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【特大号】フィッシュ・ボード完全版_タイラー・ウォーレンへのインタビュー(NALU2015年10月号掲載)_(5265文字)

NAKI 2017/self shaped 6’1″ UNK-S

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私がここまでサーフィンにのめりこむようになったのは、

フィッシュというデザインのおかげと言っても過言ではない。

ショートでもロングでもなく、

幅広の、丸いボードに恋い焦がれ続けている。

それは飛ぶように速く、

ひとたびレイルを切り替えたら、

波の内側まで切れこむように曲がり、

小さい波に、さらには掘れた波、長い波、

そして大きな波にもフィッシュがあれば乗ることができるからだ。

史上最大のエルニーニョ気象だと新聞記事で読み、

冷水で知られるカリフォルニアの海水が摂氏23度にもなった夏の終わり。

ちょうどサンオノフレでフィッシュ派生のボンザーディスクに乗って、

そのすばらしさをシャンパンになぞらえたメールを友人に送ると、

返信に「誰のシェイプか」ときたので、

『TW』と題名を変えて、そのボード写真を送った。

このTWことタイラー・ウオーレンは、

サーフィングの歴史に精通しているシェイパーであり、

大小どの体積のボードに完璧に乗ることもでき、

フィッシュをリ・クリエイトし

”バー・オブ・ソープ”という大作を産み出している。

そんな伏線があって、フィッシュの話が聞きたくなり、

タイラーのシェイプルーム&スタジオがある

サンファン・キャピストラノ市に向けてサンタアナ・フリーウエイを北上した。

San Juan Capistrano Mission

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   『永遠のフィッシュ』

NALU誌2015年10月号掲載

-TW-(タイラー・ウオーレン)

僕のファーストボードがフィッシュさ。

あれは5’8″、幅が19-3/4″。

ボキシーで厚い(レイルは)2-5/8″だったかな、

もしかしたら2-3/4″くらいはあったのかも。

誕生日のプレゼントだった。

それは大きな黒いゴミ袋で包まれていた。

それを開けたらそのフィッシュがコーヒーキャンドル・ワックスと一緒に入っていた。

チャンネルボトム、ウイングが付けられたスワロウテイル。

ブルース・ジョーンズのシェイプで、フォームコアのフィン。

ドヒニー(ダナポイント市)に行って、

ボーンヤードの波に乗ったのは21年も前のことになるね。

何から話そうか。

フィッシュについては話したいことが山ほどあるんだよ。

まずは歴史のことからかな。

サンディエゴのポイントロマ。

スティーブ・リズがフィッシュの原型をここでシェイプしたのは1967年。

ニーボードからのインスピレーションと聞いている。

5’4″のフラットロッカーで、

スイムフィン(足ヒレ)の代わりにテイルとツインフィンが付けられた。

これがサンディエゴ・フィッシュの定義さ。

そのサーフボードは速く、

見たこともない角度でのカットバックを可能とし、

波へのアプローチを変えただけでなく、

掘れた波への可能性を格段に高めた。

“フィッシュ”は、

1971年にカルト的な人気があったサーフロックスター、

デビッド・ヌイーヴァが乗り、

それからマーク・リチャーズが乗って世界チャンピオンとなった。

フィッシュ最大の特徴は高速滑走。

それを支配し、操作するために乗り手は

“低い中央重心”とするのが基本。

だからフィッシュに乗ったグッドサーファーを見ていると、

ターンがコンパクトで、

ハイライン(=波斜面上部の滑走位置のこと)を描けるので、

必然的にライディング距離が出る。

その特徴を活かすサーファーは絶妙のスタイルとなり、

逆に言うと他のボードではこういうことにはならない。

デザインキーポイントは、

「幅広く」「短く」ということ。

速く、ルースで、偉大なる小波用ボードである一方で、

極限の大波用にも使用されている。

フィッシュ・ラヴァー(愛好者)たち。

思いつくだけでスティーブ・リズ、デビッド・ヌイーヴァ、

スキップ・フライ、ラリー・バートルマン、マーク・リチャーズ、

デレック・ハインド、ショーン・ステューシー、

ボブ・ハーレー、カール・ヘイワード。

こんな人たちがそれぞれ自分たちの

「フィッシュデザイン」を産み出しながら現在に至っている。

しかも全員がフィッシュデザインの基本からぶれていないというのもすごい。

2枚のフィンを基調とし、それぞれのレイル、

乗る波に合わせてのロッカーとフォイルをベストまで調整してきた。

そして今日、

ハードリッパーたちが新しいバージョンのフィッシュで波に乗る。

ちょうどWSLタヒチ・チョープーのオンライン・ライブ中継で、

ケリー・スレーターのヒートが映る。

ケリーはこのヒートもフィッシュだね。

あれは5’9″くらい?

フィッシュは全ての可能性を秘めている。

いかに短く、そしてサーファーがどのように滑走表現できるか。

ニュージェネレーションのサーファーたち全員が、

フィッシュからの派生ボードを好んでいるというのも頷ける。

フィッシュデザインは、ありとあらゆる亜種がある。

自分でもさまざまなデザインに挑戦してきたし、創ってきた。

それはまた”終わりなき道”でもある。

©Brian Bielman

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トゥインサーフィンにも大波用ガンもフィッシュからのデザインさ。

例えばネイザン・フレッチャーが、

チョープーで史上最も凄い波に乗ったボードもフィッシュからの派生デザインだ。

 

フィッシュデザインの起源に迫っていくと、

1950年代のボブ・シモンズに行き着くだろう。

広く大きなテイル、ツインフィン。

すでにコンケイブが施されていて、

ロッカーもあって、複雑なボトムデザイン。

ノーズにはアップ、ボトムにはダウンレイル。

シングルコンケイブ、VEE。

この近代デザインが1950年代に成し遂げられていたというのは、

60年以上経った今でも驚かされる。

1950 Bob Simmons

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——フィッシュデザインにおいてのデザインの変移を教えてください。

まずは今も言った1950年代のシモンズ。

そして60年代後半になると、

『クラッシック・フィッシュ』をスティーブ・リズが創り、

70年代にはデビッド・ヌイーヴァ、

スキップ・フライたちがそこから現代フィッシュデザインの源を創造し、

マーク・リチャーズ、ラリー・バートルマンたちのツインフィンとなった。

ウイングが付けられて、

ハワイのパワフルな波のために曲線的ではないアウトライン。

80年代に軽量化という波があって、

フィッシュはいわゆる”ハイ・パフォーマンスボード”となった。

強いVEEがボトムに施され、

ショーン・ステューシーやボブ・ハーレイ、

カール・ヘイワードたちがこのデザインを好んだ。

マーク・リチャーズまでもがこのVEEに迎合したのも今となっては興味深いよね。

90年代になって、ボリューム(体積)がさらに小さくなり、

さらにはショートボードと融合していった。

軽く、薄く、フォルムも丸く、ロッカーもあって、

ここで頭角を現したスレーターたち、

つまりニュースクーラーたちがこぞって乗っていたのがこれさ。

例外的にトム・カレンが、

Jベイでスキップ・フライのクラシックフィッシュに乗っていたけど。

2000年になって、この長い歴史からデザインをなぞらえて、

そしてそこからインスパイアされて、

現代の古典的なフィッシュが再び誕生した。

(例としてリッチ・パベルを挙げた)

そして今もフィッシュデザインは常に変革し、

推移しては古典に戻ったり、実験されたりというのを繰り返している。

Tyler Warren’s P-pass Swallowed Gun

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——タイラーにとってフィッシュのフォーミュラというか、味とはなんですか?

実は、最近になって

「サーフボードは正しい幅」だというところに気づいたんだ。

確かに(60年代から較べると)幅は狭くなったね。

けれど、

どんなサーファーがどの波に乗るかによってもデザインは変わる。

大きな波に乗るのなら基本はフラットボトムとし、

VEEもあり、小さい波ならばコンケイブを深くしている。

——それでは歴史上でのボトムコントゥアー(デザイン)の変移を聞かせてください。

シングルコンケイブ、フラット、そしてVEE、スパイラル…。

シモンズはシングルコンケイブ。

スティーブ(リズ)は、

フラットでヘア(ほんの少しの)コンケイブ。

70年代にはVEEボトムのブームがやってきて、

80年代後半からは、シングルとダブルコンケイブにVEEが加味された。

 

——フィッシュに対してのフィンの定義は、ツインかクアッドだけでしょうか?

 

そんなことはない。

トライでもシングルでもフィッシュになりえる。

どんなアウトラインのシェイプか、

スワロウテイルか、またはスクアッシュでもいい。

でも僕にとってのフィッシュはスワロウテイルだろうね。

深さ(切れ込み)もさまざまで、6〜7インチの、

または極小の、1インチというバリエーションが見られる。

今日、全てのシェイパーたちがこの歴史からデザインをなぞらえて、

そこからインスパイアされたボードを削っている。

フィッシュが究極的だとされるのは、

すでに完成されているのに、終わりがないデザインということ。

いつまでもシェイパーたちはこの丸まったアウトラインをなぞっていく。

それぞれの時代にさまざまなフィッシュがあって、

それですばらしい波を滑るサーファーたちがいた。

そんなサーフボードデザインが存在することに対して、

僕はただただ畏敬の念を抱いている。■(了、8/30/15)

初出ナルー。

この特集を提案した天才寺内編集長に改めて感謝をし、

そしてこれを読むことになった人たちにフィッシュボードの、

さらにはサーフィンのすばらしさを感じていただけたら幸いである。

(追記、修正2017/6/21)

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その時の4見開きをここに。

サーフィング遺産美術館(サンクレメンテ)にある

スティーブ・リズの5’6″フィッシュ。

タイラーが選んだフィッシュ12選。

左から

5’11” TW GUN FISH 19” X 2 1/2”

5’5” TW DREAM FISH 20 1/8” X 2 1/2”

5’4” TW DREAM FISH 20 1/4” X 2 1/2”

4’10” TERRY MARTIN 20 3/8” X 2.5”

5’7” TW JA SPEED FISH 20 1/4” X 2 1/2”

5’8” PAVEL MICRO WING 20 5/8” X 2 5/8”

7’4” TW GUN FISH 19 1/8” X 2 5/8”

5’6” PAVEL SPEED DIALER 18 3/4” X 2 1/4”

5’10” TW TRUSTER FISH 18 7/8” X 2 5/16”

5’1” TW SWALLOWED SOAP 18 7/8” X 2 3/8”

5’3” TW BAT MOBILE 19 1/4” X 2 3/8”

4’10” TW SWALLOWED SOAP 22” X 2 1/2”

(TW=Tyler Warren Shape)

(TW JA=Tyler and Jastin Adams Shape)

1.天才アーリック・ユールもまたフィッシュ信者の一人。

彼は古典的デザインを踏襲しながらも、

ミディアム(素材)を柔らかいものとして、新境地に達している。

2.シモンズ由来のミニフィッシュに乗るクリスチャン・ワック。

チャーチ岬。5’0″ x 20-1/2″ x 2-5/16″。

3.フィッシュデザインにチャンネルを施す筆者。

本文内でタイラーの言う実験的模索は永遠に続いている。

4.サンディエゴ・フィッシュの旗艦であり、

時代のアイコンであるスキップ・フライ。

5.ハワイのノースショアの波で5’0″ミニフィッシュに乗る筆者。

どんなに大きくても斜面が荒れていなければ乗れる。

6.2015年のモダンフィッシュ、NATIONドリームクラッシャー。

前足部分のシングルコンケイブと後方のVEEが融合できるのは、

デザインが機能を求めた典型だろう。

7.冒頭のスティーブ・リズ・オリジナルフィッシュ。

色あせることのないアウトラインにドキリとさせられる。

彫刻家であり、

実験的サーフボードの制作者アーリック・ユール。

彼の宗教的主題がフィッシュだという。

新素材ストリンガーレスEPSと、

前後逆のキール・フィンセッティングに伝説回生への予感暖色が囲んでいた。

昨日の私。

Nationのクラッシックフィッシュ。

ネーミングはクラシックだが、

例によって、最新のフォルムが隠されていて、

それは最高の乗り味だった。

COLORS MAGAZINEのヨゲさんが、

「一生滑走」と揮毫しているが、

同じ気持ちである。

NAKISURFでは、こんな気持ちを応援します。

このフィッシュやサーフボードについて迷ったら、

shop@nakisurf.com まで。

私やスタッフたちが、

サーフボードのあらゆる要望に対応します。

Happy Surfing Forever!

 


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