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naki's blog

【テクニック編】波に乗るための大切な次のステップ_(4002文字)

月の光も雨の音も、恋してこそ始めて新しい色と響を生ずる。

永井荷風作『歓楽』より

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何年か前にWCT(現WSL)のあるサーファーの波乗りを見てこう思った。

「このサーフをするために、いったいどのくらいの時間を費やしてきたのだろうか?」

サーフィングにはプロフェッショナルというものが存在していて、

そのレベルになるためには10代から始め、毎日サーフして最低10年はかかるだろう。

または英才教育ではないが、10歳前に始め、

波がある付近に住み、

良い環境で、つまり家族等のサポートが受けられたら10年以下で可能だろうか。

真剣にスタートするのが20歳を過ぎてしまうと、

10年で達成するには難しいと思うので、最低でも15年はかかるだろうか。

とすると、

もしWSLサーファーになれたとしても美談だけで留まるような話で活躍できるとは思えない。

とにかく、WSLクラスのサーフィングをしたければ毎日10年、

一日平均4時間を真剣に費やしたサーファーだけにその可能性が出現する。

365x4x10=14600時間。

もしあなたが週末サーファーで、

その二日間を、真剣に5時間ずつサーフしたとしても

一年はおよそ52週なので、52x10=520

14600時間となるためには、28年かかる計算となる。

ご存じのように人間は老化してしまうので、

28年ものあいだ、怪我をせずにサーフし続けること、

そして週末に波がきちんとあることを考えると、かなり非現実的なことだと気づく。

何を言いたいのかというと、

「私は、いや世界中のほとんどのサーフ人口が、

メディアが伝えるサーフィングの幻想を追いかけている」

突然そこに気づいたのだ。

メディアとは、アイキャッチ(目立ち)の世界であると思う。

アレックス・ノストやタイラー・ウオーレンのジワリとした玄人ターン写真よりも、

どこかのサーファーがすばらしい波でドーンと飛んでいた方が売れる。

ただ、あれらのターンを可能とするペラペラの薄いボードに、

一般サーファーが乗れば、か弱いターンでもなんでも体を傾けるだけで曲がり、

少しでもレイルの上に手を置くと、

ダックダイブ(ドルフィンスルー)風にボードは波の下に沈み、

そんなプロボードを持って歩くだけで、サーフィングが上手そうに見える。

そんな性能のサーフボードはまるで魔法の杖のように思えるが、

実際には浮力がないので、パドリングが遅い。

もちろんテイクオフも遅いし、波に乗るためのポジションを選ぶ。

つまり一般サーファーにとって、

「波に乗ることすら難しいものこそが良いサーフボードだ」

そう長年洗脳されてきた。

私が波乗りを始めたときは、ショートボード全盛だったので、

「立てるようになるまで真剣にやって3ヶ月かかる。その根性はあるか?」

そうささやかれていた時代だった。

そんなある日、友人の分厚いボードを借りて軽い気分で乗ってみると、

その体を傾けるだけでは曲がらないボードは、テイクオフしてターンしたつもりで、

ボードは曲がらずに体だけターンの姿勢で波の中に沈んでいった。

しかもみんなに大笑いされ、これほどまでに悔しいことはなかった。

あんなゆったりとした浮力のボードに乗れないということは、

自分のターンができていないことに気づき、2mの長さのシングルフィンを注文した。

コンテスト前日はこのボードに乗ってしっかりとしたターンの練習をしていた。

間違って伝わっているが、シングルフィンで全てのサーフテクニックができる。

ただ、シングルフィンはトライやクアッド、

ツインほど敏感ではないので、ターンのタメが必要となる。

このタメこそが「渋み」であり、

「円熟」、または「ソウル」、「クール」と呼ばれることを最近知った。

WSLクラスのサーフィングを追いかけなくなった利点は、

このタメが自分のサーフィングのリズムとなり、メロディとなったことにあると思う。

ミック・ファニングのサーフィングを真剣に見てしまうと、

「彼のボトムターンのタイミングで自分のサーフボードが波を駆け登る」という錯覚を起こしてしまう。

もちろん上記したように真剣に毎日トレーニングし、

ワールドクラスの波でサーフし続けているのならミックを追いかけるのも良いだろう。

しかし自分のリズムを失ってしまう。

これを例えるのなら、

アカペラで歌おうとしているのに、横から他の曲のメロディが聞こえ、歌いづらくなるようなものだろうか。

ミックのターンの離水が速い理由は、

「1本の波の中でより多くの、ソリッドなターンを重ねていくことで高得点を得られるから」

そんな思想に基づいているからだ。

しかし、よしんばその高速連続ターンができたとしても、

両刃の剣、ワイプアウトの可能性が常につきまとう。

難易度が非常に高い。

せっかく乗った波、

最高峰のセクション内で究極を求めるあまりワイプアウトしてしまうというのは、

波に乗っているのか、乗られているのかがわからなくなる、

裏話になるが、彼らトップサーファーのサーフボード注文票を見て驚いたのが、

各サイズに対し、5〜10本のボードがオーダーされていたこと。

その中から吟味されたマジックボードに乗ってのターンを私たちは見ているのだ。

私も元プロなので、サーフボードのオーダー数はいまだに多いと思う。

それでも年間12〜15本程度である中、

彼らは年間200〜300本以上のボードをオーダーし、

その中から選ばれた、偶然に近いような魔法の杖でサーフしているという事実。

これは年間1〜3本、

せいぜい4〜6本のサーフボードをオーダーする一般サーファーには太刀打ちできないことである。

ご存じだろうが、

トップサーファーには資金力のあるメジャーレーベルのスポンサーが付き、

小さなメーカーは彼らをサポートすることすらままならない。

メジャーレーベルの多くはコンスーマーボードに対して高い利益率を設定し、

その資金でスーパーサーファーたちをサポートしていることに気づくべきだ。

でもこういったことで、業界が成り立ってきたのも事実である。

(利益率を高くできる仕組みは、あえてここには書かないし、

この内容のことを雑誌に書いても広告主からの反発を受けてボツ原稿になるのがオチであろう)

実際に私が運営するNAKISURFもこうしてペラペラのボードに乗るサーファーたちに寄り添い、

少しでもその浮力内で良い波に乗ってもらおうと、

日本の弱い波でも乗れるようにシェイパーたちとつきっきりで各モデルを開発し、

ボードオーダーの際に質問をいただくと、

そのサーファーの技量を聞いて、少しでも大きなボードをお勧めしてきた。

こういうことを書いてしまうと、

その薄いボードを好むサーファーたちから敬遠されてしまうと思うが、

そんな目先のことよりも、これからのサーファーのためにあえて書いてみました。

サーフィングの大切なことは、

上塗りされた「波乗りできます風」ということではない。

浮力を大きくしたボードに乗ってもらいたい。

それによってターンの反応が、薄いボードよりも重くなった気がするが、

あなたなら3本目くらいでターンの仕組みに気づくはずである。

さらには速く、ドキドキするようなパドリングスピード、

テイクオフ、そしてターン速度、それら全てに明滅するような、

波に乗る真実の快感を感じられるだろう。

疑問に思うのならその波乗りを動画に撮れば一目瞭然、

ご自身の波乗りに「うんうん」と満足できるようになる。

ダックダイブ(ドルフィンスルー)もしずらくなったと感じるが、

レイルに手を付くときに普段よりも15cmほどノーズ側に移動するだけで、

大きなボードは見事に沈んでいく。

これもすぐにはできないが、100回程度の練習をすれば必ずできる。

できないことにあきらめてはならない。

波に乗れるようになり、思ったように横に行けるようになっただけで、

無理やり体を傾げただけで、強いターンができたと錯覚していて、

それに満足し続けてはいけないのだ。

ボードサイズがほんの少し大きくなると、

「できない」「無理だ」とあきらめてしまう人が、

グレイトサーファーだと胸を張れるのだろうか?

波サイズも胸肩がオーバーヘッドになってしまうと、

「怖い」そう尻込みしてきたグッドサーファーたちを多く見てきた。

けれど「たった1mの高さの違いですよ」と説得し、

オーバーヘッド波にチャレンジしてもらってきた。

その後、うれしそうに

「挑戦して良かったです。自信が付きました!」

と輝くような笑顔を全員が見せてくれた。

ぜひぜひ大きなボードにチャレンジしてください。

年齢のことと、そして幻想への決別を兼ねて、

自分らしく、そして年を重ねてもずっと、

さらに深く波に恋い焦がれ、

真剣に没頭でき、感動できるライフスタイルを確立するために。

何度もここに書いているけど、本当のサーフィングとは、

人との競争ではなく、自分自身を高め、辛い日々を救済したり、

自分らしく生きていけ、常に海で遊べ、健康的で笑顔輝くライフスタイルなのです。

長くなってしまいましたが、終わらなさそうなので今日のところはここまでとします。

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さらには人との競争でない、良波を常に追い求めない、

つまり、「嫌な思いをしないサーフ体験」が多くの人に伝わるようになります。

どうぞよろしくお願いします。

それではみなさんのすばらしい日に、そしてすてきな週末となりますように!

今日も読んでくださってありがとうございました。

2015年9月24日 NAKISURF主宰 船木三秀

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