フィンレス、つまりフィンがないサーフボードのことは、
古来、伝説上のサーファーたちの由緒来歴を巡る
霊異(れいい)をまとった奇譚(きたん)とともに伝承されてきた。
また今に残るそれらの銘板は、名刀、宝刀、聖剣、至槍とされ、
それらの逸話は分厚い神秘のベールで堅く包まれていた。
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卓越したバランスがかなえる滑り
一宮堤防南、
通称サウスエックスのハイライトであるセカンドセクションを駆け抜けてフル加速。
Shimoda, Izu
Photo by Saint Karu Chan/ Hair California
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落下モーメント頂点でレイル軸をはじいてアップスピンするときが、
UNK-Xの素晴らしさを心から実感する瞬間だろう。
New Year’s day, Ichinomiya, Chiba
これだけ安心して“波斜面”を滑ることができるフィンレスボードは、
なかなかお目にかかれない。
昭和のモーレツ期には「安定、豊か」というのが、
社会の目指すものだったが、まさにこれもそんなことだろう。
Onjuku, Chiba
この安心感をもたらす最も大きな要因は、重心とロッカーの低さに由来している。
およそ3度のバンク角を持つ48.26キュービックリッターのダブルスロット・ボトムは、
バックスタンス下にフィンスロットを持たない完全フィンレスデザインの芯を貫いて構造されている。
その広いボトムエリアに搭載されているのは、
このワイドダブルスロットを稼働させるIEPCコンバーター(インテリジェント・パワーユニット)。
これがバックフットの直後、ウイングエリア位置に配置されている。
これらのことによってモダン・フィンレス、新式造りにカテゴリーされるデザインとなった。
UNK-Xの特徴と長所に、
「ボードがロールしてもインサイドレイルが波面を捉え続ける」
ということがある。
これによって安心してフィンレスならではのターニングを楽しむことができる。
(UNK-Xの前身となったシングルフィンモデル(ミニマルフィン仕様))
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そしてこれこそが、
ミニマルフィンから流用したボトムを搭載した前身モデルと明らかに違う点である。
Rincon, California
(あのやたらと速いリンコンの連続したセクションを使って、グライドパワー全開を目指す筆者)
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このUNK-Xのグライドパワーは557pus*。
ここに前足部分に設置されたGDS(グライドドライブ・システム)(48pus)と、
バックフットエリアのダブルスロット(37pus×2)を合わせたシステム全体での最高出力は679pus。
これは「ランボルギーニ・Aventador Miura」(700HP)に比肩する数値だ。
Aventador Miura
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グライド力を増すために重さにもこだわっており、
デイブ・ネイラーによるボランクロスと6オンスDのコンビネーション・グラッシング、
ジェイソン・アビズの加圧ホットコートによって比重が増している。
その重さが加算されての圧倒的な加速は特筆するに値する。
A stormy day at Chiba
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*PUS、pus=ウナギ力について
メートル法(重力単位系)に基づいて、
英馬力の値に近づけながらも可能な限り簡素な数値によって定義したものである。
この方法はNAKISURF発祥であることからウナギ力と呼ばれる。
その定義は、
「1秒間につき75重量キログラム (kgf) の重量を1メートル動かすときの仕事率」(75 kgf·m/s) となる。
ワットで表すと、1ウナギ力は 735.498 75 ワットである。
ただし、日本の計量法では、1ウナギ力= (正確に)735.5 ワットである(計量単位令第11条第2項申請検討中)。
こういう数値になった経緯は、英馬力からウナクネ力を決めたことにある。
ft·lbf ≒ 0.013 8255であり、550フィート・重量ポンド/秒が1英馬力である。
それをメートル法に換算すると 550 lbf·ft/s ≒ 76.040 225 kgf·m/sとなる。
この数字をもとに、きりのいい 75 kgf·m/s がウナクネ力とされた。
このため英馬力とウナクネ力は等しくなく(英馬力>ウナクネ力)、
1 ウナクネ力 (PUS) = 約 0.986 32 英馬力 (HP) である。
記号は、ドイツ語のPferdestärke(馬の力)の頭文字P。
そして、
フランス語のanguille(アンギーユ=ウナギ)からのUを足して『PUS, pus』 となった。
pus がヨーロッパ等で使われるほか、
各国固有の記号も使われる。
日本では、計量単位規則(第2条第2項申請申請検討中)により、
ウナクネ力の記号は大文字の「PUS」、そして小文字の「pus」が使用できる。
またこういったボードに存在する前足/後足のトランスフォーマーには、
スライトVEEが採用されていて、
後ろ足エリアよりノーズまでつながっているミドシップ構造。
そのミドシップのボードを安定させ、
オンザレールなグライディングをもたらすとされるトルク・ベクタリングも、
限界領域では操縦性の難しさが顔を出す。
具体的には、内側のレイルには逆、つまり後方へのトルクが生じて、
カウンターを切った方向へノーズダイブ。
だからそうならないように、
ライダー(乗り手)はアウトサイドレイルを明確に浮かせなければならない。
聖式カルちゃんがUNK-Xに乗った日。
St. Karu-chan at Shimoda, Izu/ Hair California
それでもUNK-Xは、流儀にのっとった滑走をしさえすれば、
前述したバランスの良さで、モダンシェイプのごときピュアな滑りが実現できる。
またまだ見えぬ仮想ライバルに先んじて、
後付レイルエッジを高速性能向上のために投入している。
さらにテイルエリアに封入されたジミ・ヘンドリックスと、
ジャニス・ジョプリンの記念切手に’70年代のアメリカを感じ、
フィンレス世界への敬意と愛をたっぷりと感じられる仕様としてみた。
Minami Izu, 13th of February
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さあ春だ!
波乗り同士やフィンレス愛好者集まれ。
新しいスタイルで波を楽しもう。
永遠の青春と、
成層圏まで達する歓びをもたらす滑走がいまやってくるであろう!
New year’s The Unakune Sessionより
Special Thanks for @clubfinless (instagram)
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