さぁ、やってまいりましたサンクレメンテの秘境王子邸前。
ここは王子ニックの家の前として知られていて、
住宅地の中にあるため、
いつも空いているという大好きなブレイクだ。
キャッチサーフ、
いやTストリートのネイトこと、
ネイザン・ヴァンダガスト。
新しいNATIONのフィッシュと、
ショートボードを融合させたニューデザインが完成したので、
彼は6時の就業後、そのままピコからフリーウエイに乗り、
カラフィアで降りて、オラビスタと曲がり、
駐車場から走って突然ここに乱入してきた。
この王子邸前は、
古くはマット・アーチボルド、そしてコロヘ・アンディーノ、
ガダスカス兄弟たちを輩出した由緒正しヤングなリッパーたちが、
このTストリートのキングネイトがやってきたのに目を瞠り(みはり)、
普段は見ることのできない彼に熱い視線を降りそそいでいる。
いきなり出た!
ネイトのお得意レイバックスナップが沸点を迎えている。
NATIONスペースオディセイのエア・マシンは、
切り返しのラインを高く掲げ、
さらにフィンを抜いて、
ラテン魂のハイキックを謀ろうとしているのか!
ついに夕陽色の影の斜面上部からフィンが空に放たれ、
この夕陽サンクレメンテを切り裂いていく。
がしかし、
カメラが回っていることにいきりたったのか、
斬れ味良すぎて、
投げ出された逆側のレイルが波のフェイスに迫るぅ。
そのレイルは、
乗り手の意志と反するかのように、
サンディエゴ・サブマリンのように海の中に切れ込んでいく。
現実とはどこまで無情なのか。
サーフィング界は表裏一体の世界なのでありましょうか。
波乗りの一期一会でしょうか、
全て沈みこんだボードがネイトの無念さと、
その速度を物語るようであります。
しかもなおメイクさせようと未練たっぷりの目は、
まるで昭和枯れすすきを彷彿させるようで、
悲哀の光と闇が今彼の視界には交錯しているのでありましょう。
VANSのオフザウオールTVカメラも
街頭テレビのように波の後に沈んでいった。
COLEのライダー、
コールも彼の多彩なエアコレクションの中から、
インディグラブを炸裂させた。
おだやかな性格とは反対の激しすぎる意思表示であります。
コールは高く飛んで、
どこまで行くのでありましょうか。
次の波はバックサイドに向かったネイト。
祝福すべき彼の、
新たなる旅立ちをいま応援しようではないか〜。
このウエストとサウスが、
がっぷり四つで合致するクロスオーバーセクションで、
もはやポルコ・ロッソ、
いやネイトの人間飛行機状態を見せた。
サボイアS.21試作戦闘飛行艇が彼に乗り移ったのか!
Tストリートのカマイタチと言われるネイトが、
王子邸前で彼のサーフィングの集大成を見せる。
左ハイキックが太平洋の空をいま駆けている〜。
ターンのシックスセンスなのか、
実際のコンタクトがない空力抵抗の摩訶不思議だ!
このNATION機での、
太平洋横断ノーグラブエアがサンクレメンテ市、
いや北米大陸を俯瞰し・て・い・る〜!
エア界のビッグバンなのか。
高さと飛距離で、
カーチスR3C-0水上戦闘機をいま越えていく〜!
一進一退、
一本目は苦戦を強いられながらもネイトはチャンスを狙っていたのだった。
これでトレーダージョーズビールがうまい夜になっただろう。
なんと、今日はノマドの5ドルチューズデーだ〜。
ベーコンドッグと生ビールのセットで彼は酔うのか。
ポルコのように酔いつぶれて眠るのか。
サンクレメンテで昭和の河島英五の、
酒と泪と男と女のメロディが、
今の彼には、
酒と波と俺とネイションに聞こえてくる〜。
すばらしいぞネイト。
君は俺を魅了する三尺玉の花火エアリストだ!
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