ある夜、波乗りが大好きな男の子が留守番をしていました。
外は雪の寒い夜でしたが、部屋の中は暖炉(だんろ)の火が赤々と燃え、とてもあたたかでした。
男の子はエディー・アイカウが波に乗る絵を描いていました。
すると、どこも閉まっているはずなのに、ピューッと冷たい風が入ってきて、部屋いっばいに霧が広がりました。
男の子は少し怖くなって、暖炉の火のそばへ行きましたが、ふと、うしろをふりかえってビックリ。
霧の中には、サーフワックスを持った男の人が見えたのです。
隣には、赤ちゃんを抱いている女の人もいます。
赤ちゃんは、大きな声で泣いています。
きっと男の人はお父さんで、女の人はお母さんなのでしょう。
女の人は、赤ちゃんをあやしながら言いました。
「おお、よしよし。今お父さんが、コンテストで賞金をかせいでくるからね。そうしたらお医者さまにかかれるからもう少しの辛抱だよ」
お父さんは、ワックスを暖炉の火で温めました。
火の中に手を入れても平気な様子からして、多分、男の人も女の人も、それに赤ちゃんも不思議世界の人たちなのでしょう。
ワックスが温まると、お父さんはそれをボードに塗りたくり、海に出て行きました。
すると、そこはパイプラインで、お父さんはデビッド・ヌヒワよりもジェリー・ロペスよりも大きくて深い波に乗って、バレルをどんどんメイクして、賞金の小切手を大きく掲げ、お医者さんを連れて帰ってきました。
お医者さんは名医らしく、赤ちゃんの体に手を当てると、泣いていた赤ちゃんの泣き声がピタリとやみ、今度はうれしそうに笑い出したのです。
「ああ、よかったね。お病気が治ったね」
不思議世界のお父さんとお母さんは、ニッコリとほほえみました。
そのとたん、その人たちは消え、霧も晴れ、何もなかったように元の部屋に戻ったのです。
男の子は目をパチクリさせて、頭を振りました。
「もしかしたら、今のは夢だったのかな?あっ、これは!」
男の子の目の前に、さっき不思議世界でお父さんが使っていたワックスが置いてありました。
男の子は、そのワックスを引き出しの奥に隠しておきました。
やがて、男の子は若者となり、サーフィンコンテストに出るようになりました。
あるとき、大事な試合で、若者は隠しておいた不思議世界のワックスを使ってみました。
すると、たちまち倍速スピード、どんな技をかけても転びません。気が付くと優勝していました。
友だちはおどろき、そのワックスのことをサーフィンクラブの人たちに話しました。
それからというもの、みんなは重要な試合や大きい波の時には若者のところへ来るようになりました。
となると、コンテストで勝つことはもう不可能です。
若者は結婚して、暮らしが貧しく大変になっても、
「これは、 不思議世界の人からもらったものだから」
と、村の人たちからお金を取ることはしなかったのです。
そうして、いつでも具合の悪い人がいればこのワックスを塗ってあげました。
ありがたいことに、このワックスは毎日たくさん使っているのに、ちっとも減りませんでした。
若者と奥さんは、村の人たちからとても感謝され、大事にされていました。
けれどもある日、ワックスは盗まれてしまいました。
その効能のすばらしさに目を丸くした泥棒は、これで一儲けしようと企んだのです。
「このワックスを使えば、すぐに金持ちになるだろうな」
不思議ワックスを塗って波に乗ることをおぼえたサーファーたちは、もうこれなしでは波に乗れません。
ワックスを使うためには泥棒の言う通りにするしかないので、たくさんのお金を払いました。
そのお金のためには恐喝、窃盗、強盗となんでもやったので、そんなサーファーたちはやがて警察に捕まり、牢屋に入れられてしまいました。
泥棒はお金持ちになりました。
けれども泥棒が使うようになってからは、ワックスが減るようになったのです。
泥棒が、残り少なくなってきたワックスを自分に塗ろうとしたら、手からころころと崖の下に落ちていってしまいました。
泥棒は崖を命からがら降りて行き、落ちた辺りを這いつくばって探したのですが見つかりません。
やがて夕方となり、暗くなってきたので泥棒は懐中電灯を取ってこようと家に戻る途中で酔っぱらい運転のダンプに追突され、死んでしまいました。
それから何十年も経って、若者がおじさんになって、海の上に浮いているワックスを見つけ、ノーズにさっと塗ってみると、昔の魔法が戻ってきました。
おじさんになった若者は、ものすごいサーフィンをして、廻りの人を驚かせました。
そのワックスは小さかったけど、いくら使っても減りません。
おじさんに子供が生まれ、その子の名前をケリーと付けました。
ケリーは、世界チャンピオンを7回取った腕前ですが、お父さんの教訓からこのワックスを使っていることは、心許せる友人だけが知っています。
その若者は、一つのワックスで人生を学んだのですね!
独り占めせずに、貧しくともみんなに分け与えて。いい事をしたつもりが、みんなを欲のかたまりに変えてしまうことになり…。
甘い蜜は一度手に入れると手放せなくなる。と言う事を!ケリーには自力で勝負させているのが親の愛情を感じます。今は、勘違いしている親が多いらしいと何かでよみました。真の愛情は、これだと思いました!
しかし、ふなきさん童話を出版できますね♪
塗るとビヨヨヨヨ-ンと効果音がして、CAからパイプラインにいけるというストーリーの、昔のクイックシルバーのビデオ思い出しました。
霧の中から、再びワックスを持った3人の子連れの男の人が現れたのです。
「8回目のワールドタイトルは、もうこのワックスしかない」
と、良い香りと共に、イリュージョンのように消えていってしまいました。
ケリーという名の青年は、もうワールドタイトルの事は、あまり考えていませんでしたが、あまりの良い香りに、使うことにしました。
するとスーパーバンク、ベルズとシーズン始めに優勝してしまい、8回目のタイトルも、このワックスでイケるのでは??と思い始めました。
そしてスペインで、大好きな後輩の板にもこのワックスをこっそりアップしたら、彼は優勝し、ケリー青年も前人未到の8×ワールドタイトルを手に入れてしまったのです。
Fワックスのパワーは、アロマ効果も発揮し、ツアーの間、喜びの香りに包まれ、幸せな旅を送ることが出来たのだそうです。
そのワックスを差し出した、煙に消えたジェイミーは、とても真面目だけど、はちょっとだけオッチョコチョイ。日本の電車に、思い出がいっぱい詰まったデジカメを忘れてしまいましたが、見つかったのでしょうか☆
十数年前の部原世界大会最終日の明け方の事。
波は腰サイズ、私は空が薄紫色になると同時に海に入るとケリーがすでに波待ちをしていました。
彼と目があった瞬間、ケリーが『オハヨウゴザイアス?』ともう少で100点満点の日本語で挨拶しながら僕の所にパドルしてきます。エェ~と緊張している私の肩に手を当て、モミモミと揉みながら肩に力が入りすぎだよ!(英語検定2級なので疑問?)とアドバイスされた事があります。
やっぱ そうでしたか・・・
うちのじぃさんも魔法の釣り針を小さな私にくれて以来、、、私が釣り上手になったのは言うまでもありません。。。
むらっちさん、
いえいえ、そんなに高尚なものではございません。
結末をしっかりさせるために少し加筆しました。
これでいかがでしょうか?
ケリーの親父はこのように過保護だという話なのです。
童話大好きです。
keiさん、
マッドワックスですね。
もちろん見ています。
私はクイックでしたらPerformersが大好きです。
t-meanさん、
2007年の春なのでは?
それでしたらジェイミーは自社のチームライダーのティミー・カレンにワックスを差し出しているでしょう。
ジェイミーがなくしたカメラは、江ノ電鎌倉駅に届いていて、美談となりました。
でも、なんで日本のサーフィン雑誌社はティム・カレンをカレンと表記しているのでしょうか?
シエィ・ロペスも同様で、
「a」はアルファベットではエイです。
エイビーシーディーイーエフのエイです。
Tim Curran
Shea Lopez
のaを「ア」ではなく、エイと発音すればたちまち正しい発音になります。
TAKEOさん、
やはり!
ケリーはもうそのときワックスを塗っていたから気持ちが楽勝だったんですね。
確信が持てました。
ありがとうございます。
たけさん、
釣り針とは!
魔法のお財布があったらどう使われますか?
やっぱり、我が子はかわいいくて…と言うことですね。
窓から冷たい風が入ってきて霧が広がり、年明けには魔法の板がわたしのもとへ届くのですね!(願)
むらっちさん、
いえ、このワックスを使わないと7回の世界チャンピオンは不可能です。
ということです。(笑)
じーじさん、
「魔法板は暖炉から現れる」
とノストラダムス百詩篇補遺の中に書かれております。
年明けは2000年問題が起きます。