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naki's blog

【naki’sコラム】vol.39 1秒の長さ、短さ

ノースハワイでは、また波が大きくなっている。
ブイは「12.8ft@14sec./WNW」を計測し、波情報は「14 to 18 feet today」と、背丈3倍波を報告している。
風は「200@14(南南西の風14ノット)」となっていて、どうやらこれは三日月湾周辺が良さそうだが、俺たちはあまりあちら方面に行かないので、どうしたものかを思案中。

ちなみにこの1ノットというのは、およそ風速0.5m/秒で、14ノットは風速7m/秒ということになる。(最大でなく、平均値を採用)
「伝説のような初波求む」と初乗りの支度を調えているところだ。

昨夜はきんちゃんに録画していただいたBS放送での「イチロー特集2009」を見て興奮、感動していた。
球場で見ると、あんなにクールなお顔をされてプレイしているイチローさんが「恐怖」や「苦悩」、「孤独感」を持たれていて、じつに人間的なのだなあ、と興味深かった。

 

いつだったか、メジャーリーグで唯一「シーズン打率4割を打った」テッド・ウイリアムスという殿堂入りプレーヤーがいて、「その彼について当時のアンパイヤが詳しく語っている」という本を読んだ。

そこで書かれていたテッドは、現役を引退して、『ワシントン・セネタース(現テキサス・レンジャーズ)』というMLBチームの監督に就任していた。

キャンプ(スプリングトレーニング)の際にテッド監督は、バットの芯部分に松ヤニを塗って、打席に入った。(普通、松ヤニはバットの握り部分に塗るもの)

指名したのは新人の超速球投手。
このときはテッドが54才だったので、筆者であるアンパイヤはもちろんのこと、その場にいた誰もが監督が空振りすることを想像した。

その若い投手が全力で速球を投げると、なんとテッド監督はロケットのような打球をセンター方向に打ち返し、筆者(アンパイヤ)に向かって、「ワンシーム(一本の縫い目)だな」と言う。

次の球も打ち返し、今度は「縫い目の1/4 インチ(約5mm)上だ」と言い、戻ってきたボールを筆者が確認すると、一球目と同じように(バットに付けられた松ヤニの)黒い跡がボールの縫い目の5mm上についていた。

そして次々と、合計7球を打ち返し、見物していた選手、そして観客はそれに感嘆したという。

全てのボールの跡を確認すると、7球中5球の位置を確実に言い当てていた。
速球、しかもメジャーリーガーの豪速球。
それを「バットで捉えたときのボールが見えた」という神業がここに証言されている。
しかも54才で。
やはり歴史に名を残す人は違う。

そんな伝説話と、イチローさんの歩まれている軌跡は似ているようなところがある。

そのBS番組内では、「不振に陥ると、イチローさんは球場内にあるビデオルームに足を運びます」と、イチローさんはビデオルームで自身の打撃を分析し、「始動が遅すぎる。これでは打てるわけがない」と発言していた。

野球をされる方ならわかるが、ピッチャーの投げた球というのはものすごく速い。
一度マーク・クルーン(横浜→巨人)の球速160kmの球を体感できるチャンスがあって、それは、「ボールが手から離れた瞬間に、光が通り過ぎたようにボールの軌跡だけが目に残った」というものだった。

「速い。プロはこれを打っているのか…」と驚愕したことを思い出した。
その速さはどのくらいなのか?
と調べてみると、「ピッチャーの指から離れ、ホームプレートまで到達する時間」という項目に、「160km=0.38秒」とあり、それはピッチャー対バッターというのは、「たったコンマ38秒で全てが起きているのだ」と知った。

速球投手の目安である球速150kmが、0.41秒。
選手たちはわずかコンマ4だか3という時間の中で、打てるボールなのか、そうでないのかを判断し、バットを振り出しているのだ、と驚く。
よく考えたら、そこからバットを振る時間を差し引かなくてはならず、とすると有効な時間はこの半分となるのだろう。

一般の人間の全身反応(体を動かすための)時間は最短で0.365秒とされている。
そうなると、このテッドやイチローさんの全身反応時間は0.1秒程度なのだろうか。

1時間を60等分したのは、六十進法を使用していたバビロニア人とされている。
これにより、1秒は平均太陽日の86,400分の1となった。
野球選手をはじめとし、瞬時の判断力を求められる生業の人は、1秒をさらに細かく分けたような時間単位が存在しているのだろう。

「秒」について調べてみると、
1.ミリ・秒  (ms) は、1,000分の1秒。(ストップウオッチにおける最小の単位)
2.マイクロ・秒 (μs) は、100万分の1秒。(原子の反応や化学反応計測に用いられている)
3. ナノ秒(ns)は、100億分の1秒(コンピュータ、パルスレーザー等の電子機器に)
とあり、イチローさんたちは、「200ミリ秒」という単位の勝負を毎回しているのだ。

実際に私たちサーファーも調子の良いときは、リップから飛び散る波の飛沫が見えたり、波にできるコブのコンマ秒単位での変化をスローモーションのように見届けたりもしている。

さらにケリー・スレーターたちは、急激に移動、変化していくリップ形状を誰よりも正確に捉え、始動の位置、ボードが浮上していく状態などをミリ秒単位で判断しながらサーフしているのだろう。

こうして人間の能力、奥深さをイチローさんを通じて知ることとなったのです。
すごいことである。

 

満月がきれいなので、しかも元日の満月は珍しいので写真を撮りに行ってきた。

明るいので星々はあまり見えないけど、夜の空を見ていると、この大きな宇宙の広さを知ることとなる。
現在考えられている宇宙の広さ、つまり「宇宙の果て」までの距離が150億光年。
そんな広さ、その広さというのは大きすぎて実感が沸かない。

スペースシャトル(平均時速25000km/h)で、1光年の距離を移動すると、およそ4万年かかると試算されている。(1光年は約10兆km)
この銀河系の隣には、アンドロメダ銀河(M31)という巨大な星の集まりがあり、それは地球からおよそ230万光年の距離に位置している。

アンドロメダ
↑星座だとこの位置に見えます。

星雲
「星雲、それは星雲~♪」

↓M31のお姿。
M31

もし私たちがスペースシャトルに乗って、そのアンドロメダ銀河まで行くとすると、
9200億年かかる計算となる。
地球の年令は46億年とされているが、アンドロメダ銀河までの航宙時間はその200倍もかかってしまう。
この計算をしながら思っていたのが、宇宙時間のこと。
もしこの広い宇宙を(現在の地球のように)行き来するのには「時単位を拡げればいいのだ」とひらめいた。

私たちを包む宇宙は、もしかしたら「1000年を1秒」という単位で動いている。
そのように仮定してみたらどうだろうか?

私たち人間はたかだか生きて100年。
ということは宇宙時間だと、たった100ミリ秒のこととなるのかも。

寂しくもあり、永遠のようでもあり、そして長く、短く、広く、遠い視点となりました。

星雲衝突
↑これは「星雲衝突」写真。

 

イチローさんたちが到達した瞬くような時間、
そして空に拡がっている信じられないような広さ。
そんなことをこの2010年の元日に感じたのです。

今年もどうぞよろしくお願いします。
「それぞれのお時間がすばらしいものになりますように」

(2010.01.01)

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