芽吹きの春。
穏やかな風が吹き抜け、
木々の葉先がかすかに揺れている。
陽光に照らされた砂浜は、
潮風がほのかにただよっている。
まぶしさに思わず目を瞑る。
すると波の音がしっかりと聞こえ出した。
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砂浜で波をチェックしながら、
まだ動きの鈍い体でストレッチする。
青空を見上げながら、
ゆっくりと想像してみる。
うつくしい波の斜面を・・・。
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透き通るような青い空には、
鳥たちが優雅に舞っている。
波打ち際には、
弾ける砂が輝く。
サーフボードを持ち出して、
ぼくは沖へと漕ぎ出していく。
白波を越えるたびに、
期待に胸を躍らせながら。
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迫り上がった一筋のうねり。
思い描いたうつくしい斜面が広がる。
ぼくはその斜面に向けて、
サーフボードを走らせていく。
すばらしい世界のはじまり。
この瞬間がぼくはたまらなく好きだ。
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早朝の寒さ、
着替えのつらさ、
海の冷たさ、
そんなものをすべて溶かすように、
春の陽射しはぼくらに降りそそいでいる。
ブーツとグローブを脱ぎ、
やがてウェットスーツも身軽になっていく。
身につける装備だけではなく、
海にいく気持ちまで、
春はぼくらを身軽にさせてくれる。
そして波に乗れば乗るほどに、
心に重りのようにひっかかっている、
日常のさまざまな思いまで落としてくれる。
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箍(たが)が外れたように、
胸にあふれ出る自由へのヨロコビ。
そんなヨロコビをうずたかく積んでいこう。
夏をこえて秋になり、
やがてまた来る冬のために・・・。
春の波。
暖かい風。
透き通る空の青。
この春イチバンの想いを、
真新しいサーフボードに込めて、
ぼくはまた海に向かう。
(じゅん)
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