ペソズの音を支える男さ」
「それがどうしたのだ」
「よいか、博雅、我々のような仕事をしている人間は、彼らに何が起きているのかが分かるのだ」
「何が、起きているのだ?」
「じきにわかる」
「そうか」
「それよりも、おまえ、摩訶天殿と、昔、何かあったのか」
「おれではない、総帥やケリー・スレーターたちとであったと言えばあった」
「総帥?」
「アレックス・ノストだよ」
「ああ、アレックスか。でもそれと摩訶天殿とどんな関係があるのだ」
「あとで教えるよ」
「それにだ、晴明、おまえ、おれをお使いに行かせておいて、自分はここでずっと波乗りを見ながら飲んでいたのか」
「うむ」
「おれは、おまえがいろいろと支度があるからというから行ったのだぞ。それをーー」
「まあ、待てよ。この使いは、おれであってはならぬのさ。だからおまえに行ってもらったのだ」
「どうして、おまえではいけない」
「おれの考え通りなら摩訶天は、ペソズのヤーン法師の師筋にあたるお方だからだよ。この晴明に訊かれたからと、あっさり集会場所を教えては、クールではないからな」
「なぜクールではないのだ。クールってかっこいいという意味だろ。おまえ摩訶天殿と、いさかいを起こしているのかーー」
「いさかいというほどのものではない」
「しかしあの盤とサインを見て、摩訶天殿はなぜすぐにあきらめたのだ?」
「まずはあの盤は10枚程度しか作られていないはずさ。それを博雅が持っていて、さらにはブラッドフォードのサインがあれば、この晴明が後ろにいのはわかるはずさ。それで結集する集会場所を教えようという気になったのだ。ヤーン法師にも説明が付くことが肝心なところなのだ」
「ううむ」
「とにかく王舎城結集所がわかったのだから、出かけようではないか」
「う、うむ」
博雅は、まだ何か言いたそうであったのだが、その言葉を呑み込んでうなずいた。
「ゆくか」
「うむ」
「ゆこう」
「ゆこう」
そういうことになった。
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三.
ふたりはサンディエゴに向けて、南にゆるゆると進んでゆく。
「さあ、晴明よ、何がどうなっているのか、おれに教えてくれ」
博雅は、晴明に問うた。
「さて、では何から話そうか」
すでに晴明は覚悟を決めている様子であった。
「そもそもの始めからだ」
「ならば、摩訶天仇無須法師や鰻捻(ウナクネ)総帥が子どもだった頃の話から始めるのがよかろう」
「何年前の話だ?鰻捻もわからん」
「12、3年前の話だ。鰻捻はおいおい話す」
「それで?」
「法師や総帥たちはティーンエイジャーで、13歳年上のケリー・スレーターに憧れてコンテストに出ていた…..」
晴明はすらすらと話しはじめた。
(四に続く)
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