待ちに待ったAVISO-RNF/プロフィニッシュ・ホワイトが届いた。
1994年末にRNF(ラウンド・ノーズ・フィッシュ)をメイヘムに作ってもらって(当時はロストサーフボードは存在していなかった。あったとしてもメイヘムサーフボードに洋服のロストロゴを入れていただけ)、以来合計4本オーダーしたこの丸いノーズの愛嬌たっぷりのサーフボードに中毒を起こし、大波から小波までずっと乗っていた。
ある日、メンタワイに行き、あまりのRNF中毒で普通のボードを乗っていなかったせいでガンタイプのボードに全く乗れず、それから遠ざけていた。
AVISO購入も初めてで、大きな理由はみなさんと同じく予算で、なかなかこの値段は出せないでいたのだった。
実は何回かサンクレメンテで弊社柳瀬のAVISO-RNF5'6"を乗らせてもらったが、アルコール中毒者が更生中に酒を飲むように、「決して深入りしない」と心に決めて乗っていた。だから深入りはしていなかった。
私はボード価格を乗った年数で割る癖があり、最初のこのRNFを計算してみると、これはメイヘムに350ドル払ったので、1年あたり29ドルの計算となった。次に波乗りをした回数で割ってみると、初年度およそ200回、翌年100回、3年目以降を月に2回乗ったとして24x10年=240回。合計540回ですね。サーフィン一回で64セント(77円)という計算となった。そしてまだここにボードがあるからこれは十分元は取った類い希なボードであるといえる。
このAVISOは何年持ってくれるだろうか?
報告されている耐久性から考えると、軽く20年はいけそうだ。20年後は61才。いまだにバックドアに乗る千葉公平さんが54才。すると不可能ではないことに気が付くはずだ。ずっとこのボードに乗れる体型と技術を保っていたい。
さて、今回2006年新作クアッドと共に届いたRNFは、昔にくらべて少し細
身になった気がする。(写真参照)
これを例えると、「初恋の人に会ったら、白く、若く細くなっていて驚いた」というのが印象だろうか。
付属していたリーシュカップ兼用の水栓を締め、AVISO専用FUTUREフィンTー1を取り付け、アストロデッキを張って、ボードを手の平で叩くと中空ボードの特徴である「よく響く音」がボンボン!とする。 ワックスをノーズまでびっしりと塗り、長いレフト波の闘牛ポイントに持ち込み、初恋のボードとサーフィング。
ん!?
パドルが違う、同サイズのボードより少し速いかも。これは推測ですが、中空のため推進力が違うのですね。
それにデッキが柔らかいので、トランクスでパドルをしても胸骨が痛くならない。実はこの痛みにはいつも悩まされていて、ウエットを着たり、胸をあまり反らさないようにして解消していたが、AVISOはそんなことは気にせずパドルできるようになった。その高強度からボードが硬いものだと思っていたけど、うれしい感触。
闘牛はパーフェクトの胸程度が沖からゆっくりとブレイクしている。夏のブレイクなので、こんな季節は無人だ。新品のボード、無人のパーフェクトのコンビネーションにうれしくなる、沖でボンボンとマークのあたりを強く叩くと、海面が音で共鳴した。きっとイルカがびっくりしているに違いない。
一本目からRNF、AVISO節全開。早いテイクオフからするするとフェイスに出て、軽くトップターンしてボトムに落とし、リップの際めがけてグンと上がり、崩れたリップにドカン、またボトムに降りて、リップにバチリと、少しショルダーが切れてきたのでポケットターンでフックに軽く戻り、ポケットでテイルを踏みつけて加速する。加速したらショルダーの先まで出て、レイルの向きを急激に長く入れ、ラウンドハウスカット
バック。波の向きが変わり、バックサイドからフロントサイドの世界となって、迫り来るリップに引っかけるようにして、1986年のOPプロのトム・カレンのようにリップの端に引っかけてレイバック・リエントリーで波の中に戻り、もう一度二度とターンをしてキックアウト。
うーん!
シャンパンを一気に飲み干したような爽快さが体中に拡がり、しばし恍惚となる。余談だが、辛口の最高級のシャンパンを「ブリュット(brut)」と呼ぶが、このAVISO-RNFはRNF界のブリュットだろう。
何本か乗り、確かめるようにターンのタイトさ、正確さを味わうがそれはやはり本物だった。このカチリ、カチリとした乗り味は通常フォームでは味わえない。おまけにノーズライディングもばっちり決めてしまった。
翌日、これは今日のことですが、島の北西にあるソフトサンドに行くと、4〜5フィートの波が届いていた。
浅い海底に分厚いリップを叩きつける、本気系のハワイ冬波。むろんここはノースショアである。普通のボードだったら折れてしまうような波の中をAVISOで漕ぎ出る。波は高さでなく、その強さ、厚みであるといつも思っている。その範囲ではこの波は耐久性のテストと、このデザインでは適正外の大波となるだろう。
時速2キロくらいはある強い流れの中、苦難のゲッティングアウトで沖に出る。実は途中インパクトの真下に入ってしまったことが3度あり、ボードを投げて潜ったけど、折れずに無傷。どーだどーだ。
ラインナップに出ると、深い水深から浅い棚に乗り上げていて、砂は波の後ろ側まで吹き出し、波の中は段となって、リップは遠くまで飛んでいる。
よく観察して、これは普通には乗れないな、と決意し、セクションエッジからワイプアウト覚悟で「えいやっ!」と波の中に飛び込むように滑り降りる。巻き上げる水の壁の中を剛性の高いボードはグイーンと降りていく。
速すぎる速度に合わせて、ゆっくりと薄く長くレイルを入れボトムターンをすると、きれいに曲がってくれ、波のフック中腹にとどまるようにバレルイン。浅い入りだったので、すぐに脱出し、うれしくなってそのまま波の壁を全部使ってスイーピングカービング。水深が深い位置に到達したようで波の半分泡、下が斜面のスケーティングエリアでそれまで付いていたスピードを使って、自由自在にターンし、岸に向かう。流れが強いからロングライドしたら、一度浜に上がって走って戻ったほうが早いのだ。
走りながら思ったけど、こういう強く硬い斜面はベクターハチェットか、3Dフィンのようなホールド性の高いフィンがいいかもしれない。次回取り付けてテストしてみよう。
AVISOの耐久性で強度を信じ、カーボンファイバーの剛性でターンを味わい、軽量なのにしっかりとしたサーフボード。
膝小波、ちゃんとしたリーフ波にも、そしてこんな本気波に使用できる。これをAVISO-RNFの三段活用という。
そのまま何本か乗り、一度上がり、Q-RNFと同様に岸近くに浮かべてみて眺めているとおばけのQ太郎のQちゃんみたい。だけどクアッドの方に「Qちゃん」と名付けてしまったから、これには何という名前をつけようか少し悩んだ。
ゆったりと明治文人たちが書かれた本を開き、また海に入って少しすると美しい夕陽となりそう。慌てて上がり、カメラを持ってショアブレイクをうろうろしていると、暖のかたまりはニイハウ島の後ろに沈んだ。雲が流れ、青かった空に暖色の縁をつけている。それはまるで黄金色の粒子が集まり、歓喜のパーティをしているように見えた。写真右端にはその強靱な波が写っていて、これを見たらうれしさが体をよじ登ってきた。そんな波だった。(了、11/19/2006)
[おまけ]
AVISOの調子がすばらしかったから、AVISOの色々について資料を取り寄せて調べてみました。
ここからは科学者のレベルの読破力が求められます。エンジニアとか、科学が苦手の人はここまでとしましょう。俺も書いていて、頭が混乱しました。勉強は大変だけど、興味があるからなんとかやり遂げたAVISOの歴史と、その材質の詳細です。
ちなみに元原稿は英語だったから新しい単語だらけ。辞書を引いたり『ウィキペディア(Wikipedia)』というWEB百科事典を使って調べたのです。
まずはWHY?ということから「なぜAVISOを製造することを始めたのか?」
サーフボードはいまだに半世紀、つまり50年間も創始当時の材料で作られている。そこで科学と技術が進んだ今、新世紀理想のサーフボードを製作するために、結成されたのがAVISO創作チーム。
後で触れるけど、サーフボードには最適の材質、炭素繊維(カーボンファイバー)を使って、中空のサーフボードを作るために加工エンジニアリング技術を専攻する博士をAVISOは雇い入れました。軽量で、強く、しかも構造のデザインが理想的でなければタフな使用をされるサーフボードの製造は難しいからです。そこで航空はもとより、国防、果ては宇宙産業からの技術を取り入れました。
中空の秘密は、そのスプリングのようなクッション性とサーフボードにとって最適なしなり。ターンをするとデッキ側だけ凹みます。これはボトム形状が変化したら規則的な運動に適さないという断固たる理由があるのです。
現在AVISOは、契約したシェイパーから届けられたマスターシェイプを使用し、高度に調整した機械を用いて型を起こします。(2006年11月時点で、AVISO社は12メーカーと契約し、35モデルのサーフボード設計を行っています)
製造材料は3つ(リーシュプラグを除く)
1. 航空機で使用している高品質カーボンファイバー
2. 耐水性専用高密度フォーム
3. エポキシ樹脂
これらの材質は徹底的に管理され、AVISO直営工場で高温、高圧でそれぞれ型取られ、融合されます。
高品質カーボンファイバーを使用する理由は4つ
1. 軽量性
2. サーフボードに適した高伸縮、負荷係数
3. 抜きんでたフレックス性能、そして理想的膨張係数
4. 耐久性(強度、年月)
耐水性専用高密度フォームを使用する理由は3つ
1. 圧縮されているため強度に強い。通常のポリエチレンフォームの3倍の強度を誇る
2. 耐水性
3. エポキシ樹脂を使用できること
そのエポキシ樹脂の優れた点は
1. 強度と重量(=軽量)の比率。通常のポリエスターと比べると非常に高い
2. 全面的にポリエスターより優れているため
こんな意味のある材料を使っていたとは!
AVISO社はそれを使用した理由となるいくつかの結果を公開しているので、それを下記します。
【PMI→慣性の極性運動率について】Polar Moment of Inertia (PMI)
PMI(慣性の極性運動率)が高ければ高いほど慣性に対して反応してしまいます。サーフボードに求められるのは、より低いPMIで、AVISOはサーファーのコントロールにより速く、確かに応答するという低数値のPMIを持っています。
今度はボードがしなってから戻るまでの【COR→回復係数】Coefficient of Restoration (COR)の計測結果です。
どれくらい速くそのオリジナルの形を取り戻すか、というのがCORの数値です。サーフボードには高いCOR値が求められていて、AVISOは他の材質に比べて非常に高いCOR値をベンチテストでマークしています。CORは波の例えばスナップバックをし、ボードがフックに入った瞬間には正常のデザインに回復しているため、例外なく(規則的)にボードを加速推進させるために役立てるのです。
次は【MOI→慣性運動率】Moment of Inertia - (MOI)これが高いと「慣性を支配することとなる」つまりボードをコントロールしづらいという実験結果がある。 AVISOはMOIも低数値をマークし慣性に支配されづらいサーフボードを獲得したのです。
次は係数についてのお勉強。
「カーボンファイバー対(VS)通常クロスの材質対決」
負荷、伸張、そして圧縮の割合値
*psi=重量ポンド毎平方インチ(Pounds per Square Inch)
1. カーボンファイバーはは3400-3500万psi VS 通常クロスは1000万psi
2. 伸縮性能は、通常クロスを1とすると、カーボンファイバーは1/3の量。
3. カーボンファイバーの含有量が増える毎に耐久性が倍増していきます。(通常クロスは倍増しない)
ここからが私たちにとって重要です。AVISOサーフボードは表面は元より裏側まで、耐水性を持っています。もし、傷やプラグ内から内部に水が入っても問題ありません。もし入ってしまった場合はリーシュプラグを開き、そこから水を排水し、乾かせば、強さ、重量は一切変化しません。
ということは内部を水洗いしても大丈夫ということで、少し前に弊社柳瀬がブログでやっていたのはこのことだったのね、と納得。
その柳瀬と話し、NAKISURFでは修理不可能の初期不良AVISOボード に対して無償交換致します。これでかなり安心です。ですが、そこまで喜ばないでください。修理可能な傷は例外なので、エポキシ樹脂で修理していただくことになります。柳瀬はAVISOメイン倉庫に毎週出入りしていますが、今まで見た初期不良は接続部が大きく割れている、またはリーシュプラグ付近の裂傷ということです。 まだサーフボードを折ったのは報告されていないとも聞きました。
余談ですが、AVISOを所有する プロサーファーはクリス・ワード(彼の長女マリアとノアがサンクレメンテでクラスメイトでした)、パット・オコーネル、トム・キャロル、ドン・ジョンストン(メンタワイと、ウルワツで偶然会ったな)、タマヨ・ペリー、ダスティン・バーカ(カウアイですね)、クリスチャン・フレッチャー(ハーチャンの長男)、ボー・ヤング(このあいだ横浜のグリーンルーム・フェスティバルにいたな)、パンカー・パット(パンちゃん!)、CJ・ネルソン、デイブ・ラスタビッチ、シエィ・ロペス(カリチェ家の持ち主)他です。
(※)予備プラグとグリスは、2007年の2月よりプラグ周辺の加工精度が上がったため付属しなくなっています。
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