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【naki’sコラム】vol.42 北西うねり7ft14secこんないい波で死ねるか!水世界ワンワールド

北西うねりが届いている。
数日前に日本の北を過ぎた大きな低気圧からのうねりだ。
日本の北からここまで4800km、3000マイルかけて届く壮大な旅をうねりはしてきたのだ。
北西に設置されているブイ情報を見ると、「7ft14sec」とあった。
これは7フィートの高さのうねりが平均14秒の間隔で届いているということ。
先週のソフトサンドリーフでは「11ft10sec」だったから、それよりもうねりは低く、しかし間隔が4秒長いということになる。
間隔はうねりの幅でもあるので、それは波の威力と同等と考えていいだろう。
カイル(鞠黒=マリグロ)が、「メジャーリーグベイがいいぞ」というので、行ってみると、サイズダウンしていた。
すると、ここの海軍エリアでのチョイスがプアケニケニのショアブレイクか、クローズアウトのシュネリガンズとなっていた。
そこで、予定を変更してソフトサンドリーフに行くことにした。

オフロードを抜けて、海に出ると、大きなうねりがパンピングしていた。
ソフトサンドリーフはうねりが正面過ぎるようで、クローズアウトセットが何本も入ってきて、誰もパドルアウトできない状態だった。
ここをあきらめて、奥のソフトサンドエリアに向かう。

代表的なブレイク「釣り師たち」に到着し、波をチェックすると、見ろ!あのピークを!あそこもだ!とソフトサンドが本領を発揮していた。

どう見てもダブルオーバーはあるブレイクで、その波の創り出す美しさにうっとりとしながらシャッターを切る。

ライトがものすごく、無人のバックドア、またはオフザウオール、もしかすると1987年の新島風と、多種多様の良い波系のすごいことになっていた。

ヒャッホー!早く入ろうぜ!と着替えていると、カイルはボディボードを持つではないか。
ご存じカイルがボディボードを持つ時は、危険波の時だけだ。
なんとなくこれはやばいなと思い、「ヘイカイル、これでやるのか?ずるしないでサーフボードでやろうぜ」と言うと、「イエーブラ!サーフボードじゃ折れちゃうでしょ?」
「えー××」ということで、チャンネルを使って沖に出て行くと、嫌な予感そのままで、近くで見る波は思っていたより遙かに大きかった。
「ゲー!」と吐きそうになっていると、横でカイルはセットが来たときにボードを捨てて潜る練習をしている。
顔は笑っているが、目が真剣だ。
仕方がないので、俺も何度か潜り、呼吸を整える。
セットが来た!
でかい!
乗るには間に合わなさそうなので、懸命に沖に向かって漕ぐ俺たち。
崩れる!
おー!!
あとわずかのところでリップを喰らわなかった俺たちは「ヒュー、グッドサイズだ!」と波を褒め称える。
次のセットにカイルが乗り、沖を見て、もう一度カイルを見ると、真下の泡から出てきた。
パーリングしたのだろう。
ボディボードをパーリングさせるほどの波はすごい、とまた気を入れる。
次の波は俺がレフト側に、カイルがライト側。
よしいい位置だ!?行くぞ!と気合いを入れて漕ぐのだが、水の量が多すぎて、波の中に入れない。
右のカイルを見ると、彼も同様に波から押し出されていた。
また次のセットを待つ。
天気が良く、青い空に青い海、見渡す限り無人だ。
弱いオフショアで、波の咆哮以外は何も聞こえない。
あまりにもカチリとしすぎて、ここはまるで黄泉の国にいるかのような錯覚に陥った。
死の世界、生の世界をつなぐ世界があるのならきっとそこはこんなところなのか、と。
次の波が来た。
左右の位置を合わせて、漕ぎ始める。
波の壁に押されてボードが進みはじめ、しかし急激に浅瀬になるためか、壁がたわむようにぶれる。
ボードにしがみつき、テイクオフの体勢を取り、まっすぐ降りるのがやっとだ。
直滑降で滑り降りると、後方からリップが迫り、俺はボードもろとも泡に吹き飛ばされる。
すごい衝撃を受け、そこから解放されると、大量の気泡と共に海面をめざして泳ぎ上がる。
海面に出ると空気を大きく吸い込み、泡の弾ける音に次に崩れてくる波を見る。
俺は海を、そして水を怖れた。
波の下にもう一度潜り、なんとか海面に浮き上がる。
また波が来る。
ここは流れが沖に向かっているので、何本波を喰らっても岸には戻れず、インパクトゾーンに留まる仕組みになっているらしい。
結果4本喰らったが、後2本来ていたら、もう上がれなかったかも、と少しぞっとする。
ど根性でまた沖に出て、何本か形のいい波に乗った。
よしよし慣れてきたぞ。
すると、突然耳鳴りがした。
「危険を知らせているのだろうな」と、とりあえず沖に向かって漕ぎ始めると、すぐに水平線にすごいうねり線が見えた。
「ああ、なんだよ~」とさっき岸に上がらなかった自分を悔やむ。
やがて少し沖でズッドーンとブレイクし、俺を飲み込もうとやってきた。
よーし、とボードの上に立ち上がり、飛び込みの要領で海に思いきり飛び込み、波の下で目を開けた。
焦点が合わない青い海、その上をグレーの泡が舞っている。
あれに当たらなければ俺はこの上、空気のある世界に戻れるのだ、と言い聞かせてゆっくりと底に底に泳ぐ。
しかし、ボードが波に当たったようで、リーシュをした右足が引っ張られた。
あっという間に泡が目の前に迫り、グオー、ドーと波に吸い込まれた。
ひえーもうだめです。
とあきらめ、気づくと海面近くにいた。
両手を2回かくと海面に出られた。
この大波は一本だけしか来なかったという幸運。
「良かったよかった」と安堵しながら岸に向かってパドルして、ショアブレイクにいたカイルに「やべー、あのセットはまるでマーベリックスだったよ、ゴーストツリーかと思った」と冗談を言いながら砂浜に上がり、この安心な世界に戻ったのでした。
いい波に乗るには相当の気合いが必要なのだな、と知った2008年晩秋。

少し風が入ってきて、セットも来なくなったが、もう波乗りはあきらめてカイルの写真を一枚。

そして、水滴を撮るとあんなに怖かった水がここに一粒、もう一粒とあった。
RAW現像してモニターに映った水滴は太陽を受けて、ひとつの世界を形成していました。
one worldがここにもありました。

(2008.11.08)

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