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【naki’sコラム】vol.19 Imagine 波に乗ることについて

I am enough of an artist to draw freely upon my imagination. Imagination
is more important than knowledge.
For knowledge is limited, whereas imagination embraces the entire world, stimulating progress, giving birth to evolution.
-Albert Einstein,

雨が降り続くカウアイ島で、白く煙る海を見ながら波乗りについて考えている。
この秘密の場所では、熟れた波が誰にも触れないまま、触れられないまま、たわみ、極み、達し、ふるえて無数の泡となり果てていた。想像力をどんなに豊かにしようとも、風と光のエレメントが織りなす波の多様さにはかなわないだろう。

ここまで書いたところで雲が切れ、青空が現れた。しばしその高尚な波を眺めてから、ボードにワックスを塗りたくって沖に出た。水平線の向こうーー広大なそらを見上げると、柔らかな気持ちになってきた。

波に乗り、海に包まれていると、「唯我自尊」という言葉が頭に浮かんできた。
ユイガドクソン=我が道を行くこと。
それができるのが波乗りの良さだろう。

陽が落ち、暖色世界の水平線が蒼くなると、なぜか俺は宇宙を感じる。永遠にも感じられるほどの不変を繰り返してきた遥かなるそら。そこから発火する意識はいつも銀河系を越えていく。

海の神様が創る無限波に俺はいつまでも乗っていた夢を見た。夢の中でその長い距離に興奮して目を覚ました。

波の予感がするので、その興奮のままに秘密の場所に向かう。エモーショナルな朝焼けの中、夢をコピーしたような斜面にサーフボードを滑走させ、こころは満たされていく。

永い時間、意識を波に絡め、満たし、それが遠のく前に海から上がった。暖かく、柔らかな砂浜にくるまっているとオンショアが吹いてきた。波の、煌びやかな斜面は、海風がやってきた瞬間にその美しさを失い、それまでの歓喜と同量の失望がやってきた。

+とーの同数は自然の摂理、バランス論を思い出させてくれる。
海に人生を感じ、何かに導かれている自分がここにいることを確認する。こんな日には「俺もようやく開眼したのだ」と思うけど、それは幾億ものドアのひとつにしか過ぎないことを知っている。そのドアの向こうにはまたドアがたくさんあって、深い階層になった階段があるはずだ。
俺は一生懸命に、そして絶えまなくその階段(レベル)を上に、下に降りたりしているのだろう。

稀に自分のレベルを知り、愕然としたり、または悦びに口笛を吹いたりするけど、深い未知のフィールド、そこに出現する“美波”を夢見ることがサーフィングでは真の魅力、そして奥深さだと思う。
夢を見、自我を見つめ、想像力を働かせると、サーフィングは芸術となる。波に乗る芸術とは、熱い地球からのロマンチックなパワーメッセージ。
それ故(ゆえ)に波を乗ることは、パワーとは反極の『無(ナーダ)』であり、みんなも知っているナーダとはそれぞれの神そのもの。

波に乗ること、という行為は時空を超え、夢と愛を紡(つむ)ぎ、それぞれのこころに永年宿る伝説となる。

(了、3-18-06)初出誌オンザボード2006年5月号巻頭コラム(加筆12-05-06)

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