Nation Sonic Boom
5’6″x 19-3/8″ x 2-3/8″ SDS
これは私の友人であるツナくんのソニックブーム。
彼は70キロ程度の体重があり、
58キロの私にとってはちょっぴり渦浮力だが、
身長180cm、
80キロ以上もあるライアン・イングル用の
超過浮力ボードを好んで乗るようになってからは、
今まで培ってきた浮力の概念が消し飛んだ。
Ryan Engle’s Sonic Boom
5’7″ x 19-3/4″ x 2-3/8″ 29.4CL
このことを何に例えていいのかわからないが、
ひとたび車としてみた。
スポーツカーを適正浮力とし、
ミッドレングスはフルサイズセダン。
ミニボードは軽スポーツ。
ログに乗るときは4トントラック。
必ずテイクオフする前に
どのくらいの反応なのか
どれほど硬いのか
そんなターンのきっかけのことを確認してから乗る。
待てよ、車に例えるのであれば、
動力(エンジン)の概念を考えていなかった。
エンジン、つまりパドル力が同じで、
車体が、つまりホイールベースに重量や、車幅も違う。
そんなことだろうか。
とにかく、ボードを1本ごと、または時々、
セッションに合わせて、毎日取り替えるようになったのは、
この浮力の概念が変わったからに他ならない。
これは自分のドリームクラッシャー。
じつは自分のであろうと、
そうでなくてもドリームクラッシャーの味がわかるから、
すぐにフルターンができる。
ソニックブームも同様である。
ライアンは私のそんな事情も知っているから、
今回のドリームクラッシャーは、
浮力過多で削ってくるようになった。
浮力が多い利点は、
パドリングが速い
テイクオフが早い
ターンにパンチが出る
ということ。
逆に欠点という欠点はないが、
クリティカル(際どい)ターンがしずらい
(斜面に)切れ込ませるのにほんの少し遅れる
たったこれだけのことで渦浮力は敬遠されているのだと思う。
ただ、
一般サーファーが感じる浮力過多ボードに対しての最も大きな懸念は、
「ドルフィンスルー(ダックダイブのこと)ができない」
そんなことだろう。
確かにそうなのだが、
ロングでもダックダイブしている人がいるので、
ショートボードの浮力を上げたくらいでは、
こんなことはダックダイブに対して全く問題にならない。
沈める動作を0.5秒早くするだけで解消するだろう。
現在使っているボードと全く同じようにできない、
というのも波乗りの楽しさなのだが、
「人は変化を嫌う」
そんな言葉を思いだした。
これはマンデーヤザワの『ポイント・ファイブ』で、
こちらは彼が好んでの渦浮力サイジング。
CANVAS POINT5 Ryan Engle Shape
5’7.5″ x 19-1/8″ x 2-3/8″
ドリームクラッシャーやソニックブームよりも長いため、
とても滑走能力が高かった。
「これならパキパキのバックドアで滑ることができるね」
「本当ですか!」
「良いバランスのボードです」
Tyler Warren Shapes
DREAM FISH
5’5″x19-1/4″x2-1/4″
これはタイラー・ウオーレンのドリームフィッシュだが、
大きなDツインが付いているので、
その運動性能を楽しんだ。
クイックで奔放、
そしてプログレッシブな高いパフォーマンス性。
この連続写真は、
冒頭のツナくんボード@千葉北ノースタイガー(北東浪見)なのだが、
浮力がある分、
それが生きものような動きになっているのがわかるだろう。
小波ソニックブーム。
これは部原北端のショアブレイク。
私が削ったミッドレングス。
これは湘南鎌倉。
英語にするとPeakという名前のブレイク。
低気圧到来と海賊岬の2016年正月の旅。
それに持ってきたのは、
タイラー・ウオーレンのボンザー・ディスク5’5″
キャンバス(現Nation)のアローヘッド8’4″
さまざまなフィンの数。
Pipeline 1988 /Photo by Takahiro Tsuchiya
Brewer 7’6″ Pintail
私が生まれて初めて乗ったパイプラインは、
もはや28年も前のこととなった。
これは7’6″ピンテイル、
当時は、しかもパイプラインは、
このようなボードサイズで乗るということしか考えられなかったが、
今となってはミニボードか、
キャッチサーフでパイプラインに乗りたい欲求がある。
タイラー・ウオーレンのフィッシュコレクション。
これはNALU誌の表紙になりました。
美しいフィッシュがこれだけ揃うと、
崇高ですらあります。
キャンバスのパーチェイス。
私たちは『アオチャン』と名付けるに至ったマジックログ。
9’4″だっただろうか。
Tシャツにトランクスでサーフしている自分を見て寒そうだと思うのは、
今が冬だからだろうか。
キャッチサーフは、
創業時からアンバサダーとしてコミットしているので、
これまでの全てのサイズとデザインに乗ってきた。
心から楽しいサーフボードだと思う。
シェイプボードに比べてターンの反応が遅れたり、
狙ったところにノーズが向かなかったりするのだが、
逆にそれが溢れる個性となっている。
遅れる分、ターンを早く始動したり、
変な場所(特にトップ)に行ったときことが腕の見せ所で、
それをメイクする感覚というのは今までのサーフボードにはなかった。
要は、ハイチューンのカスタムシェイプボードを例えて、
高精細写真とするのなら、
キャッチサーフはアニメ画だろうか。
そのくらい表現が違うのが、この新時代に出現しました。
1973 (approx.) The Original Bonzer
最近乗ったボードをこうして集めてみると、
かなりの頻度でシングルフィンに乗っていたことに気付いた。
千葉北ノースタイガー(北東浪見)
Tyler Warren’s 6’4″ Tracker (single fin)
その昔、シングルフィンのことは、
“むずかしい”サーフボードだと信じていた。
なので、私が20代のコンテスト時代には、
修行用の6’4″のシングルフィンがあり、
それを
パワーリスト(©リングにかけろ)
大リーグボール養成ギプス(©巨人の星)
カリン塔(©ドラゴンボール)
のようなものとして使っていた。
Nation Hot Doggin’ Loggin’
けれど、
わかったのは、シングルフィンは、
トライよりもクアッド、
そしてツインフィンよりも”簡単”ということ。
さらにシングルフィンのときは、
ほとんどワイプアウトはしないということを確信した。
Nation The Pink Champagne on Ice 6’11″ish
このことが何を意味しているのかというと、
「シングルフィンの世界がある」からだろう。
1970’s single fin at Surfer Magazine
シングルフィンは、
テイクオフする瞬間にその独自のラインが出現する。
逆に言うと、そのラインを見たいから、
知りたいからシングルフィンに乗っているのかもしれない。
Nation The Pink Champagne on Ice 5’11”
そのラインに乗っていれば、
ワイプアウトどころか、
夢で見たような波乗りができる。
クアッドやトライ、
またはツインだとこうはならないのは、
ボードの性能があまりにも良いあまり、
「欲」が出現し、
その欲がターンの強さ、
すなわち傾きすぎるボード角度に発展するからだろう。
傾きすぎるボード角度は「ワイプアウト」を意味している。
1970’s Single fin.
それがシングルフィンだと、
自身が落ち着けて、
自分の丈に合ったターンをしたくなるから平穏となる。
Tyler Warren’s Functional Hull 6’10”
「ゆく河の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず」
これは日本の三大随筆とされる鴨長明の『方丈記』の冒頭だが、
これは何を言っているのかというと、
『無常観』に他ならない。
波乗りは、
波瀾万丈というか、
常に先の見えないドラマ。
さらには波の有り無し、波の形、
質、風、地形、うねりの角度等等。
それらすべての複合で成り立っているのが波。
それに乗るサーファーたちは、
いつも無常観を心に抱いているだろう、
そう断定してみると、
その真理が自分に入ってくる。
その気持ちを持って、
「ゆく河の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず」
を再び読んでみる。
「常に形を変えるのが波、しかも、もとの水にあらず」
こうなってくるのだろうか。
こうして無常観を自分の身近なものに例えてみると、
心の平静がやってくる気がしてならない。
「穏やかに生きていたい」
最近は特にそう考えている。
波が大きかったりすると、
穏やかではいられない気がするが、
大きくなればなるほど、
私の心は研ぎ澄まされるようで、
そしてとても穏やかになる。
で、道具話に戻ると、
そのひとつの答えがシングルフィンのピュアラインだと、
この項を書いていて突然理解できたのです。
波乗りとは、遊びであり、スポーツであり、
生き方やレジャーだが、
宗教のような不思議な要素や含みを持っているのは、
波が、つまり海が、
とてつもなく(精神的に)大きなものを私たちに教示してくれているからだろう。
改めて、波乗りを深く愛することに感謝してしまうのであります。
Costa Rica Devil’s dungeon
Cole BD3/ 5’0″ Bonzer
ミニボードの愉楽に気付いたのは9年前ほど前。
当時はこういうボードは、
小波用だと信じていて、
強い波に乗るということは考えられなかった。
Surf Prescriptions BWT(Bush Waching Thang) 5’3″
ノースハワイの南側には、
ホワイトハウスという重く、強い波がある。
波が上がると、
ここに元世界ランカーのカイポ・ハキアスが来て、
究極の乗り方を披露指南してくれる。
じつはこの項は、
名編集長トミヤマさんのお気に入りのポストでもあります↓↓↓
さて、ミニボード。
これはまるで私の考えるツンデレ像のようだ。
乗り始めた当初は、
ノーズは見えないし、パドリングもむずかしい、
とにかくとっつきにくい(ツンツン)。
でも、ひとたび乗れるようになると、
途端に好意的というか、双方に愛が芽生えるようで、
デレデレするようになるのでそう表現してみた。
そう、当時はーーきっと今もそうなのだろうがーー
このミニボード中毒者だらけになった。
そしてそれは私も同様で、
ミニボード以外乗りたくなくなってしまった。
エルサルバドルにもミニ、
ノースハワイにもミニ。
Cole BD3 5’3″ Twin+ stabilizer
ミニブームの到来です。
Catch Surf Stump 5’0″
Tyler Warren Shapes
“Super Soap”5’1″
Tyler Warren Shapes “Bonzer Disc”
Nation Galactic Laser 5’3″
Naki’s ” Gold Fish” 4’6″
もっともっとミニボードに乗った気がするのだが、
写真がこのくらいしか見つからなかった。
で、
このミニボードの囚われから逃れたく、
コールにお願いしたのが、
ミニボードとショートボードの融合ボード。
これによって、あの名作カーブボールが誕生した。
これによって私はミニボード以外のボードにも乗れるようになって今に至っている。
このミニ&ショートボードという系譜は、
ついに他のメーカーまで伝搬していった。
結果として、
NATIONソニックブームが誕生することになるのだから、
時をさかのぼっていくと、
そんなデザインを変えるきっかけがあったことに気付いた。
Nation Sonic Boom 5’4″
Nation The Pink Champagne on Ice 6’11” (single fin)
私はさまざまなボードに乗っている。
それは32年間続いているテストライダー
(役割と仕事)ということもあるので、
メーカーからボードが貸し出しされたり、
雑誌社から、メディア、
自分で所有したもの、
または友人と交換することを頻繁にしているからだと思う。
これまで書いてきたのは、
[さまざまなボードの乗り方]
[シングルフィンの世界]
[ミニボード依存]
そんなテーマで多様なサーフボードに迫ってきた。
Brian Bent’s “The Box” 1940 style 11″
良く聞くのが、
「(私は)なんでも乗れるから言っていることは当てにならない」(笑)
じつはこれは逆なのです。
何でも乗れるからこそ、
そのフィン大きさや角度、コンケイブの深さや位置、
さらにはテイル形状とウイング等が瞬時にわかる。
車にもテストドライバーという職業があり、
各メーカーは選りすぐりのドライバーを集め、
プロトモデルに試乗し、
完成までに多くの意見を収集したりしている。
サーフボードも同じ。
プロトモデルが完成し、
それらに乗ってみて気に入ると、
「コンケイブが深くて引っかかります」
「スタンス位置が広く取りすぎているかも」
「エントリーロッカーがありすぎて、テイクオフが遅い」
「ターンが硬い」
「レイルが波面を弾きすぎる」
「最速でターンをすると、テイルが抜ける」
「面が悪いと失速度が高い」
エトセトラエトセトラ。
そんなことを各シェイパーに伝えていきます。
逆に良くないデザインだと、
「まあ、いんじゃない」
そんな感じで、
こちらの要望は伝えない代わりに、
モデルとしての製作は関与しません。
Nation The Pink Champagne on Ice 6’1″ (single fin)
私のサーフスタイルは少し独特で、
ゆったりを基調として、
右のターン、そして左のターンと切り出していく。
ワイプアウトを好まないのはみなさんと一緒ですが、
できたら「全くしない」ということを目指して波に乗ります。
なので、深いターン、強いターン。
反対に浅いターン、弱いターン。
それらの量によってボードがどのように挙動するか、
そんなことを敏感に感じている。
なので、弱いターンも深いターンと同様に重要視しているので、
強いターンだけのトッププロよりもテストライダーとして適していると思える。
もちろん好きなボード、そうでないボードといろいろありますが、
実際は「好き=良い」ということにはあてはまらない。
良く乗っているボードは車に積みっぱなしになってることが多く、
反対にあまり乗っていないボードは、
単に倉庫から出して、
車に積むのが面倒だったりしているだけなので、
「私がいつも乗っていないから良くないだろう」
そうは断定できない。
naki’s Twin “Soaring Wing” 5’3.5″
これは自分でシェイプするようになって出現した駄作ボード。
その理由は、チャンネルにあると思う。
ボトムチャンネル(溝)をテイルに向けて加速度的に絞ってしまったために、
圧倒的な水流がテイルエンドのみに流れてしまい、
結果、波のコブの上を走ったときに大失速するというボードとなった。
無風グラッシーだと、
これほどまでに速いボードはないのだが、
オンショア、サイドウインドだと、
テイクオフするのが恐ろしいほど、その欠点の牙が出る。
サーフボードのむずかしさを思い知ったフィッシュデザインとなった。
ただ、現在私は樹脂でそのチャンネルをノックダウン、
つまり埋めているので、埋めた後の効果は、
また後日乗ってみてからここにお伝えします。
Cole Lightning Kicker
5’7″ x 19″ x 2-1/4″
COLEがいたおかげで、
世界最高峰のショートボードに乗る機会に恵まれ、
テストライダーとしての私も成長できたと思う。
Nation Log 9’11”
ログは、まだまだクリスチャン・ワックや
タイラー・ウオーレンのように乗りこなせていないが、
(当たり前です)
いつかそのうち。
逆に加齢してきて、
こんな浮力がありがたくなってくるわけだから、
新しい世界として取っておいたような気になってきた。
Canvas(現NATION)Mini Noserider Type-ll 5’6″
Canvas(現NATION)Racecar 6’8″
制作者不明のシングルフィン
naki’s 6 channel
Tyler Warren’s Tracker 7’4″ (@theycallmedama)
Canvas(現NATION)Test Model 6’2″
NATION Sonic Boom 5’4″
Chiba North Tiger
NATION Sonic Boom 5’4″
Rocky Shore, California
NATION Dream Crusher 5’9″ (Ryan Engle’s)
Rincon, California
NATION Dream Crusher 5’4″
教会岬。
Catch Surf Skipper Fish 6’6″
Photo by Yasuma Miura
Catch Surf Odysea log 8′
Photo by Yasuma Miura
Classic Twin and
Old Cole “Cannon Ball”
The Original Bonzer and Original San Diego Fish
at Surfing Heritage
で、サーフボードのことを伝えようとしてわかったのは、
長期間波乗りを続けていくことが最も重要だということ。
そのエッセンスというか、
自身が生きていくエネルギーのために食事というのものがあります。
サーフィングで、
その役割はサーフボードや波だと気付いた2016年。
ワイプアウトをしなければ怪我をしない。
そんなことも私がこうして毎日サーフできる結果なのかもしれません。
「ほぼ毎日」サーフして、33年目に入りました。
私が伝える波乗り、
そしてサーフボード、
長い文章を最後まで読んでいただいてありがとうございました。
Keep on happy surfing!!
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