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8ホテル〈フーディガイド#2〉立ち呑みサジスタンドで29連勝『恥じらいのポテトサラダ編』

この日は、

東京から東海道線で藤沢にやってきた。

JR藤沢駅の改札口は二階にある。

チェックイン前にカルディでカバを求め、

部屋でグビリとあおり、

残りはビニール袋であいまいな蓋をし、

冷蔵庫に入れた後、夕食散策となった。

 

ランチに重いもの(まずいカツ丼)を食べたので、

その呪いが我が胃に注がれている。

先ほど飲んだカバはその呪い解きの薬酒でもあった。

今夜は軽く食べながらワインを1、2杯。

そんなイメージ。

「やきとん」でもないし、「もつ鍋」でもない。

 

体のオアシスを探す気持ちで歩き、

一度8ホテルの前に戻り、

線路と反対方向に70m歩き、

ネコが玄関にいる焼肉屋を右に曲がり、

50mほど行ったところに立ち飲みスタンドを発見した。

ワイン各種に丁寧な案内POPも見え、

さらには、

こういう狭いスペースでは心からありがたい

「禁煙」の文字が黄金のように輝いていた。

「おーしおし、禁煙ですか、ワインですか、

廉価ですか、イエスイエス」

とすぐさま入店し、

超なみなみスパークリング(500円)と

パクチーサラダ(350円)&ポテトサラダ(300円)を注文する。

美人店員がフルートグラスをカウンターに置き、

精神統一しながら表面張力いっぱいまで注がれる黄金の液体。

思わず一気飲みしてしまおうかという衝動に襲われた。

通常のグラスは165ml。

ボトルが750mlだから4杯半注げる計算となる。

ここまでグラスを満タンにすると、

1ボトルで何杯注げるのかが気になった。

3杯半くらいだろうか。

どちらにしても多いことには何も文句はない。

以前、

東京は白金台にある都ホテル1Fの中華でシャンパンを注文したら、

フルートグラスの1/3程度しか入っておらず、

驚かされ、重く失望したことを思いだした。

これはきっとブルゴーニュのようなワイングラスに対してのグラスへの量が指示されていて、

給仕の女の子がそれにならったのだろう。

会食だったので、それに対して意見も言えず、

たった50ml程度で1800円と、

ずいぶん高いグラスシャンパンとなったことを思いだした。

そんな悔しい回想には頓着せずにパクチーサラダが出てきた。

パクチーはシャンツァイとも呼ばれ、

「パクチスト」と称する愛好家も存在するという香草。

銘草の誉れ高く、

さらにはこのパクチーの香りへ合わせたドレッシングとのマッチングも良かった。

一人で切り盛りする美人さんに思わずほめると、

もだえるほどうれしそうにしていたので、

「自分で作ったの?」と聞くと、

顔を赤らめてうなずいていた。

いいなぁ。

彼女は自作であろう色々が入ったタッパーを開け、

ゆで卵やフライドオニオンを小皿に盛りつけている。

そして『恥じらいのポテトサラダ』の登場である。

まるでちょっとした小宇宙である。

味の濃い黄身を中心にしたトッピングだ。

ゆで卵をパクリとすると、

フライドオニオンのサクサクに背筋が伸びる。

主役でありながらも台となって謙遜しているポテトサラダにB級風のソースをかけるミスマッチに和む。

ソースをかけられつつも威厳があり、

テツガク的なおいしさに足を上下させながら、

超なみなみスパークリングの二杯目を注文して一息。

 

iPhone6s PlusのNEWSを見ると、

「未到29連勝をかけて藤井四段、増田四段と対局」

という見出しが目に入った。

中学生棋士の藤井くんが連勝日本記録に挑んでいた。

「藤井くんが勝つぞ」とニュース画面にキリリと入魂する。

そんなマンガじみた勝利を確信できるのもこの手作り風味が織りなす魔力のなせる技であろう。

さらにヘッドラインをチェックすると、

『藤井四段、苦戦か。夕食はワンタンメン』とあり、

その記事を読むと、

「藤井四段は五目チャーハンを注文したが、あいにく品切れ。

ワンタンメンに変更。対する増田四段はヒレカツ定食と肝吸い」

とあったので、ならばこちらはシンガポール風焼きビーフン(300円)とし、

藤井くんと同じ麺類として微力ながら応援をすることにした。

”彼が苦戦している”とあったが、

どうやら角と金を格下交換したことが書かれていて、

金を得て角さんを差し出した水戸黄門こと、

徳川光圀の気持ちになった。

この重い胃はカツのせいなので、

ヒレカツ定食を注文した対戦相手が間接的に憎く、

その角がどのように使われるのかが知りたくなった。

カレー味のビーフンの余韻を流すように残ったスパークリングを一気飲みし、お会計と相成った。

 

千鳥足未満で部屋に戻り、

少し飲み足りなかったので前出のカバを冷蔵庫から取りだすと、

キンキンに冷えていた。

ラッパ式でグビリ飲みながらTVを付けると

『藤井四段、新記録の公式戦29連勝!』とテロップにあった。

これでランチのカツの呪いが解けたようで、完全に胃がすっきりした。

新時代の幕開けだとTVに向けて乾杯し、

そして14歳だった頃の自分を回想すると、なぜか耳が熱くなった。

(2017-07-15)