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naki's blog

【特大号】アレックス・ノスト個展が金曜18時より品川区で_さよなら藤沢『久昇』8ホテルのフーディガイド_(3159文字)

こんにちは、

こちらの南うねりはまだ続いている。

体の芯というか、

体幹筋が少しヨレヨレで、

筋力が回復したらさらにここを鍛えないと、

波が連続したときに自分の思い通りの滑りが表現できないと感じた南うねりでした。

滑りは滑走とも言い、

ウナクネ派はクネリともいいます。

 

Alex Knost at Four Doors, San Clemente

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そのクネリ師範、

アレックス・ノストこと、

ウナクネ総帥がフォードアーズで魅せた最高峰の滑り。

そして総帥は日本に向かいました。

@rvcajapanより

オリジナルスタイルを追求するサーファーであり、

アートや音楽など創造の場所を広げ続けている稀代のカリスマAlex Knost。

彼にとって初となるスケールでの個展 “FORM & VOID” が開催される。

2017年10月14日(土)~10月22日(日)

13日(金)の18時からレセプションパーティーがあり、

ここに鯖師やタキビシ、スカシ、ハダシたちが集まり、

さらにはカラーズのヨゲさん、山さん、聖式、幸式、

後輩、先輩、美人さん、RVCAの人たち、

オルタナ派、ウナクネ有志が集まるという。

T-ART HALL

東京都品川区東品川2丁目6−10

[悲しいニュース]

藤沢駅にある超名店『久昇』が、

「今月いっぱいで閉店してしまいます」

そう腰越=片瀬のシゲルさんから連絡を受けた。

40数年の歴史。

すばらしい宴が約束されていたお店。

オヤブンはどんな気持ちでこの案内を書いたのだろうかと思ったら視界が潤んだ。

私が湘南にいるときは、

この8ホテルを安住の地、つまりサバリバとしている。

そんなご縁があり、

8ホテルさんで、

『Foodie Guide』なるものを毎月連載している。

その栄えある第1回が『久昇』でした。

このときも「名店=永遠ではない」というのを主題に、

諸行無常、

つまりこの世の存在はすべて、

姿や本質までも常に流動変化するものであり、

存在は同一性を保持することができないことを書いた。

それがこんなに早くやってくるとは….。

そのフーディガイド第1回から、

少し抜粋して、

この久昇のすばらしさをここにお伝えします。

.

  第1回 パクグビーの久昇

10代の中後半と、20代は鎌倉市の腰越に住んでいた。

で、ハブ駅となる藤沢では名店で食べ歩いた。

昔といっても25年も前なので、

なくなってしまった名店もたくさんある。

名店、人気店は繁盛しているので永遠だと思われがちだが、

跡継ぎがいなくなったり、

その料理を作る名人が病の床についてしまった途端に過去のものになる。

ざっと思いつくだけで、

石上1丁目にあったとんかつの名店『とんこ』、

そして倉本シェフが手がけた『ヒポポハウス』などが失われている。

だが、いまだ多くの名店が健在なのがうれしい。

 

さて、初回であるので、

まずは老舗名店から『久昇』に向かった。

『久昇(きゅうしょう)』

創業昭和46年。

全席完全禁煙。

17時の開店直後よりほぼいつ行っても満席。

食べログ等を開くと、

「コスパ最強」

「海鮮の極み」

と散見されるが、

それだけではなく、

このお店だけでしかいただけない美味の数々と、

平均年齢が極めて高いスタッフたち。

花板さんは私の父くらいの年齢で、

お姉さんと呼べば喜ばれる年齢の熟練サーバーさんたちのさっぱりとした接客と相まって、

いつも強烈な印象を受けるのです。

ここは極まった居酒屋でも、優秀な割烹でもなく、

『久昇』という独立宣言したお店であるように見受けられる。

事実、藤沢市民のサバちゃんは、

「小さい頃から、お正月になるとですね、家族で行くお店です」

そんなクラシックな名店だと教えてくれた。

入店し、まずはビールを注文する。

さっと出てくるサッポロ黒ラベル。

繊細な味にはこういうビールがいい。

最初の肴は『錦木(ニシキギ)』。

これは最近私が凝っていて、

その中味は、生ワサビが中心で、

この大きな個体をすり下ろして海苔やネギ、

上等なかつおぶしを散らしたもの。

これはかの食通魯山人が

「心気爽然となるもの」として愛した京都のおばんざいでもあります。

ならば魯山人の美しく、

清らかな文章からこの料理の記述を引用させていただく。

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(前、中略)

上等のかつおぶしを、

せいぜい薄く削り、

わさびのよいのをネトネトになるよう細かく密におろし、

思いのほか、たくさんに添えて出す。

で、これが食い方は、両方適宜に自分の皿に取り、

ざんぐりと箸の先で混ぜて醤油を適量にかけ、

それを炊きたての御飯の上に載せて、

口に放り込めばよいのである。

同時にアッと口も鼻も手で押えて、

しばし口もきけないようなのが錦木の美味さである。

 

.

私の場合は、

口に放り込んで、

錦木の強烈な香りが立った瞬間にビールをグビーとやる。

もうこれだけで全てが良き方に向かうような気持ちとなる。

そして次は箸に少しだけ錦木を付けてぱくりとし、

ビールをグビとやって、

パク、グビとやっている内にたまらないほど美しい酔いとなる。

パクグビグビー。

そして、次の「かんぱちの刺身」を花板さんに直接注文すると、

四角い小さなお皿がすぐに用意され、

かんぱちのサクがまな板にうやうやしくおかれ、

とても大切なものを切るように刺身包丁で縦にしっかり一枚、

そして一枚と切られて、

5枚となったところで「はい、カンパチです」と手渡された。

腰を上げ、

賞状を授与されるように頭を下げて恭(うやうや)しく受け取り、

先ほどの錦木と同じ生ワサビを刺身の上にたっぷりと置き、

それを柏餅のように丸め、醤油をちょんと付けて頬張った。

“身が詰まっている”とは良く聞く表現だが、

どんな魚体だったのかを生前に確かめたくなるほど味が凝縮していて、

あのカンパチの甘い脂と生ワサビが渾然一体となり、

さらには上に抜ける爽やかな海風味が口いっぱいに拡がった。

このまま飲み込まずにいたら中国始皇帝が探していた

「不老不死」よりもずっと良いものになるのではないだろうか?

そんな仮説まで立てつつ、

目を上げて花板さんを見ると、

こちらをうれしそうに見てくださっていた。

親指を立てて”おいしい”という表現をしたらつい飲み込んでしまった。

悔しいのだが、まだ4枚もそのずっしりみっしりが残っている。

味の余韻、そして記憶。

これは自身のDNAまで刻みこまれるのだろうか?

そんなことまで考えながら残りのビールを飲み干した。

グビーー!うまい!!

最後にはここの名物というか、

最高峰の親子丼をいただきました。

玉子の甘さと、鶏の旨味、

そしてピッカリと光ったご飯が織りなすハーモニー。

この味の厚みに陶酔するようについもう1本ビールを頼んでしまうのでありました。

『久昇』のことを村上春樹さんも大好きで、

そして私たちの尊師たちも愛するお店となっているが、

老舗や名店を超えるひとつの事象として、

永年讃えられるべきだと感じるのであります。

ただひとつだけの難点は、

冒頭に書いたように年配の方たちなので、

次世代に引き継がないと、

この瞬間しかいただけないというありがたいものであるのかもしれません。

そして久昇のことを思い出すと、

ついパクグビーとついエア・ニシキギをやってしまう。

パクグビー。

.

久昇 本店

神奈川県 藤沢市鵠沼橘 1-17-2

さよなら久昇。

季節は秋。

しかも私の誕生月の10月。

『源氏物語』の一節を思いだした。

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須磨には、いとど心尽しの秋風に、

海は少し遠けれど、

行平の中納言の、関吹き越ゆると言ひけむ浦波、

夜々はげにいと近く聞こえて、またなくあはれなるものは、

かかる所の秋なりけり

(須磨の巻より)

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諸行無常だ。

日々を大切に生きよう。

そして行ける人は久昇にぜひ。

(瀧朗情報だと、もうすでに予約が取れない状況だという)

昭和の名店です。