それはDVSのツインフィン、ラスタビッチモデル。
5'10"x 19-3/4"x 2-1/4" TWIN FIN
それをオーダーしていて、今回のカリフォルニア滞在中に自分の番となり、ピックアップしてきた。
結果的に3本購入し、かなりの散財をしてしまったので胃がキリリと痛む。
家に着き、ガレージで逆真会本部道場の門下生の抱井暖くんと梱包を解く、箱の中の過剰梱包の中から出てきたのがこのボードだった。
同梱してきたピストル4+(6'6"x18"-2-3/16")と2ショット。
もう一本バットフィッシュが入っていたが、この時点では梱包は解いていなかったようだ。
生まれてはじめて見るAVISOボードに暖くんは目を輝かせている。
一見レトロ風だがよく見るとデッキコンケイブ、ボトム形状、全てがモダンだ。
ゆるやかにふくらんだビッグスワロウテイル、そのなめらかなカーブを暖くんは、いとおしむように触っている。
ふとひらめいたのが、千葉公平さんは曲線の魔術師なので、フォーカラットでこんなレトロのふりをした高精度ボードを削ってもらおうということ。
公平さんなら、ものすごい豊かなボードを創造してくれるであろう。
なので連絡してみますね。
ブラックプロフィニッシュなので、カーボンファイバーが透けている。
触ってみると、カーボンの密度が細かく、それを凝視していたら魔界に墜ちていくトンネルを人類が製作すると内側はこうなっているのかも、という幻想がちらついた。
ちなみにこのカーボンファイバーは飛行機の機体、翼で使われるものと同様の最高品質のカーボンファイバーなのだそうです。
「ボーイングAVISO」という言葉が立ち昇ってきた。
カーボンファイバーから目線を離し、アウトラインを眺めていると、創造は無限にひろがりはじめた。
これがAVISO社のコンセプトボードの特徴で、ファイヤーフライが発売された時と同じく、「欲しい欲しい、これであの波に乗りたい。あんなこともこんなこともしてみたい」と焦ってしまう。
で、「このボードはもう俺のものなのだ」と実感すると、うれしくなり、ガレージ内を走り出したくなる衝動にかられた。
細かな仕様、デザインをチェックしていくと、このDVSというシェイパーはコールと一緒で革新的な創造をしているのだなあ、とわかった。
オーストラリア人には珍しいタイプなのではあるまいか。
そしてフィンケースを見ると、またユニークなフィンがバンドルされていて、まるで戦闘機の尾翼のよう。
スリットもテイル側にざくりと切れ込み、「いなせで粋だねえ」と江戸弁になるのを暖くんの手前こらえた。(言っても良かったかも)
フィンを取り付けてからボードをもう一度両手で持ってみると、胸がずきりと高鳴る。
究極の最新の究極素材が、こんなユニークなレトロ系のアウトラインを表現している。
ある意味ミスマッチで、そして渋い。
「ラスタはこれでバックドアを攻めたんだろうね」と俺が言うと、
「ラスタなら軽く乗るでしょうね。すごいなあ」と暖くんが返す。
早く朝にならないかなあ。
そして翌日、夜明け1時間前の便で、暖くんは現実にーー日本に戻って行った。

↑いい波にたくさん乗ってお腹いっぱいの暖くん。
送迎後、このボードをサビタに積み、現実味が沸かぬようなボードで乗る波を求めて、妻智英子と西行きのハイウエイに乗った。
あいにく北うねりがほぼフラットなので、トレードウインドの風波を受ける闘牛ポイントへ。
途中虹がすごく、どこまでいっても虹だらけだった。
ディック・ブルーワー先生がはじめてオープンしたサーフショップがある街ハナペペ。
今はそのショップも人の手に渡り、リペア店と化していて、街全体が「廃れた感」がある。
このすたれた街が好きなので、盛栄の六本木ヒルズも表参道ヒルズもいつかは廃れて欲しいと思っているのは俺だけではあるまい。
それを見届けるまで生きていたい。
ウエットの中に入れて暖めておいたワックスを闘牛ポイントの浜で塗る。
やはりこの新しいボードにワックスを塗る瞬間は期待と興奮で身がよじれるようだ。
俺はワックスがビーズ状になるまでテイルからノーズまでびっしりと塗る。
これは昔トム・カレンが言っていたことを実践しているだけなのだ。
俺世代にとってトム・カレンは伝説でもなんでもなく、部原や新島で優雅で感動的なサーフィングを見せてくださった大先生なのです。
余談ですが、AVISOの質問に多いのが、
「ワックスが溶けませんか?」
俺も最初はそう思いました。
この強烈な日差しのハワイでも溶けたことがありません。
(デッキ面に陽を当てていれば溶けますが)
普通に波乗りする分には全く問題はありません、と断言します。
ちなみに俺はボードケースですら使用していませんから。
なおかつカーボンは非常に強いのですが、弾力に富んでいるので、暖くんと俺が頭付きをしてもボヨン、ドヨンと全く痛くありませんでした。これも特筆事項ですね。
話は闘牛に戻り、
冬の、透き通った海の上をパドリングアウト。
パドルが速い。
ノーズからテイルまでその浮力を最大限に生かした推進力。
これは体重62kgの俺にとってはもはや魔法だ。
リーフが露出するほど干いたリーフの上をよれた膝波がやってくる。
もちろん楽々テイクオフ。
波が小さいので必然的に前足加重となるが、それでもボードは軽く切れる(レイルの切り返しのこと)。
2回目のターンで、波が少し盛り上がったので、テイル左側を踏み込みボトムターンをすると、グイーンと切れ込んでトップに駈けた。
トップで今度は右テイルを押し込むようにしてボトム側に落とすとジュワッってしぶきの音を出した。
気持ちいい。
先ほどの虹はまだしっかりと架かっている。
「持久力がすごい虹だ」
と褒め称える。
このボードは「透明な切れ」があり、乗っていて自分がどんどんスタイリッシュになるのがわかる。
突然思いついたのがディーゼル、リプレイに代表されるイタリア製カジュアル服で、これらを着て鏡に映した自分が急にスタイリッシュに見えたことを思い出した。
そのあれに似ているな、と波ターンをかけながら感じた。
「イタリアンなサーフボード」
そんなキャッチコピーが浮かび、今回はひさしぶりに高い買い物をし、ボードを買うには精神力が必要だと、機内で考えていた。
だが、新しいサーフボードを欲しくなくなってしまったら俺の人生も終わりだなあ、と切り返した。
がんばって働こうっと!
原始時代に生きていないのだから、欲しい物があるのが人生で、これがなくなってしまったら生きている価値がないや、と自分をゆったりと着地させた。
表参道ヒルズも悪くないか。
帰り路、ハナペペからワイメア渓谷の山を振り返ると、先ほどの大きな虹のかけらがまだ山の稜線付近に残っていた。
おしまい。
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