QUAD-ROUND NOSE FISHの話をスパーキにしたら朝すぐに来て持って行ってしまった。写真を撮ろうと思っていたのだけど、まあいいか。
で、今についてのインプレッションを書こうとしているんだけど、AVISO社から資料を取り寄せたら宇宙船、つまりスペースシャトルについて書いてあるように高レベルの科学的な話が満載されている。
書かれているレポートはやはり英語なんだけど、こんな単語ってあったの?というような科学単語ばかりで、辞書引きまくり。まあ2カ国語完璧のマーボーさんならわかるだろうけど。
でもAVISO社は博士が経営するだけあって、エンジニアリングについてもりだくさんで、読み進む内にだんだん賢くなってきた。
でも最新の材質は本当にすごいね。
炭素繊維
理想的膨張係数
負荷係数
高温、高圧で融合
という字の羅列を見ていると痺れてしまった。これを読んでから、ここにあるAVISO ROUND NOSE FISHを見ると、さっきより輝きが増したような錯覚におちいった。
▲AVISO-ROUND NOSE FISH ホワイト・プロフィニッシュ
今回のオーダーは「なるべく穏便に」という俺のモットーから白のプロフィニッシュを選んだ。 ザラザラしているのでグロスフィニッシュと違い滑らないから俺好み。しかもグロスより安い。
ノーズまでワックスを塗っている間、これに薄い茶色のスプレーペイントを塗って、10年落ちのサーフボードを表現しようと考えた。
“修理の後風”のステッカーとかあったらいいのに。 と高品質に恐れをなしているのか、「穏便」から「見た目旧式」へと考えは移行している。
話が変わるけど、江戸時代の武士は商人より階級が高く、物質的な豊かさより、精神的な「名誉」があったと聞いた。
サーフボードは俺たちに取って刀そのものだけど、この刀は武士と同じく名誉そのものです。 俺もその時代に生まれて、武士をしていたのなら国中を奔走し、銘刀を手に入れていたのだろうか。
名誉とは各自がそれぞれ違う形で持つものだけど、サーファーはそれぞれの名誉を心に秘めている。
その昔、三浦さんという人が鎌倉七里ヶ浜にいて、波乗りを始めたばかりの俺の面倒を見てくれた。
彼はサーフボードを刀と同じように大事にして、刃こぼれ(傷)が付こうものなら、すぐに乾し修理していたのが印象的だ。
やはり車もピカピカだった。
その彼がある日、七里の正面でものすごいリッピングを決めて、それを真後ろで見た俺は、
「サーフボードが波の後ろに全部突きだしてきて、戻っていった」
という事実に感動した。それを決めた三浦さん、顔がうれしそうだけど、それをこらえるためになぜか怒っている(笑)。
近くまで来た彼に、
「いやあすごかったです。バックフィンの下に付いている小さいロゴまで見えました」
と報告したら、
「本当か!そうかそーか」
とヨロコビながら怒っている。
夕方まで海に入り、目の前のオーシャングライドにシャワーを浴びに行くと、三浦さんが待ちかまえていて、
「お前今晩何やっている。焼鳥屋に行くか?」
と聞かれ、その頃金銭的なヒッピーだった俺は2つ返事で行くことにした。
焼き鳥屋のビールで乾杯した俺は、まずあのリッピングの凄さを三浦さんにもう一度伝えた。うれしくなった三浦さんは、
「あれも食え、これはどうだ?」
と大盤振る舞い。
その夜はビール瓶が空になる度に三浦さんが太い声で
「もう一度言ってくれぇ~~」
とリッピング報告の繰り返しで夜は更け、今思うと本当にいい時代だったんだなあ。としみじみとしてしまった。
それは彼の名誉、それを見た俺の名誉。
それはほんとうに小さいことだろうけど、幸せに生き続けるためには重要なことだと思う。
鎌倉の三浦さん、今何をやっているのかなあ?
2006/11/19(SUN)・了