ミーティングのついでに今ホノルルに来ている。Honoluluというのは、ハワイ語で「人が集まる場所」ということらしい。その名の通り街には、人、人、人。ちょうどお正月が近いからだろうか、日本人観光客の姿が特に多い。しかし、ホノルル在住の弊社のスタッフの一人に言わせると、例年に比べるとこれでも少ない方というのだから驚いた。「不思議の国アリス」じゃないが、ネイバーアイランドとは似ても似つかないおとぎの世界にきてしまったような気持ちにとらわれて人込みの中でしばし戸惑う。
さて、ここでちょうどAVISO社製のコーデル・ミラーがデザインしたドラッグスターをテストライドするチャンスに恵まれた。ミーティングの合間を縫ってかる〜くタウンの波でサーフ。せっかくのテストなんだからいい波でと海に向かったのだが、残念なことに波は小さい。しかも風がはいっていて面も悪い。う〜んって悩んだが、この頃AVISOのボードに興味を持ってしまっているので、どうしてもこのコーデルを試したい。よって、腰、たまに胸ぐらいの非力な波がはいってくるワイキキに近い某ポイントで入水。
今回乗ったドラッグスターだが、色はブルー。AVISO社のカラーはなんとも派手でちょっとためらわれる感がないでもないが、若干メタリックがはいっていて鮮やか。写真を撮っていて思ったが、まるでオブジェアートのよう。黒のカーボンでできたAVISO号は戦闘機や戦車を連想させるが、今回のメタリカ号は芸術品か?光を当ててみるときれいに光り、暗いとこでも発光するんじゃないか?というような気にさせられた。
こんな派手なボードにワックスを塗ってしまうのはもったいないが、乗っているとこを想像し、いつものようにテイルエンドからノーズの方まで塗りこめた。余談だが、3xワールドチャンピオンのアンディー・アイアンズは、ローワーズでサーフィンする際、足の甲にワックスを塗る。パドルアウトする際に足の裏を甲に塗られたワックスにこすりつけ、付着した玉石のヌメリを取り除くためなんだそう。みなさんもお試しください。これでワールドチャンピオンになれます。
この6フィートのサイズのモデルは少々薄目のテーパーレイルになっていて、手にした瞬間いい予感がした。これはイケそうである。はやる気持ちを抑え、沖に向かう際にじっくりパドリング。浮力はさほど通常のボードと変わらない。後日、AVISO社のマーケティングの人に聞いたことだが、浮力は通常のボードに似せてあるのだそうだ。だから、浮き過ぎるようなことがない。これはボードを購入する際に、よけいなことを考えないで済むのでありがたい。従来のポリエスターのボードと同じ感覚で選べばよいだろう。薄いボードなら浮力は少なめだろうし、厚めのボードなら体重がある人向きである。
どんなボードでもはじめて乗る波というのは重要である。そこでだいぶ自分のボードに対するイメージができあがってしまう。幸いなことに1本目の波から綺麗にリッピングが決まってくれた。そしてよく思い返してみると、ボトムターンも自然にパーフェクトに遂行されていたことに気付いた。たまたまこの波はパワーがあり、すとーんとボトムに降りたとこで右側のレイルに圧力をかける。すると傾斜角40度程度にボードを寝かせながらボトムで綺麗な弧を描けた。そこからトップへの上がりは快感でさえあり、素直にボードは垂直のラインを選んだ。そこからトップでの返しまではAVISOでなくては味わえない中空ボードならではの感触である。なんというか、ボードの「しなり」を足で感じられる風とでも言えばよいのだろうか?非常に爽快な今まで味わったことないニューフィーリングであった。
この日は風がはいっていて、サイドから吹く弱めのオンショアであった。波のフェイスは決していいとはいえず、そういうジャンクなコンディションでどんな反応を示すかが今回のテストの課題でもあったが、これといった欠点も見つけられず、解った事は、ただ、ただ、ひたすら走るボードであるということだった。AVISOでアップスンダウンをぜひお試しください。(今回は小波だったので、たくさんこれをやる機会に恵まれた…笑)足から伝わる圧力が反動という形になって返ってくるのである。これが噂のAVISOの反動かと、スピード狂になったかのようにタウンの小波を縦横無尽にトラックを刻んできた。
毎回言うようだが、固いにボードに乗っているとあばら骨が痛くなるときがある。みなさんのなかに同じような症状をもってる方はいるだろうか?ところがこのAVISOというボードは従来のサーフボードの7倍の強度を誇っているにもかかわらず、デッキ部分が柔らかいのだ。恐らくその柔らかさが衝撃を吸収分散させ強度につながっているのだろうが、AVISOだと長時間サーフしても全くあばらにこない。これはありがたい副作用とでもいおうか、ウェットなしの裸でも気にせずサーフできる。
テストが終わり海から上がると、一仕事してきたサーフボードが頼もしく思えた。ワックスを塗りたくったからだろうか、はじめに感じた芸術品的な印象は消え、仕事を終えたあとの波乗人のエクイップメント(道具)であった。一瞬、このボードでイナリーズやWHの本気波に乗ったらどんなに凄いかが頭をよぎったが、これは当社スタッフのボードなのでお持ち帰りは断念した。メタリックブルーのボードのうえに広がる水滴が夕日を浴びてシャンパンのように光り輝き、テストライドを終えたボードが乾杯したがっている。今夜はドンペリ、それともクリスタルでも飲もうか。ホノルルの喧騒は、淡いシャンパンの夢のように夜が深まるとともに静けさを取り戻す。(2007.01.06)
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