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naki's blog

【naki’sコラム】vol.38 AVISO BD3で滑ったソフトサンドリーフの恍惚

ブイが上がり、11.2ft@13sec./NEの朝。
その後は徐々にサイズを下げていった。
朝はイナリーズでサーフして、それからトムクンズで早川さんたちと合流し、BD3とBD5共に荷台に乗せていただきソフトサンドリーフに向かった。

途中でトラックが追いついてきて、それは長老フレちゃんだった。
「すごい偶然だ」と喜びながら合流する。
噂ではトリプルオーバーヘッドの波がソフトサンドでブレイクしているという。
「まずは見てみないとね」と信用していない俺とフレちゃん。

到着すると、ブンペイたちが先に来ていて、ものすごいセットを頭で喰らっている。
あまりの水の量、まとまりのないセットはあちこちでブレイクしていて、まるで行儀が悪い巨大な子どもみたいだった。
だが、美しくブレイクする波はパーフェクトの一言で、それはこの地形がいかにすばらしいのかを物語っていた。

先週日本を襲った寒波からのうねりがとうとう入ってきたのだ。
セットが入ると、ブンペイが溺れないかが心配で、彼の動向をよーく見る。
彼は無事にこの波に乗って上がってきた。
よかった。

ピークさまのご来訪。

たまに入るこの海塊がすばらしく、「これはピークで8フィートはあるだろう」とフレディが言うと、
早川さんは、「えっ、そんなに!でもここからあそこまで距離がありますものね。大きいんですね~。さすが冬のハワイだなぁ…」と、しみじみと発言されている。
ここはインサイドがドライリーフ(露出する岩)で、もしボードを流してしまうと、浅くて泳げない危険区域だからと、フレちゃんはレギュラーリーシュを俺に渡してくれた。
ボードを並べて、どちらでサーフするかを迷う。

どっちも良かったのだが、昨日AVISOのジョンと電話で長く話したので、そんな恩義もあってAVISO BD3とした。
ひさしぶりに乗るBD3。
こんな日にひさしぶりに乗らなくても良さそうだが、「流れ」みたいなものがあるのだ。
「それにしてもこんな波の日に、持って来たのが両方5′0″とは恐ろしい時代だな」とはフレちゃんのお言葉。

ワックスはノーズまで塗りましょう。
沖を見ると、ブンペイの友達がこのすばらしく、美しい斜面を断念しているのが見えた。
深い海底から一気にせり上がるうねり。

ゲッティングアウトしようとしたら、この人は波に乗るのをあきらめて上がってきてしまった。
無人となったソフトサンドリーフ。
ブレイク周辺は浅いから危ない場所でもある。
ここのリーフは別名『フィンガーズ』といって、手の平を伏せた状態の指のような形をしている。
セットがドカドカ入るので、あまり何も考えずにゲッティングアウトしてみた。

近づくと、ゴジラ波というより海の山。
波のかたまりがすごい速度で押し寄せてきていた。

セクションは広く遠くまで拡がって、波斜面が崖に見えた。

ピークの奥からバックドアでテイクオフ。
スリリングな瞬間だ。
インサイドセクションでレイルをつかんで高速カットバックし、さらなるインサイドで、D先輩から教わった「突っ立っているだけでいいんだよ・ターン」の反応が表れた。

ただ進行方向が岩だらけで、恐ろしいのを通り越して、かなりの恍惚状態となった。

 

さらには、すばらしいセット波が沖から入り、写真だと右端付近がその頂点で、ピークまでは間に合わなかったけど、近くで見るその大きさといったらまるで「かいじゅう」。
これはセット波3本目で、あまりにも美しい波に乗りたくて、無理矢理にいった一本。
写真を見ていると気づくのだが、「距離が遠い」ということ。
364mmレンズでこんなに小さい。(200×1.4=280, 280×1.3=364)

早川さんと山田さんも意を決したようで、ゲッティングアウトしてきた。

「決死のパドリング」という形相で、泡山を何度もくぐりぬけ、しばらくしてから沖で会うことができた。
「体が30cmくらいに小さくなってしまった感覚です」という名台詞をひねり出した好青年山田さんは、ノースハワイの波に乗るために一年間トレーニングし、節制を重ねてやってきたそうなので、ここの沖に浮いているのは、とても意味があることなのだと思う。

イナリーズから続いている「波乗り講座」では、「今日は水の量が多く、うねりが分厚いので、テイクオフの際には初期の滑り出し速度ではなく、次の二段ロケットの切り放しみたいな、ものすごい押し出しがやってきてから立ち上がるようにするといいですよ」
とアドバイスすると、彼は真剣な顔をしてずっとそれをイメージしている。
やがて、山田さんはテイクオフしていった。

めでたしめでたし。
俺もめでたい気持ちになりたく、このおいしそうな塊にテイクオフして、インサイドでキックアウトすると、山田さんが目の前にいて、「もー最高です!」と大興奮していた。

「視界全てが斜面だったでしょ?」
「はい、すばらしい感覚です!」
と話しながらパドリングアウトしていると、セットが俺たちの前に切り立って青い壁をぎらりと一瞬だけ見せて、次の瞬間には崩壊した。
俺はボードを捨てて深く潜り、青い水の底にあった黒いリーフの切れ間を掴み、体をその間に潜りこませて初期の衝撃を避けた。
波の裏側に出たところでーーリーシュが切れないようにーー泡に吸い込まれていった。
ずいぶんの時間を巻かれ、波のパワーを知りながら海面に上がると、今度は大量の泡と、表面だけに発生した強い流れでボードが横に、斜めに持っていかれた。
泡をかき分けてから呼吸して、暴れるボードのテイルに重心をかけて、釣りの浮きみたいに縦になったまま海面が落ち着くのを待つ。
しかし、同サイズのがもう一本やってきているので、その波をギリギリまで引きつけてから飛び込み、泡だらけの海中をゆっくりと進み、さっきと似たような岩を見つけて、今度はつかまずに触るだけで、波の裏側まで出て、同じように巻かれた。
海面に上がるとさっきよりも沸き上がるような泡が覆っていて、息ができないので、泡が少ない方まで動いていこうとするのだが、水の中に引き込もうとする渦みたいなのに捕まり、焦って泡の中で息をしたら、少し海水を吸ってしまった。
ここで咳き込むわけにはいかないので、それをぐーっとこらえて、パドリング姿勢を取り、沖に向かって無心で進む。

つぎの波をやり過ごした時に「そういえば山田さんが横にいたんだ」と思いだし、周りを見るとどこにも彼は見えなかった。
少し焦って、もっと広範囲を探すと、彼はもう150mは離れた岸の手前で浮いていた。

「あんなところまで行ってしまったのか」と驚き、そのことを沖で波待ちされていた早川さんに報告すると、
「山田くんは大丈夫でしょうか?」
と聞かれたので、もう一度その方向を見ると、彼は遙か彼方の浜に立っていた。
「大丈夫みたいです。岸に戻られたようです」とセッションの続きに戻った。

今日はさらにサイズアップしてくる予報だった。
鬼神のように大波に乗るローカルまでが岸で見ているだけで入ってこないので、もしかしたらオバケが来たら大変なことになるのかも、とするりと上がった。
岸に来てようやく安心したのか、ついにやけてしまった。

上がってきたらフレちゃんに「よくやった!すばらしい、お前は俺の誇りだ!」と持ち上げられ、さらにはブンペイたちにも褒め称えられ、なんだかうれし恥ずかし、というのはこういう気分のことを言うのだな、と知った。

大変な目に遭った山田さんだが、「一本乗ることができたので、もー大満足です」とこの笑顔。

俺は彼に「挑戦者山田さん」というニックネームを授けることとした。
本当に好青年で、あまりにもすばらしい人なので、「これからもずっと波乗りのアドバイスをしますから」と永久コーチに名乗りをあげた。

一年間この波をイメージして、トレーニングして、狙った波に乗り、最後には喰らってしまったが、散らずに無事に戻ってきたのがすごいです。
とお伝えしながら、早川さんとビールを開けて乾杯。
彼らは明日の明け方には日本に帰ってしまうので、これが最後の波乗りとなるようだ。
これからも楽しく、そして懸命に精進してくださいね。
応援し、さらには後方支援もいたします。
また来年お越し下さい!

それにしても早川さんは焼けましたね。
夏休みの少年のように真っ黒です。

きっと明日もこんな波に乗るのだろうか。
今日にありがとう。
波乗りってすばらしいなあ、と再確認する。

そういえばひさしぶりにAVISOに乗ったのだが、まるで沖を泳ぐ黒マグロに乗っているようなライブ感覚だった。
中空製だからなのか、またはカーボンファイバーの高反発からなのかはわからないが、ものすごく安定していて、さらには荘厳なる精力が満ちあふれてくるような気持ちとなる。
忘れていた精悍なスリル。
そんな愉しみを再び味わい、また俺は一日だけ年を取ったようだ。
MAHALO NUI

(2010.01.22)

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