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『波と一体になる』という基本_(1773文字)

「千日の稽古をもって鍛となし、万日の稽古をもって錬となす」

——『五輪書』

UNK-S 6’1″ (185cm)

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私が波に乗り始めたときは、

サーフボードの長さは185cmだった。

やがてそれがファイブテンになり、

冬のハワイはセブンシックスが日常となり、

波によってサーフボードを使い分けることを知った。

Herbie Fletcher at his studio.

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コンピューター制御でサーフボードの下地を成形するシェイプマシンが登場し、

予想と期待通りに定着した。

このことによって、

簡単に体積(CL=キュービック・リッター)を得られるようになり、

サーファーは自身の適正浮力数値を知った。

マシンはロッカー等の曲線を量産し、

乗り手の体重に合わせたサイズ変更も容易にできる。

ただ、どんなに高性能となっても実際にはシェイパーがデザインし、

ブレード(歯)が到達しない箇所を成形、細部フォルムを調整している。

ハンドシェイプのみの時代、

つまりシェイプマシンが登場するまでは、

シェイパーが自作したテンプレットを使ってアウトラインを切り出していた。

ロッカー角度もシェイパーのみが展開する力業だったのだが、

マシンはそれらを精確に表現していく。

さらに書くと、マジックボードと呼ばれる傑作は、

コピーのために再びスキャンされていく時代になった。

この結果、サーフボードデザインは飛躍的に安定した。

そのコンピューターシェイプに精通したシェイパーと、

この体積値について話してみた。

Ryan Engle at his Shaping Bay.

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「最近のサーファーは体積値を決めて、

それに基づいてボードをオーダーしてくるようになった。

でもこれは正解ではない。

ボードが長くなれば、揚力が増すので、

適正な体積はより少ないものに移行し、

加えてロッカーやレイルフォルムという要素全てが存在しているので、

同一デザインでない限り、決して一定値にはならない」

サーフボードがここまでの委細詳細を求めるようになったのは、

コンペティション・サーフィングの功績だろう。

ジャッジたちは、イベントごとにそれぞれの波質を考慮し、

現在過去未来と、他の要素をも考えながら、それら演技点を設定する。

そして世界中から集まったアスリートサーファーが、

それらの基準や要求に合わせたサーフボードを選択すると、

——カーレース最高峰であるF1と似て——ほぼ同一なデザインとなる。

フィッシュやミッドレングスに話を移そう。

不思議なのは、それらに乗る人は、浮力数値について話をしない。

もっと言うと、ログ、いやスポンジボードやフィンレスを考えると、

そんな数字はナンセンスだというところまで漂っていく。

これは波乗りの種類が違うということを意味している。

Tyler Warren at his Shaping bay.

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サーフィングの魅力は、技術の進化と共に移行している。

波斜面を滑走する喜び。

うねりと、自身との合致を意識していると、

波にはどうやら芯(スイートスポット)があることに気づいた。

その芯に沿ったセクション内で、

自分の通過点に点を予測し、それらをつないでいく。

例えばボトムに降りていくときは、

ターンの開始位置を点で置き、

次は波上部に切り返し点を設定する。

波は変化するので、常に修正を加えていくのだが、

ごく稀に自分の予想通り、思い通りに全ての点がつながるときがある。

このとき、宇宙が拡がるような感覚の、

広大なマインドフィーリングとなる。だから波乗りはやめられない。

浮力の話に戻ろう。

よく「こんな小さいボードに乗れない」

ロングボーダーはショートボードを指して言うだろう、

ショートボーダーは古代アライアを見てそう思うだろう。

だが、ボードを使わないで波に乗るボディサーフの浮力はゼロ。

そう考えると、波に乗れない浮力のサーフボードは存在しない。

さまざまな浮力のボードに楽しく、美しく乗るために波を理解し、

さらには肉体的な進化も遂げていかなくてはならない。

だが、しかしその究極は、

サーフボードも使わずに身一つで波に乗り、

波の中に確かに存在するスイートスポット点をつないでいくことだろうか。

その宇宙に跳躍できるような感覚を得るためには、

サーフボードの性能やサーファーの技術ではなく、

「波と一体になる」

といった基本中の基本に立ち戻れば良いと気づかされた。