波。

なかなかやってこない波がある。

秋のはじまりに乗り、

「もしかしたら生涯で一番好きな波かも」

と感じ、それを確かめるためにも

もう一度その斜面を滑りたいと決心した。

うねりを待つ。

低気圧発生と聞けば、ウエザーレポートを見て、

その等圧線やら進行方向、

そして速度を毎時間の経過と予想を懸命に推測していく。

うねりが届いた。

残念ながら角度が違うので、

あのときの波にはならなかった。

またうねりがやってきた。

今度は三日月日だったので潮が合わなかった。

日没前に一瞬だけその姿を見せたけど、

そのときには風が合わなかった。

波を待つ日々。

はたしてその待ちつづけたうねりがやってきた。

丸まった斜面に陽がたっぷりと反射し、

轟音を立てて破裂している。

ワックスアップもウエットを着るのも、

何もかも全てがもどかしく、

沖に出て、

手前にある椰子の木、

そのはるか後方の丘の上の茂みで位置を確認して、

さらにはリーフから吹きあがるボイルで波を待つ。

目の前にやってきた波。

その最初の一本。

波に向けての最初の一漕ぎ。

波底に向けて最初のテイクオフ。

これは待ちつづけたものだけが得られる究極の昂奮だろう。

待て

待って

待とう。

時は必ず来る。

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