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naki's blog

【naki’sコラム】vol.57 [新次元突入体現記]明星が口に飛び込んできた日

こちらノースハワイは昨夜、
『明日の午後6時まで、南海岸に高波注意報』
が発令された。
そして、日本の寒波からの北西うねりも同時に届くということ。
カイル鞠黒は、
「両方のうねりを受けるシュネレガンズなら8フィート(トリプルオーバー)になるぞ、ヒュー!」
と大喜びしていたほどで、そんなTHE DAYとなることを期待してか、さすがに昨夜はなかなか寝付けなかった。
未明に起きて北西ブイをチェックすると、計測値は昨夜から何も変わっておらず、南のキロ・ナルブイだけが大きくなっていた。
4.1 feet @ 17.4 sec.
遠くニュージーランド沖で発達したうねりなので、うねりの厚みがすごく、波間隔が「17秒越え」というモンスター計測値をたたき出していた。

こんな日はホワイトハウスに直行するのだが、
「北西うねりがないので、島中のサーファーが結集するだろう」
と、あまりうれしくない予測もあった。
波チェックに先発していたレジーからの情報を待った。
夜明け頃、
「ハイウエイの駐車場は満車、すごい数のサーファーが来ている。そして潮が干きすぎであまりよくない」
と聞き、予定変更してリリコイリーフにフレちゃんと向かった。
そういえばこれから(8:37AM)激干きの「マイナス0.37フィート」という大潮干潮がやってくる。
少しすると、そのシュネレガンズに向かったカイルから電話があり、
「ホワイトハウスはどうだ?」
と聞かれたので、レジーレポートを伝達した。
「マイナス0.37も干いてしまうと、ホワイトハウスのピークは露出しちゃいますね」
とフレちゃんと話しながら西に向かっていると、
またカイルから電話があって、
「ホワイトハウスに来たら、駐車場はガラガラで、(サーファーは)みんな帰っちゃったみたいだぞ」
と聞き、慌てて南側に向けてUターンをした。
到着すると、それはものすごい波がブレイクしていた。
「もしかしたら干潮で波が押さえられていて、セットが見えずに、さらには激浅ということで、朝一来たサーファーたちは、ノースショアに帰ってしまったのかも」
という仮説を立てながら慌てて着替える。
めずらしく、辛そうな顔をした○カボンパパのジョニーがこちらにやって来た。
「what’s up?」
と聞くと、
「昨日ワイプアウトをしたら背中から落ちて、肋骨を三本骨折してしまったのだ」
と悲しそうに言う。
そのうちの一本は息を吸うときにパキパキ音を出すそうで、
「4ヶ月はノーサーフと医者に言われたのだ」
と見学に来たそうだ。
ひえー、クワバラクワバラ、とジョニーを拝む。
沖を見ると、カイルはセンターズでやっているようだった。
海に祈り、入水すると、岩だと思ったら大きなウミガメがチャンネルを泳いでいた。
このチャンネルを使って、いつも沖に出ていくのだが、今日はフィンをこするほど浅かったので、そこも歩きながらゲッティグアウトする。
本当に浅い日だ。
沖に出ると、見たことのないボディボーダーくんが浮いているだけで、無愛想なのかシャイなのか、俺からは背中しか見えなかった。
フレちゃんがインサイド、俺がミドルピークに陣取る。
セットが入る。
南南西うねりのすばらしい壁が浅いリーフの上に乗り、海面をエグレさせながらブレイクしてきた。
息を呑む俺。
フレちゃんも真剣な面持ちだ。
何本かセットが通過し、決意して乗った波がそれは美しく、フレちゃんと俺は「誰もいないし、最高だな」と大満足していた。
やがて、誰かがパドルアウトしてきた。
それを強面のハワイアンだと認識し、次に「カイポだ!」とわかり、
「ひさしぶり~」
と再会を喜び合った。
カイポ・ジャキアスは沖の右奥、つまりむき出しとなったリーフの上を通る位置で波待ちを始めるではないか!
さすが元WCT選手は違う。
この島で生まれ育ち、トッププロになったわけだからそのレベルといったら、特A級だろう。
あの位置から、あの壁を滑りぬけようというのだから、全ての次元が違いすぎることに、頭を金槌で殴られたようだった。
彼が通るであろう、そのラインを見ているだけでドキドキしてきた。
せっかくなので、カイポがどのようにテイクオフするのか勉強させてもらおうと近づいてみた。
すると、リーフからの吹き出しのボイルがすごく、揺れる海面で波を待った。
セットが入る。
いきなり本日最大のものすごいのがやってきた。
さらに沖にパドルするカイポ。
彼は波が近づいてくるのに合わせて、ショルダー側に1、2、3回と漕ぎながら岸側に向きを変えていく。
段の下から漕ぎ続け、ノーズが下を向いたときに立ち上がり、そのままテイルを踏んでボードを下に落として、エグレに吸い込まれていき、少し経って爆発と共に吐き出されてきた。
すごい!
「こんな安定したテイクオフがあるのだろうか?」
というほどの美しき芸術品を間近で見てしまった。
信じられないのは、バレルの前というか先は水深0mだということ。
普通の人は100%ここで波に乗ろうとは思わない。
巻かれたら病院直行は間違いないだろう。

水平線を見ると、波はさらにもう2本来ていた。
次の波はボイルと、流れがすごすぎてあきらめ、最後の波に乗ろうと、同じように強く速くパドルして岸側にボードを向けた。
その瞬間になんとなく嫌な予感がしたが、そのままカイポのように強くパドルを続けた。
しかし、大きく掘れる段に飛ばされるように、リップの前に放り出された。
実際は「飛ばされる」というより、ものすごい轟音と海の壁と底に吸い込まれたと表現した方が正確だったのだろうか。

落下しながら、
「リーフに当たる」
それだけが頭の中にあり、硬く身構え、さらに体を丸め、その衝撃を予測した。
ダーン!!
着水と同時にものすごい圧力の泡の押しつけがあり、俺はリーフをかすめながら転がっていった。
しかし、奇跡的にどこにも当たらずに、
「やった!!」
と海面に上がると、横のチャンネルにいたフレちゃんと目が合った。
ものすごく心配そうな彼の顔に
「I’m Okay!!」
と伝えた。
ものすごい量のアドレナリンが分泌されているのか、これ以上ないほどハッピーな気持ちだ。パドルも速いし、人生が明るい。
ラインナップに戻ると、カイポがこちらを見て笑っていたので、
「ノーチャンスだった」
と伝えると、
「チャンスはあったぞ、あそこまで行けたら降りられる」
と言う。
うーん、当事者としては、テイクオフの立ち上がる瞬間と、波に叩きつけられるまでの時間がたった0.1秒だった気がして、
「どこにチャンスがあったのか?」
そのことばかり考えていた。
いつもはもうすこしスローモーションとなったり、波斜面が見えたりするのだけど…。
ややあって、センターズにいたカイル鞠黒が俺たちを見つけてパドルダウンしてきた。
彼も俺のワイプアウトを向こうから見たようで、
「クレージー、カミカゼサムライハラキリ、マジデ~!!」
とこちらのTV番組の名称を駆使して皮肉的に表現されてしまった。
悲し悔しい。(笑)
またセットが入り、その最大なる一本目をカイポがまた美しく行き、次の波をカイルに譲ろうとしたら、
「ナキGOだ、GOGO!」
と言われ、また先ほどと同様に強く速く、そして細心の注意を払い、ピークの中、段の下に存在する真のピークからテイクオフを開始した。
今度は段の芯ではなく、下に入れたので、ノーズが下がり、レイルが波面に噛みつき、波を高速で滑走しはじめた!
「行けた!」
と思った瞬間にさらなる段が出現し、瞬時に振り落とされてしまった。
今度はよく見えていたので、振り落とされる瞬間に波の下部、要は波壁の裾野目がけて両手を伸ばしてノーズのようにし、波のウラに出られるように飛びこんだ。
それが功を奏したようで、そのまま巻かれずに海面に出られたのだが、ボードがインパクトの泡下に入ってしまっていて、なかなか吐き出されてこなかった。
(飛び出してくるボードに当たらないように)両手を顔の前に出して待っていると、やがてボードは平らに浮いてきた。
今のテイクオフというかワイプアウトで、俺は何かをつかんだ気がする。
前にイチローさんが語っていたことを思いだした。
「打撃が開眼したときは、なんでもないセカンドゴロを打ったときにその感覚があった」
俺もそんな気になった。
フレちゃんに、
「ヘイ!無理するなよ、見ているだけで怖すぎる」
と言われ、
「じつはわかったのです。次こそメイクするので安心してください」
と伝えて沖に戻る。
少しすると、カイポが戻ってきたので、
「俺のワイプアウト見たか?」
と聞くと、
「あと少しだな、90%」
と言われたので、
「何がいけなかったのか、どうすればよかったのか?」
と聞くと、
「ああいう極限なるテイクオフは、ボトムまでのポイントを決め、そこを目がけて、立ち上がった後は、全身を傾けて、フォームを固めたままにするんだ。そして、そこ(ボトムポイント)を過ぎてから体を動かすといい。今のは、最後で体が少し開いてしまったから、段が出現して、それに耐えられなかったんだ」
とおっしゃる。
なるほどー。
その言葉を噛みしめ、またよく噛んで、消化させながら次の波を待つ。
また同じような特大セットが入る。
カイポが「NAKI、GO!」
と言って一本目を譲ってくれた。
その水の壁と、自身の近い将来に一瞬怯んだが、猛追態勢を整え、同じように、全て同じように漕ぎ、立ち上がり、そしてボトムの先の波底だけを見つめ、両手はもちろん、体全体をそこに向けて傾けて固め続けた。
ものすごい段の下、波の腹で、さらなる細かい段というか溝をサーフボードがズド、ズドン、ズドンと重たく、そして速く通り過ぎていく。
そのまま長いラインのテイクオフに終わりを告げ、いつしか最高速で次のセクションに飛び込んでいく俺がいた。

じつは、こんな切り立った波の角度のテイクオフをメイクしたのは初めてで、なんだか信じられない気持ちが俺を満たした。
フレちゃんも
「ものすごい、遂にお前はやったのだ!」
と言ってくださり、
カイポには、
「お前、もう会得しているぞ。これでもう一生ダイジョブ!」
と言われて有頂天となった。
それからずっと、クリティカルで信じられない壁を滑り降り続けられ、今も夕方のセッションにクレイグと行ってきたのだが、あれから一度もワイプアウトしていない。
ドラゴンボールでいうと『カリン塔』に登ってきたような感覚だ。
新境地というか、26年間ほぼ毎日サーフし続けてきて、まだまだ新しいレベルがあって、
「そのドアを開けると、広々とした空間があった」
そんな仮想風景が見える。
空海は、
「明星が口に飛び込んできて、悟りを開いた」
と言い伝えられているが、正にそんな感覚だ。
「カイポが飛び込んできて、悟りを開いた」
というのが正しいのだが、まさにその通りで、コーチというのは、ものすごく大切なのだと知った44歳の4月。
カイポに感謝。
情報をくれたカイルにありがとう。
見守っていてくれたフレディにも。
ハワイの波、すばらしいボードとウエット、ワックスに太陽、ニュージーランド(今回のうねり産地)に、干潮と、リーフに、全てにありがとう!
そんな日となりました。

閑話。
現在日本製の日焼け止めをテスト中です。
目指せヴァートラ。
越えろヴァートラ。
そんなところで、何度も成分を変えています。

かなり具合が良くなってきたので、一日中海にいるライフガードとか、サーフレッスンをしているスパーキー、ジェイミーたちにも試してもらおう。

こころを見透かしたように虹が上がり、次にカイポ大先生が上がってきた。
最敬礼して、ブログ用にと写真を撮らせていただく。
彼が神に見えた日。

肋骨骨折のジョニーと波談義をしているところをパシャリ。
ジョニーはまだ帰っていなかったんですね。

そのジョニーが新しく購入したのは、新型ハマーH2トラック。

この車を見たフレちゃんが、
「ジョニーは何の仕事をしているんだ?」
と驚くほど、島では最高級のトラックです。
291!
じゃなくてH2!

これがあればソフトサンドもイナリーズもばっちりだろうな。
いいなあ。
へへー。

一度オフィスに戻り、マンゴー紅茶にジンジャーシロップを入れるのだが、どうやら最後のボトルがなくなってしまった。
悲しき気持ち。
日本に行ったときにもっと持って帰ってこよう。

振り返ると、どうやら人生を変えるほど、ものすごい日となりました!
さきほども書きましたが、夕方もまたサーフして、その教えを確かめてきた。
あいかわらず無傷で、すばらしい感覚が全身にみなぎっています。
大の大人をこんな気持ちにさせてくれるサーフィングに深く感謝をし、そして「全てにありがとう~!」という日となりました。
波に海にありがとう。
そして地球にも!
明日はもっとすばらしい日になりますように!
MAHALO!

 

(了、2010.4.27)

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