「あらゆる生命の営みは海から始まった」
ひと気の少ない冬の海を、
ゆっくりとパドリングで進むとき、
どこかで読んだその言葉を思い出す。
澄んだ空をうつすように、
目の前に広がる海はすばらしく青い。
生き物と水・・・。
ふと海水をすくう。
水とのつながりを考えてみる。
たとえ人がどれだけ進化しようとも、
体のなかに水が無ければ生きてはゆけない。
沖からのうねりが意識の静寂をかき消す。
高揚とともにパドルして、
身体は波の斜面へと入っていく。
刹那だが究極ともいえる瞬間。
波に乗っている間、
無になって波斜面にトラックを描く自分がいる。
ただただ純粋な時間。
生命の誕生は、
そんな無の状態かはじまったのだろうか。
夏の海は激しさと歓喜に溢れ、
冬の海は静寂と癒しに満たされている。
ぼくらのDNAには、
静寂な海の記憶が残っているのかもしれない。
無人の海に包まれて、
豊饒なときを過ごした日。
純粋な波乗りの楽しさを知った。
冬の海。
身体に染みわたるように、
歓びと癒しに満たされた時間。
海を母と喩えた人の気持ちが、
少しだけわかるような気がした。
PURE GLIDE の世界へ。
(じゅん)
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