コラムvol.01 TRUE STORY

TRUE STORY

文◎富山英輔(ETcreation)

そもそも、人生なんてそうそう平坦なものであるはずがない。

編集長を務めていた雑誌『海楽』の休刊が決まった。やりがいのある雑誌だったし、可能性を感じていたのでとても残念であり、応援していただいていた方々、購読していただいた読者の方々に対して本当に申し訳なく思う。

0号から始まってわずか5回で終わってしまった『海楽』だが、その最後の号で船木さんと一緒に仕事をした。ハワイ諸島のとある島にある彼の自宅に泊まり、朝起きると一緒に波乗りに出かけ、帰ってきたら自宅の地下につくられたオフィスで一緒に仕事をして、夜は彼の家族と一緒に食事と、船木三秀という稀有な日本人サーファーとゆっくり向き合ってコミュニケートすることができた。といっても、彼と初めて会ったのはたしか21歳の時だからもう20年も前で、サーフィン雑誌のウェットスーツ撮影現場だった。僕は編集部のアルバイト、彼はウェットスーツメーカーのチームライダーでモデル、撮影は泰介さん(横山) だったと思う。

サーフィンと同じく、人とは2回出会うものである。初めての出会いは、単なる初対面。そして2回目は、その出会いに何か特別な意味を見出した時だ。

人間、40歳にもなると人生が重たくなってくる。結婚し、子供を持ち、仕事においては責任が大きくなりという中で、いかに現実を乗り切るかは避けては通れない難関である。なかには現実を避けてドロップアウトの道を選ぶ人もいるが、いまだ真剣に社会と勝負してやろうと考えている人間にとっては、まさに正念場 である。

つまり僕たちは、まだ全部欲しいのだ。いい波に乗れる時間的、空間的自由と健康な身体、それにサーファー的メンタリティ。家族と仲良く暮らせる時間と心の余裕。そして、それら全てを現実のものとし、極力ストレスなく暮すためのお金。

その意味で、僕たちは同志である。それを一生続けるためには、わずかでも世の中を変えなければならない。しかし、そういうベクトルで世の中が変化することは、少なからず人々の幸せや世界の平和に寄与できるのではないか。そんな幼い夢を、いまだ捨てきれずにいる。

しかし、そんな僕たちの現実はといえば、切羽詰ってジタバタしているに過ぎない。多少は大人になったから弱みは見せずにいるが、常に切羽詰ってジタバタするばかりである。けれど、かつて一生サーフィンをして暮らしたいと願う若いサーファーたちが、サーフボードをつくって売り、サーフィン用ウェットスーツを開発し、波だけは素晴らしい二束三文の土地を購入していたのが後にパラダイスとして認められ幸運な財産を得たり、映画をつくり、雑誌をつくり、洋服をつくり……と、何とかサーファーとして一生を全うしたいと切羽詰ってジタバタした結果が、サーフカルチャーである。

しかし、それらは全てやりつくされ、だから'80年代にサーフィンを始めた僕たちは新しい生き方を探らねばならない。その手段が、僕の場合はサーファーとしての表現でさまざまなメディアを開拓することであり、船木三秀の場合はNAKI SURFであったということだろう。そもそも、インターネットでサーフボードを売るという行為は、従来のサーフィン業界においてはタブーとされてきた。しかし、彼が理想とする生活を実現し、しかも現役サーファーとして自由に波に乗り続けるためには、タブーをタブーとして放置しておくような悠長なことをしている場合ではなかったということだ。NAKI SURFのシステムに、いくつかの改良すべき問題点があることを僕は感じいる。しかし同時に、現代の一般サーファーが楽しく波に乗り、サーファーを人生の宝物にするための手助けにつながることもまた事実である。

だからこそだろう。彼は、道具を売るだけではく、サーフィンの世界を伝えることに情熱を注いでいるように見える。かつて、買い物がなくてもサーフショップに足を運んだ若者たちが、ウェットスーツの下に水着をはくべきかという疑問から、恋愛相談、人生相談まで、同志である先輩サーファーに答えを求めたように、サーファーは常に自分の生き方やスタイルを模索しているものだ。

だから、このサイトの「ご質問BBS」には、サーフボードの質問だけでなく、人生の悩みも投げかけてみたほうがいいのだと思う。僕たちサーファーは、搾取する側とされる側に分かれるのではなく、自立した同志として結束を固めるべきなのだ。

ハワイから戻ると、船木さんがメールをくれた。そして、メールの最後には「体だけは気をつけて、お互いに90才になってイナリーズで一緒の波に乗りましょう。約束ですよ」と書かれていた。そう、その時もお互い家族仲良く幸せに過ごしていて、僕はハワイまでの航空運賃を払える余裕があり、船木さんは僕たち夫妻を泊める部屋を持っていて、一緒に笑いながら波乗りをし、夕暮れにはおいしいお酒が飲めたらいいなと思う。だからこそ、僕たちは常識を突破して、ジタバタし続けるのだ。■

 

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