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naki's blog

【naki’sコラム】vol.11 虹のかけはし

「都会での暮らしは全てが人工的である。多くの人は自分の足の下にある土をまったく感じることはないし、植木鉢で育つ植物以外の植物を目にすることもない。街灯があるせいで、星のちりばめられた魅惑的な夜空までは目が届かない。真なる魂=グレイトスピリットが織りなす光景から遠く離れて生活すると、人々はいともたやすくグレイトスピリットの法を忘れてしまう」
— ウォーキング・バッファロー(ストーニー・インディアン)

Walk on a rainbow trail,
Walk on a trail of song,
And all about you will be beauty.
There is a way out of every dark mist,
over a rainbow trail.
(NAVAJO SONG)

虹の道を歩こうよ、
歌の道を歩こうよ、
そうすれば全てが美しくなるはず。
どんな暗い霧にも抜け道はあるのさ、
虹の道を渡ろうよ。
— ナヴァホ族の詠唱歌より

 

カリフォルニア州に住んで11年が過ぎた。日本から越してきた当初は、大自然と都会が調和したアーバン・カントリーな場所だと思っていたが、昨今の米国、特に西海岸の地価高騰に伴い、南カリフォルニアに開発ラッシュが起こり、広大な大地が住宅地と化していった。そして住民が倍増、いつも行っていたサーフスポットはーー首都高速のようなーーフリーウエイのように人で溢れていった。それを目にしながら、いくつもの季節が過ぎる間、『俺は仕事環境や金銭的な理由でここにいてもいいのか?』と自問し、引っ越す決意をした。

バタフライイメージ

「バタバタバタッ……」
風と雨の大音量で目を覚ました。
「(南カリフォルニアの夏に)なぜ雨?」と寝ぼけ、湿った暖かい部屋に気づく。そうだ、俺はカウアイ島に越してきていた。
時計を見ると5時、もうすぐ夜が明ける。窓の外を見ると、空に雲がすごい勢いで走っていた。サーフボードを抱え外に出ると、雨は止んでいた。風のかたまりが椰子の木々の間をすりぬけて高い音を立てている。
夜明け前の海への道。両側に植わった椰子が揺れている。脇の暗がりにはプルメリアの白、ハイビスカスの赤色をぼんやり灯している。左側には草原が拡がり、隅の塊はきっと牛の群れだろう。その向こうにそびえるラワイ山、その稜線の後ろから朝陽が昇りはじめた。
丘を下って青い海が見渡せる駐車場に着いた。夜明けのオレンジとピンクの柔らかなハイライト、まだ闇から醒めない影のコンビネーション。沖から幾筋もの巨大なうねりがオフショアの平らな海面を伝わり、岸に向かって近づいてくる。うねり群の一番大きなうねりを目で追いかけていると、それはリーフに乗り上げて持ち上がり、たわみ、波へと昇華し、白い飛沫を華やかに撒き散らし、果てた。
サーフボードと一緒に溶岩の切れ込みから沖へと漕ぎ出て行く。風というエレメントが作り出した「SURF=波」。俺たちはいつもそれを追い求めている。
波がやってくる方向にーー沖に虹の始まりを見つけた。上から赤、橙、黄、緑、青、群青色、紫という七色の縦一本柱が現れ、それはやがて距離を伸ばし、大きな半円橋となった。さらには虹の上にはさらなるもうひとつの薄い虹が出現している。この色彩の混合は夢の中のように美しく、それはまるで生の先にあると考えられている「天上界(アッパーワールド)」をかいま見るようで、俺はこの世に存在する全ての神様を拝むような気持ちで呆然と海に浮いていた。大好きなサーフィングが導いてくれたこの場所に『夢、希望(HOPE)』が虹のかけ橋となって現れたのだろうか、などとも考えた。
十数年前から地から湧き出るパワースポットの存在を感じ始めた。その場所では心は深い考えとなり、体は健康に、さらには精神が研ぎ澄まされていくのを実感した。
そしてさらに旅を続け、そのエネルギーを得られる場所を世界中に発見していった。
このパワースポットの持つエネルギー、つまり精神に潜む霊的なものを探求していると、心、体、魂について限りない可能性があることがわかった。
さらにこういった事柄を文献等で調べてみると、先住民族の慈愛に満ちた豊穣なる教えは、 幾千年も人々の精神を癒し導いてきた。それらの教えは言葉こそ違うが、原型と同じようにここポリネシアにも届いていた。その教えを実践することによって、現代の私たちに生きる指針を与えてくれていることに気がついた。
波乗り、すなわち海に触れあうことから始まった俺の半生は、直に大自然と調和することの大切さを教えてくれた。その精神を敬うことから始まり、自らの肉体とスピリットに耳を傾けると、それから様々なスピリチュアル・インスピレーションが訪れてきた。これを説明すると、(俗な話で恐縮だが)映画スター・ウオーズではフォースと呼び、または直感、霊感、示唆、チャネリングという言葉が当てはまるだろう。
そんな霊的な求道心もあり、また理由の深いところでは、この地球の秘密を知ろうと、パワースポットへの引っ越しを決意した。第一候補として、このハワイ諸島、そして屋久島、奄美大島、フロリダ半島、メキシコ、コスタリカ、フィジーが挙げられた。どこも甲乙つけがたいが、なぜかカウアイのエネルギー、つまりハワイ語で言うところのマナ(MANA)に引かれてここ、カウアイ島までやってきたのか。
ちょうど今日、ここに日本に猛威をふるった台風14号崩れの低気圧からの最初のノース・スウェルが入ってきた。そして7年ぶりという巨大な南西うねりがタヒチから同時にやってきた日。俺はこれらのうねりに導かれて、それともただ単に虹に引き寄せられて、遙々ここまでやってきたのかは定かではない。だが、先住民族から発せられたグレイト・スピリットに導かれたことは確かだろう、と思いながら背筋を伸ばし、眉を開き、この島の大波と向き合った。(了、9/15/05)

波イメージ

波イメージ

追記一:
いにしえの昔から霊的な求道者たち、つまりシャーマンは人々を癒し導いてきた。ハワイの秘密の言い伝え7原則を見つけたので、自分なりに翻訳してみた。よく耳にするアロハもこの中にあり、とても純粋で大事な教えであると感じた。
shaman━━ n. シャーマン, 祈祷師。
shamanism━━ n. シャーマニズム, 巫(ふ)術。

Seven Principles of Secret Hawaiian Wisdom
IKE -The world is what you think it is
KALA -There are no limits, everything is possible
MAKIA -Energy flows where attention goes
MANAWA -Now is the moment of power
ALOHA -To love is to be happy with
MANA -All power comes from within
PONO -Effectiveness is the measure of truth

海イメージ

ハワイの秘密の言い伝え7原則
IKE、第一原則、世界はあなたが考えるように存在している。
KALA、第二原則、無限である。全ての可能性を信じろ。
MAKIA、第三原則、あなたが望めばエネルギーはやってくる。
MANAWA、第四原則、今、力をふりしぼれ。
ALOHA、第五原則、愛、幸せと共に生きること。
MANA、第六原則、全ての力は内から湧き出てくる。
PONO、第七原則、真実とその効力は同等である。

追記二:虹について。
ご存じのように虹は空気内にただよっている水滴に太陽の光が屈折、反射する現象。光は水に入るときの屈折の割合が、光の色(波長)により違い、このためそれぞれの色に分かれて見えるのが虹。
でも俺はこう考えた。
「きっと虹は地球の創造主がこの現象を用いて、色を感じることができる生物に贈り物を作ってくれたのだ」と。
天に浮かぶ七色の違う色、それはきっとハワイの教え七原則が色になって現れているのだろうか?とも考えた。これもスピリチュアル・インスピレーションなのだろう。

虹イメージ

虹イメージ

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