Nation the Pink Champagne On Ice 6’11”
昨日、こちらに住む日本人サーファーRさんと会い、
海の前の駐車場でお話しをする機会に恵まれた。
「あの、NAKIさんですよね。このボードのサイズはいくつですか?」
「6’11″ですよ」
「これでドルフィン(ダックダイブのこと)できますか?」
「もちろんできます。でも今は肩と肘が痛いからほとんどしませんけど」
「ではどうやって沖にゲット(パドルアウトのことらしい)するのですか?」
「それは波が来ないときにしっかりとパドルすることと、ルートが重要です」
「ルート?それはどんなことですか?」
「波は水ですよね。水が陸に押し寄せてくるのが波です」
「はい…」
「その水が戻っていく流れ、「チャンネル」を利用するのがルートです」
「なるほど、そうなんですね。それはどうやって探しますか?」
「波を見て、その水がどちらに流れているか見ます。まずは陸(手前)側を見て、右に流れているか、左なのか」
「はい」
「そうやって水を追っていくと、流れに到達できるはずです」
「そうなんですね!」
「きっと海底はそこが深くなっていて、極端な時は海面が揺らぐようにざわついています」
「離岸流ですね」
「なんだそれを知っているのですね。それがチャンネルです。それを利用すれば簡単にパドルアウトできますよ」
「知っていましたが、チャンネルを見つけるのはむずかしいです。どうやって探しますか?」
「まずは乗るであろう波を良く見ます。その水がどうやって沖に戻っていくのかを想像するだけで大丈夫ですよ」
「でもゲットの時にドルフィンしないと、戻されて後ろの人に当たってしまいます」
「後ろに人がいない状況を作り出します」
「例えばどんな状況ですか?」
「混んでいるところでやらない、後ろに入られたら少しずれる、そんなことです」
「なるほどです」
「人の幅なんて、横にしたってたった2mです。逆に言うと、波乗りはパドルアウトではないとは思いませんか?」
「はい、波に乗ることですよね」
「そうです。なので、逆に質問します。後ろに人がいるとか、ボードが沈められないとかよりも大事なことは何でしょうか?」
「波に乗ること、ですか?」
「そうです。波に乗るために十分な浮力のあるボードに乗ることが最も重要だと思います」
「ぼくのボード(6フィートくらいのトライフィン)は小さいと思いますか?」
「正直に言って小さすぎます。今日、このボードだとピークからでないと波に乗れないと感じましたか?」
「はい、ほとんど乗れませんでした」
「でもこのボードだとダックダイブが楽で、後ろの人に迷惑はかけない、そんなことですよね」
「すいません(笑)。変な質問をしてしまったことが自分で今わかりました」
「こういうボードに乗っている人は、みんな”囚われ”ているようになっていますよね」
「そうですか。どんな囚われですか?」
「こうターンをしなくてはならないとか、スープ(泡)になったら終わりだとか、そんなことです」
「はい、常にターンをしないといけないと思っています」
Tyler Warren
Photo by Brian Miller
「ですよね。それでは、彼の波乗りはターンをし続けていますか?」
(ちょうどタイラー・ウオーレンが波に乗った)
「まったくしないですね。けれどとてつもなく美しいサーフィンです」
「波のパワーゾーンを滑って、必要なときにそのポケットに戻っていく波乗りです。これが最上級です」
「自分は難易度の高い技をかけるのが最上級だと思っていました」
「難易度の高い技は、難易度の高いポケットやセクションでするから評価されるのです。
どんなにすごいエアをしても、そのセクションが簡単であったりしたら、オーリーだとか、無理やりだと、逆に評価は低くなります」
「むずかしいけど、なんとなくわかります」
「要は波に合わせて乗ること、そこを気にしてみると良いですよ。目的の波に乗るためには、Rさんはもう少し大きなボードに乗るといいです」
「そうなんですけど、自分、大きなボードに乗ると動かせなくなるのです」
「そうですか、でもその考えだと、少し前の質問されていた状況から何も抜けられませんよ」
「と言うと?」
「波に合わせてとか、波に乗る、そんな基本を置き去りにして、ターンに進まれているということです」
「波にも乗れないのにターンの話はまだ早い、そんなことですか?」
「きつい言い方をするとそんなことです」
「では具体的にどうすればいいですか?」
「まずは波を良く見て、波周りのことを理解すべきです。流れとか、セクションの切り立ち方等々です」
「そして?」
「狙った波に乗ることです。Rさんくらい上手なのに狙った波に乗れないのは理由があります」
「どんなことでしょうか?」
「例えばピークから外れている。パドリングがぶれている、そしてご自身のパドリング能力に対してボードの浮力が足りていない、そんなことです」
「なるほど、ぼくはそうなんですね」
「きちんとは見ていませんが、何本か見た限りではそうです」
「それでは、ドルフィンのことよりもきちんと波に乗るようにします」
「そーです!ターンはボードの後ろを踏むと簡単に曲がりますよ」
「ステップバックというやつですね」
「Rさんはその段階まで進まれているので、ステップバックをおぼえましょう」
「それは大きな板だけで必要なんですか?」
「いえ、ミニボードでもステップバックは必要不可欠です」
「そうなんですね。それにしてもすごいです。視界が開けた感じがします。ありがとうございました!」
「それでは、このフィンレスで2〜3本乗ってみてください。さらに開眼します」
「え、いいんですか?」
「ぜひ!」
Rさんはそうやってパドルアウトして、
横滑りのテイクオフ、どうにもならないワイプアウトを繰り返して上がってきたが、
そのお顔はなぜか晴れ晴れしていて、
どうにもうれしそうだった。
「波乗りの根本というか、楽しさを再確認できました!またお会いしたら教えてください」
「もちろんです!良かった」
お互いにとってそんな貴重な時間でした。
Rさん、ありがとうございました。
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