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【特大号】Tyler Warren’s Red Line タイラー・ウォーレンの新作レッドライン・インプレッション_(6372文字)

【Tyler Warren’s Red Lineインプレッション】

タイラー・ウォーレンがデザイン&シェイプした

『レッドライン』という新しいコンセプトのボードが来て、

昨日の良波で乗ってみたら大興奮となった自分がいた。

「これからの何年かはこのボードとミッドレングス、

そしてフィンレスだけで生きていける」

そんなことを感じて、今日の波を想い、

眠れなくなって、鯖一郎の新車をデザインしていた。

で、ようやく深夜にそれが完成し、

鯖一郎の命名者である瀧朗、

聖式カルちゃん(ヘアカリフォルニア)、

一級焚火師ヤスくん、しょう寅杉本さん、

そしてベンチュラセイジにそのデザインを送って、

感想を今か今かと待ったが、

日本は日曜日の深夜であり、みんなすっかり寝てしまったようで、

返信があったのは、

USA時差で日曜日の朝7時のセイジだけだった。

仕方がないのでギンギラギンのまま床についたのだが、

「少年のように興奮する」

そんな風に感じ、そこからアプリの将棋対戦までをし、

気づいたら夜から朝になっていて、

テラスのマックスたちと再び昨日の場所に行き、

レッドラインでサーフしてきたことはここに書くまでもない。

あ、書いているか。

とにかく、これから一大インプレッションを書こうという気概で、

コーヒーを淹れて、

ウナクネ河合さんからいただいたそれはおいしい土佐文旦(森本果樹園作)をいただき、

その土佐と沖縄糸満つながりで、遠い時代の坂本龍馬とジョン万次郎、

岩崎弥太郎のことを思いだしていた。

よし、書いていくことにしよう。

カリフォルニアの、いや世界の聖地サンファンキャピストラノ。

サンクレメンテの隣町であります。

そこで削られる最高峰のロイヤル・クルージングボードが

『タイラー・ウォーレン・シェイプス』である。

そこではフィッシュであったり、ミッドレングス、

バーオブソープで知られるミニ、ハイエンド・ショートボード、

歴史に準じたレプリカ、はたまた実験ボードだったりが誕生していく。

それを手がけるのはタイラー・ウォーレンその人。

彼の普段は絵描き、プロサーファー、トラベルマスターであるので、

ボードシェイプはフルタイムにはできない。

なので、世界でもNAKISURFを含む何軒かのベンダーだけに、

そのハンドシェイプが施されていく。

「削れるのは月にこれだけだよ。それ以上は待ちますとお伝えクダサイ」

そんな少数生産。

しかし、

フルタイムシェイパーでないことが利点ともなる。

なぜなら少数のボードだけに向きあうことができ、

そしていわゆる『一点もの』を誕生させることができるからであります。

逆に苦手なのが、同一ボードを作ること。

「1本削って波乗りに行くでしょ。そうすると、このレイル部を丸めた方がいいとか、

プレーニングエリアを増やそうと感じて、それを次のボードに施すのです。なので同じシェイプはないんです」

そんなことをいつも言っている。

「サーフボードは進化、または歴史だと思います。なので1日単位で進化していくのがよろしいと思うのです」

それを聞いた私は「その通り!」と快哉を叫んだものであります。

Tyler Warren’s Shape bay at San Juan Capistrano, California

.

さて、私のボード遍歴は、

ショートボードから始まり、そしてミニ、フィッシュと進んできて、

ミッドレングス世界に足を踏み入れて、

それから奇天烈事典ともなるフィンレス式に入門したての51歳です。

そしてあれは夏の終わりだった。

いつものようにタイラー家でサーフボードの話をしていたら、

私が好きなフォードアーズから教会岬という波質用のボードが欲しくなった。

いわゆる緩慢、タルイ斜面の長い距離、

しかも速いセクションが随所にというのがその波質です。

で、タイラーと長時間のディスカッションの末、

大きめの6’3″というショートボードをオーダーしてみた。

このサイズはミッドレングス未満であり、

まだ誰も触れていないようなエリアでもあったので、

稀代の天才に「好きなように作ってください」

そうお願いしたのがいまから4か月半前の10月13日。

【特大号】タイラー・ウォーレンが考えるサーフボードの理想_レッドライン!_エラーカード_デビッド・ヌイーヴァ_(3009文字)

完成してくると、想像通りオーダーサイズとは違っていた。

6’3″ x 19-3/8′ x 2-3/8″

完成ボード:6’5″ x 19-5/8′ x 2-5/8″

長さ、幅、厚み全てが大きくなっていた。

   

もちろんNAKISURFのオーダーボードにはほぼサイズ通りで来るのだが、

私はそういうことを一切気にしないのを知っているので、

彼が勝手に変更したのだろうと察した。

そしてこの変更は、

タイラーが神かと思えるほどで、

現在千葉でサーフする自分にとって、

むしろサイズのあるショートボードが欲しかったからに他ならず、

そんな状況を含めて、タイラーの洞察力というか直感、

または運みたいなものを強く感じた6’5″となった。

ご存じショートボードは、「進化」という名の元で短くなっていった。

6’1″くらいからスタートした私のボードは5’10″となり、

最終的にはミニに移行し、5’0″で大波を滑ったりした後、

ボードは突然大きくなり、普段使いは6’11″のシングルフィン。

「重く、分厚く、幅広のミッドレングスど真ん中」

というライアン・イングル博士の逸品であります。

エレガンスでクラシックなラインを信条とし、

私の加齢に合わせて、それはそれはの活躍をしてくれた。

で、今回は「ショートボードの刷新を」そんなテーマもあった。

さらには20年前の私のように「慢性ショートボード中毒」という人に向けて、

「浮力はいいものですよ。そしてこれは似ていますが、

全く違う世界に入ることができるドアになるサーフボードです」

という提案を実現させるべく、

例によってパキパキの薄めの波をスライスするだけのボードとは異なり、

波の上を滑走浮遊できるスポーツボードというのが、

この「レッドライン」のプロジェクトの大義であります。

より高浮力のボード。

そこにタイラー・ウォーレンならではのシングルコンケイブを基調にスライトダブル、

ロールVEE、薄いシングルフラットを搭載し、その推定浮力は38CL。

私の体重57kg前後。

この浮力と揚力、各機能のバランスはものすごく、

昨日の波質は、

堤防から流れ出すカレントに持ち上げられるテイクオフエリアが存在し、

そこに吸い込まれることなく、テイクオフでき、斜面上をトレースすることができた。

加えて、

「タイラー・ウォーレンが実験的にデザインした」

という角張ったグラスオン『ハチェット・ウッド・トライフィン』ならではのパワーフィールと、

ボードコントロール能力の高さが織り成す高速滑走の魅力に触れることとなった。

タイラー・ウォーレン2017、その威光にかげりは見えない。

6オンスのクロスにレギュラーフォーム、パワーホットコートとし、

タイラーも含めた私たちの考えである

「軽すぎない重いボード」ということの徹底化が図られている。

このボードの反極は、最近のショートボード。

超軽量フォームに、4オンスS一層、ほとんどこそげ取られたホットコート、

クロス際まで攻めるサンディング。

こう書いても軽量アイテムばかりだ。

体積を落とした上で超軽量化した“最新版”をというサーフボードで、

各社がモデル開発に挑むのも、今や「当たり前」の方策だ。

そんなダウンサイズ化の影響ボードが巷にあふれている。

実際、ほんの10年前までは、

「1980年代からの移行モデル」ともてはやされたショートボードは、

すでにその大半が姿を消し、

この浮力で乗れなくてはショートボーダーとして認めない、

そんな“ダウンサイズ+レスウエイト”の憂き目に遭っているサーフィン愛好者たち。

そんな中、

アレックス・ノスト、タイラー・ウォーレン、クリスチャン・ワック、

ジョエル・チューダーたちが目を付けたのがミッドレングスという路線。

これでサーフ業界は息を吹き返すかのように思えたが、

「薄いショートボード以外はサーフボードにあらず」とするのが、

廃刊となった初代サーフィンライフ(現在2代目を製作中だとか)を中心としたHOW TO世代。

ここでは四半世紀(25年)も前からプロサーファーたちの目線や姿勢を紹介し、

「サーフィンはこれだ」と、ターンに次ぐターン、

「テクニックに始まりテクニックに終わる」

デューク・カハナモクが伝えてくれた

「幸せに波に乗りなさい」

という真のサーフ魂を誰かに隠されてしまったのような誌面となっていた。

私も含めた読者は、そんなプロパガンダにも似た洗脳政策を受け、

ターンをするためにボードの厚みを削ぎ、

どんな斜面でもすぐにターンして、

ワンアクション入れられるようにクイックさを磨き、

そのあまりの浮力のなさを補うために泡となったらすぐにキックアウトするか、

(気色悪い)パンピングで波をつなぐのが精一杯だったけど、

「ハッピーサーフィンです一応これでも」と真剣にやってきた。

そんな反動もあって、重いミッドレングスに乗ると、

泡でもオンショアでもなんでもとにかく滑っていくという、

上記した近代サーフィングの父であるデューク・カハナモクが唱えた

「楽しく波に乗りなさい」とか、

ウナクネでは聖皇帝とされるトム・カレンがSURFER誌のインタビューで伝えてくれた

「できる限り長く波に乗りなさい」ということを思い出しつつ、

洗脳されてしまった身ではありますが、

運良く自分自身への回帰を開始していったのです。

安定のバックサイド。

.

ただ、

これまでショートボードのポピュラリティとして君臨してきたチャンネルアイランドでさえもが、

ボンザーとか、

分厚く丸いショートボードをこの何年かにかけて加速するように発表してきたのは、

ケリー・スレーターの薄いショートボードと共に育ってきた歴史を持つブランドとしても

「サーファー先導時代」に順応してきた証であろう。

このペラペラボードは賞金稼ぎをしているプロたち、

そしてその予備軍には良いものかもしれないが、

乗りこなすためには、ほぼ毎日サーフできる環境があり、

さらには辛い日でもサーフorトレーニングをし、

懸命にサーフし続ける者だけが乗ることができるものだろう。

私もその中にいた身として感じるのが、

そのあまりの浮力のなさに、

波のピークのさらに芯からテイクオフを敢行しなくてはならず、

沖のラインナップではギラギラと目を光らせて、その今を待ち、

いざ波が来たとなればたったひとつしか存在しない正解ラインに乗せるべく、

パドリングを開始していた。

で、歳を重ねてきて、

それは単一での愉楽だと気づいたのが15年前くらいだろうか?

ただ、日本やブラジル市場をはじめとして、

主流として残る“できる限り少ない浮力崇拝”が強い顧客のために

ペラペラショートボードの生産は当分やめないというのが、

多くのプレミアムブランドに共通する考え方のようだ。

速く、長いラインのウナクネ系ボトムターン。

陸側のフィンが抜けると、さらに加速するというボーナスも用意されている。

.

ただ、消費者であるユーザーたちが、

一度立ち止まって、「誰のための減浮力だろうか?」と考えて、

渦浮力への転換も進んでいけば、

そのプレーニング速度から感じるプレジャーのプレミアム感は、

増しこそすれ、衰えることはないだろう。

さて、かように少数の高級かつ高価なハイエンドモデルのみを、

自宅にこしらえたシェイプベイで削りだしていくのがタイラー・ウォーレン。

このシェイプルームは、東西南北、タテヨコ斜めと傾斜が一切存在しないこと、

その大きさと機能ではスキップフライのシェイプルームと同等以上とされている。

ここでは、

ずいぶんと前から「脱減浮力」から脱出したサーファーたちが、

ミッドレングスだったり、フィッシュ、

ミニやディスク、ボンザーにタイラー・ウォーレンの魔法を施してもらい、

かっこいい加齢サーファーとして更正、進化するためのボードを受け取っている。

ここに紹介するレッドラインも、

典型的かつ伝統的なショートボードのプロポーションであるが、

渦浮力をまとった新式、つまりネオ・ショートボードの先頭だと自負している。

タイラー・ウォーレンを印象づけるスラリと長いアウトライン、

ダウンレイルのナイフィーなフォルムにソフトエッジで許容範囲を広くし、

ハルボトムやバーオブソープで培ったプレーニングシステムから発生した滑走速度は、

一切減速されずにフィンエリアへと伝達。

堤防先より、セッション前に波詳細をチェックする筆者。

週末なのに無人という至福。

.

そこにタイラーデザインの”ハチェット・ウッドフィン”との組み合わせにより、

昨日のほとんどダンパーコンディションで、

セクションを抜けることを可能とした最高速を何度も感じた。

6’5″ x 19-5/8″という大型ショートボード系のプロポーション。

典型的なプレミアムらしいターンの数々。

波が来て、ピークが迫るまで「待ち」、

その最後の瞬間まで待ってからパドリングを開始すると、

その漕ぎ出しのトルクと速度に驚かされる。

そしてほぼ狙った波に乗ることができる範囲の広さにも着目したい。

 

クラス最速のテイクオフ性能は、

こうして連続写真が証明するように波が切り立つ前に斜面に押し出してくれるので、

安全かつ確実な入斜面を可能にしてくれる。

流れのきつい堤防波でこうして普通に降りていけるボードは、

上級者でなくても、初級者まで大きなアドバンテージとなろう。

波のトップに向けてボードを寝かせ続けることができたら、

このレッドラインの真価を発揮するときだろう。

渦浮力ボードゆえに絶対的なトルクが大きく、

特徴的なパワーフィールを持っている。

フットワークに対する応答性、トルクの伝達感を加味して、

レッドライン動力性能の限界は、

普通のショートボードの3倍はあるだろうか。

各部に施されたフォルム、コンケイブ等の設定によって操作が簡単で、

さらには前出した高速滑走の威厳からかくも独特のオーラを発している。

まさに見た目通りの“流れるような走り”を演じてくれるコントロール能力の高さは絶品。

一方で、わずかなコブにも反応してしまう対ワンダリング性もほぼ皆無なので、

リラックスした滑りを支える世界特級のゴージャスなグランクルーザーとしての、

このモデルのキャラクターの骨格となっているように見える。

波の炸裂による押しにも強いのは、

新開発の丸いリバースムーンテイルによるものだろう。

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ただ残念なのは、

開発当初に「実験ボード」としてしまったので、

タイラー・ウォーレンならではの

もはや“芸術品レベル”と思えるスタイリッシュなティントやピグメントではなく、

クリア樹脂にエアブラシ赤だったということだろうか。

これにグロスをまとえば、

ウエスか、サジーという銘職人が丹精込めて仕上げる姿がまぶたに浮かぶ。

入念な作り込みによるエクステリアと性能との融合

――それこそが、タイラー・ウォーレン・シェイプスの神髄と言えるだろう。

ましてやそれが、どこにでも持っていきたくなる乗り味を実現させた

当代一流の性能を備えるネオ・ショートボードだとすれば、そんな歴史に残る作品が、

時代のヒーローとしてスポットライトを浴びる日が近づいているかのようであります。

長くなりましたが、ここにタイラー・ウォーレン・シェイプスの実験作から、

稀代の名作へと昇華した『レッドライン』のファーストインプレッションを終えます。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

.

Sing from your heart.(心から歌おう)

 


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