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【鋭意特大号】2016パイプライン・マスターズ_カノア・イガラシ_ジョーディ・スミス_ケリー・スレーター皇帝_(5625文字)

競技の類は野球が好きである。

よって将棋も好き。

波に乗ることを競う競技にも出た。

やがて自由の象徴ドノバンと出会い、

競うことよりも好きなように波に乗るスタイルを学んだ。

サーフィン競技で宇宙一だと思っているのが、

クイックシルバーが永年(希望を込めて)提供する

ワイメアインビテーショナル『エディ・アイカウ』だ。

これには波乗り=神乗りというエッセンスが詰まっているような気がして、

開催されると、それぞれのヒートに1日中見入って、

そして全てのドラマを記憶する。

このインビテーショナルは今年2月に開催され、

私の中ではベストエバー・イヤーのエディだったと思う。

第31回ワイメア・インビテーショナル『エディ・アイカウ』_ハイパーソニック_伊豆下田に_(2517文字)

そのエディのことは、

↑のリンクに始まる3部作に書いたが、

ジェイミー・オブライエンの乗った神話のような波。

そして、D師範ことシェーン・ドリアンだけは、

(波の)インパクトを喰らっても弾けなかった

「なぜだろう?」

「なぜあそこで立っていられるのだろうか?」

それを解明するためにさらにそのライブ画面に顔を近づけて、

他のサーファーを見ていると、やはり全員が吹き飛ばされていく。

あの泡の押し出しを受けて、

倒れてしまうのは人類として当然だろう。

これによって、

D師範はスーパーサイヤ人と再び認定されたのでありました。

で、エディというスーパー・サーフコンテストが進んでいくと、

なんともう一人だけ、

そのD師範が模範披露するスーパーサイヤ人技をやってのける者があった。

話はほとんど神話状態になりましたが、これは実話です。

そのサーファーこそがジョンジョン・フローレンス⑮なのです。

Life of leisure_自由人生_クリスチャン・フレッチャーとニール・ヤング_ジョンジョン・フローレンス_(1775文字)

ジョンジョンはご存じの通り、このエディで優勝します。

彼はさらにWSLが開催するサーフィング競技の世界ツアーでも、

本年度のワールドチャンピオンに輝いた。

その彼の凱旋を記念するパレード@カメハメハ・ハイウエィ(Kamehameha Highway)

すばらしい!

インスタグラムを見ていて知ったのが、

パイプライン・マスターズの開催日。

今日は昨日終了したパイプライン・マスターズのことを書きたい。

今年のうねりの向き、サイズの予報だと、

パイプラインではなく、オフ・ザ・ウオール、

またはバックドア向きであることから、

(パイプライン周辺のピーク全てに名前が付いていて、

オフ・ザ・ウオールはパイプライン、そしてバックドアよりも西側のピーク)

そんな情報からライトのバレル波、

つまりフロントサイドでの魔術師たちをサーフ系のメディアがさらっていた。

その中にジョーディ・スミスという名前を見つけた。

彼とは、キャッチサーフ仲間ということもあり、

親近感が湧いたのでそのままその記事を読み進むと、

「バックハンドバレル(パイプライン)で勝負しないのなら、ジョーディ・スミスを推したい」

そうやって彼が優勝候補に挙げられていた。

で、パイプライン・マスターズが始まった。

WSLが開催するマスターズは、

いわゆるメジャーリーグで言うところの『ワールド・シリーズ』であろうか。

とすると、

ワイメアインビテーショナルは、

何年かに一回、条件を満たした時にだけ行う、

大波による『オールスターゲーム』であると、

そんなイベントに例えてみた。

このビラボン・パイプラインマスターズは、

その昔はビラボンでなく、

駅のマエのマルイOIOIがスポンサーする『丸井プロ』でもあった。

『丸井パイプライン・マスターズ』は、

当時ありえなかったサーフィンのTV中継をしていたので、

パソコンはおろか、携帯電話もない私たちは、

その番組をVHSかベータテープで録画し、

何度も見ては、この由緒正しき(1971年より続いている)波乗り競技のすばらしさ、

さらにはバレル(チューブ)ライドに重きを置いた得点方法のすばらしさを知ったのです。

パイプライン。

ここでサーフされてきた大先輩たちにその波のことを聞いて、

そのまだ見果てぬ波の空洞に思いを馳せていた。

で、昨日がその『ビラボン・パイプライン・マスターズ2016』のファイナルデー。

この千葉でそのライブ中継を見ることになったのだが、

ルーキーながら勝ち進んできたカノア・イガラシ(Kanoa Igarashi)が、

ラウンド4にクレジットされていた。

ラウンド4までは3マンヒート。

その競技相手は、前出した一番人気ジョーディ・スミスと、

銀河一とされるケリー・スレーター皇帝であった。

皇帝は世界チャンピオンを11回!

パイプライン・マスターズも7回も優勝し、

プロフェッショナル・サーフ歴23年。

現役神格皇帝となったサーファーである。

そして19歳のカノア。

彼はケリー・スレーターが鳴り物入りでプロ入りした後に誕生しているので、

20年は2ディケイドと言われますが、

もはやこれはジェネレーション(世代)の差であろう。

そう考えると、ケリーは本当にすばらしい。

そしてそして、

なんとなんと、カノア・イガラシはこのラウンドで、

そのイチバンニンキと、ゲンエキ・シンカクコウテイを下し、

1位でクオーターファイナル進出を果たした。

そして2位と3位は、ジョーディ・スミスとケリー・スレーター。

ふたりはラウンド5にてそれぞれ勝ち、

クオーターファイナル(準々決勝)進出し、

予測通りジョーディ・スミスとカノア・イガラシという本日二度目の顔合わせが組まれた。

ヒート2はタヒチの怪人ミッシェル・ボレーズVS新神格皇帝ジョンジョン・フローレンス。

このヒートではなんと、ミッシェルがものすごいバレルを決めに決め、

ジョンジョンを下してセミファイナル進出を果たした。

すごい。

ちなみにジャッジ(審査)もかなり細かくなっていて、

波のサイズ

切り立ち方

丸まり方

フォームボールの有り無し

パンプの回数

トリムの角度

バランス

スピード(ストールよりパンプで加速というのに高得点が付いていた)

そんな項目に対して、スコアの上下があり、

そして最も重要なのは、

大きなバレルをメイクしたかそうでないかということ。

これで明確に高得点か、ロースコアを分けていた。

話は反れるのだが、カノアの友人であるゼィーク(Ezekiel Lau)のことをここに。

まず予備知識としては、

このチャンピオンツアー(CT)に参戦できる順位を決めるワールド・クオリファイシリーズ(QS)があり、

その10位までがその当確ラインだった。

チャンピオンツアーは前年で上位22名の資格を有するツアラーと、

前年のQSで、年間10位以上の選手、

32名に加えてワイルドカード枠が2名=34名だけで開催される最高峰の世界選手権ツアーだ。

すでにこれに当確していたカノアは、このマスターズ前にはQSレベルでCT資格を得ていた。

ただカノアにはとても重要なことがあって、

このCT戦のクオーターファイナルで勝ち、

チャンピオンツアーで年間総合22位以内という成績によって、

来年の出場資格を再び得ることができる大切なヒートだった。

(QSで上がるより、CTの方がシード組み合わせ等、全てにおいて有利となる)

さらには、そのこと(CTとQSを同時に資格取得)ということによって、

カノアのQS枠が繰り上げられる。

そうなると、カノアの友人でもあるゼィークが、

QS年間11位という順位でフィニッシュしていたので、

10位に繰り上げられることになる、

つまりCTへの参戦資格を得られるという、

野球で言うところのメジャーか、国内球団の2軍かという違いが、

このたったひとつの順位にはあった。

で、クオーターファイナルのヒート4は、

良い波を待つだけ待つ作戦のあいだ、

ジョーディ・スミスはほぼ全てのバレルをメイクし、

そのあまりにも有名なフロントサイドをジャッジに披露し、

軽く2本のミドルスコアをたたき出して、

まだ波にすら乗っていないカノアにプレッシャーをかけてきた。

それでもぶれなかったのがカノア。

波を待つ。

10点満点の波を待つ作戦だった。

なんと、

残り時間が13分台まで待ちに待って、

多くのセット波がやってきた。

それらはサイズもあり、

ただうねりが弱いので、

全てがバレルにはならないことを知っているカノアは、

選びに選んだ波を深い位置、

つまりパイプライン側からテイクオフし、

その深いバレル内を高速で滑っていった。

ただバレル中盤から波弧内はピンチし、

アーモンド型になっていたが、

トリムとパンプを見事に使いこなしたカノアは、

フォームボールと呼ばれる斜面に泡状の層を浮き抜け、

(そこを通ると、通常サーフボードは沈んでしまう)

そして波のコブとウエッジによる段もメイクし、

さらには小さな唯一の出口から笑顔で吹き出されてきた。

私はもちろん、観衆、ジャッジ、選手、

会場全てが「これこそが今日一番の波、波乗り」として10点満点をたたき出した。

(実際には5人中、2人のジャッジがなぜか満点をつけず、9.93pt)

カノアは残り3分台になったところで、

さらにすばらしいバレルを抜けて8.10ptのバックアップスコアをマークし、

イチバンニンキのジョーディ・スミスでさえ、

次の波で(終了が迫っていたので1本だけという計算)、

9.87ptとある意味不可能な得点をマークしなくては勝てないほどの差を付けて、

そのままヒートは正式に終了。

カノアは、

本日だけで2回もジョーディ・スミスを、

つまりイチバンニンキをバックドアで下すという結果となった。

そしてこれが日本人(カノアの国籍はアメリカ)が、

パイプライン・マスターズのセミファイナル、

ベスト4に残った瞬間であった。

あわわ。

ヒート終了後、

カノアはインタビューで、

「ちょうどボクたちはそのこと(ゼィークのこの状況)を二ヶ月前に話していたんです。

もしそうなったらボクが勝って、君を(CTに)押し上げるからね。

でもまさかそれが本当になって、ボクが勝つことができるとは…」

そうやって驚き、そしてフツフツと喜んでいた。

ハワイからのCT選手誕生、

そしてジョーディ・スミスを破ったことにより、

ジョンジョン・フローレンスのトリプルクラウン王者が決定し、

パイプラインはおろか、ハワイ中のサーファーが大喜びし、

そしてカノアに感謝していたことは言うまでもない。

さらにセミファイナルの2ヒート目は、

ケリー・スレーター現役神格皇帝VSカノアとなり、

ここでもカノアは一本目から積極的にケリー・スレーター皇帝のさらに奧からテイクオフし、

6.67pt(私的には8.0ptくらい)をマークし、それに対してケリー皇帝は8.10pt、6.90ptと、

この波質では最大のスコアをたたき出して、

ケリー・スレーターはいまだに光り輝く神だと人民に知らしめた。

ヒート終了までにカノアが必要なスコアは8.33pt。

終了前にセットがバタバタと入り、

カノアは波を選びに選びぬいていた。

それを見ながら私は胸が破裂しそうになっていた。

残り57秒で、目的の波を決め、

ボードを返してフェイド気味にその最大の波にテイクオフし、

ストールからのパンプでバレルインしたカノア。

深いバレルからクラシックなハワイアンスタイルでバレルアウトし、

そのままセミファイナルは終了。

波の大きさと難易度的には9点以上だったが、

カノアに対しての一本目がロースコア(6.67pt)だったので、

ジャッジたちはきちんと見たのだろうか?

そんな心配がやってきて、ドキがムネムネしたのであります。(死語)

ヒート終了後、

自信たっぷりだが心配そうなカノア。

その最終波のスコアがアナウンスされ、

カノアは必要だった8.33ptを0.5ポイント上回る8.83ptをスコアし、

そのままケリー・スレーター皇帝を0.5pt差で下し、

夢にも見なかったパイプライン・マスターズのファイナルに進出した。

お兄ちゃんに抱きつく弟のキアヌ。

このときのカノアは、

家族がいる方向を見て、落涙しそうになっていたように映った。

私は家族がカノアの夢をずっと支えてきたことを知っているので、

嗚咽が漏れ、震えるほど感動してしまった。

ルーキーであるカノアが、

初出場となるパイプライン・マスターズで決勝進出。

しかも相手はジョンジョンを下したタヒチのミッシェル。

WOW!!

少し前には夢にも思わなかったことが現実となった。

ファイナルヒートは、

10点波というか、

本物バックドアを待つカノアVSミドルスコアでもなんでも優勝したいミッシェルという図式で、

勝負の世界で「たら」「れば」「もし」は禁句だが、

もし1本でも本物波が来ていたらカノアがチャンピオンになった気がする。

ただ、明日のブログで書きますが、

ケリーが「波が勝者を選ぶ」というセオリーだと、

この2016パイプマスターの称号はミッシェルでしょうね!

この詳しくは、

日本のコンペティションと共に歩んできたCOLORSマガジンの記事をここに引用します。

 

【祝!WSL】カノア五十嵐がKelly SlaterとJordy Smithを下し、CT最終戦”BILLABONG PIPE MASTERS”で2位に輝く!優勝はMichel Bourze、トリプルクラウン・チャンプはJohn John Florenceとなる!

そのカラーズマガジン主宰であるヨゲさんに電話をすると、

「やばいっす!熱いッす!新時代っす!」

興奮してそう繰り返していた。

これがそのクオーターファイナル

Kanoa vs Jordyダイジェスト動画↑

↑こちらが栄光のセミファイナル。
Kanoa VS Kellyダイジェストはこちらです。
ケリーのインタビューがさらに痛快だったので、
それはまた明日書きます。
それでは暖かな日を楽しみましょう!
Have a wonderful day!!

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