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【naki’sコラム】vol.37 『さらなる旅へ – バハ・メキシコ』 Donavon’s trip part2(1999年初冬)

ゲートを上げ、またさらに進み、突き当たりを右に折れると、そこは岬の先端だった。
下を覗きこむと、ポイントに沿ってレフト(グーフィー)波が崩れていく。
そして波の最後は向かい側から崩れてきたライト(レギュラー)と結合し、ワイルドなエンドセクションを形成した。
その一部始終を見たみんながエキサイトしはじめた。

突然、入り江の奥にある部落から大きな黒犬が吠えながら走ってきた。
「やばい!」
こちら側からは黒犬ウイリーが立ち向かっていく。
両者(両犬)が重なると、彼らは親密にお互いをなめはじめた。
「?」
「アンディ(大きな黒犬)はウイリーのお母さんなんだ」
飼い主チャドがうれしそうに説明する。
胸をなで下ろし、もう一度海に目をやると、岬の沖に点在する大小様々な岩の上で形のいい波が崩れているのだが、追いかけると全ての波のライディングライン上には必ず岩が出現してしまう。
「あそこは8フィート以上ある西うねりならサーフ可能になるよ。でも俺と友達以外誰もサーフィングしたことがないはずだ」
と案内人チャド。
「ここは何という名前の場所なんだ?」
ドノバンが聞く。
「『ミセス・ジョンソンズ』。そして岬の先が、『ミセス・ジョンソンズ・リーフ(岩棚)』。
この下のビーチブレイクが『ミセス・ジョンソンズ・プレイグラウンド(遊び場)』で、この崖の下のレフトが『ミセス・ジョンソンズ・ロックス(多数岩)』というんだ」
そのジョンソン婦人は誰かは知らないけど、キャラクター色が強いネーミングがなんとも洒落(しゃれ)ている。

待ちきれないベーンがもうウエットスーツに着替えている。
ドノバンもサーフボードにワックスを塗り始めた。
俺もウエットを着て、水中ハウジングを密閉し、浜に降りたところでドノバンが最初の波に乗った。
崖にあたってウエッジしてくる波がなんとも楽しそうだ。
ベーンとアドルフはライト側のピークにセット。
チャドは砂浜で犬たちに囲まれながらストレッチング。
ブライアンは岬の先端に望遠レンズを立てている。
朝日の豊富な光と、凪いだ風の中を幸せにサーフィング。
真横を走り抜けたドノバンのレールからシュタッターと水切り音がうなる。 
2時間ほどゆったりと時間が過ぎた。

風が北東からタックインしてきたところで一度上がることにした。
「朝食だー」
といいながらチャドの案内で歩いて行くと、部落で最も海に近い家に入っていく。
ここが、かのジョンソン婦人の家だという。
窓からふりそそぐ陽がとっても優しいリビングルーム。
壁に飾ってある写真や絵を見ていると、少年時代のチャドが写真の中にいた。 

「!」
ジョンソン婦人とはチャドのお母さんだったのだ。
黒犬ウイリーのお母さん犬、この秘密のサーフポイント、すべてが今つながった。

残念ながらジョンソンさんは今仕事で留守なのだそう。
チャドが作ったタコスを腹一杯食べる。
昼寝をするベーン。
洗い物をするアドルフ、ドノバンは陽の当たるカウチの下で猫を抱いている。
俺とブライアンでバックギャモンを何回かやっていると、いつのまにか外に出ていたドノバンが
「ハイタイドの波いいぞ!」
と帰ってきた。
のそのそと見に行くと確かに入り江の奥で不規則ながらも感じのいい波が割れていた。

ドノバンは
「軽く浸かってくる」
と、さらなる波体験を求めて崖を降りていく。
ブライアンもボードにワックスを塗りはじめた。
入り江は崖に囲まれているために風は感じず、暖かい陽の集会所だった。
心地良いエリアで波を眺めていると、ドノバンが岩の間を縫うようにして波の上にいた。
彼は岬から発生するバックウオッシュを利用し、深いターンや速いトリムで乗ってくる。(余談だが、帰り路、俺たちはこのポイント名を『ロックンロール』と命名した)
ブライアンは岬北側サンドバーのセクションで、得意のカットバックを繰り返している。
俺たちの横を滑降するペリカンの群れ。
ここにいる誰もが幸せな気持ちに包まれた。
波乗りロックンロールを終えたドノバンが海から上がり、沖を振り返ると、アザラシが岩の横 – たった今波乗りしていた場所に顔を出していた。
「クールなアザラシだぜ。あいつ俺達と一緒に遊びたかったのかな?」
とうれしそうなドノバン。

波を求めてさらに北上することにした。
最後に『ロックス』を振り返ると、一匹のイルカがポイントを流れるように泳いでいた。

(了 1999年冬)

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