Le Grand Bleu_Qフィッシュ

深海の、果てしなく青一色の世界の静寂に包まれてただ一人となるとき、時間と空間と光はひとつのものとなり、私は私の呼吸を一時止めて宇宙の呼吸に身を委ねる。その時私は両棲人間という私の真の本性と再会し、ひとつの“宇宙の歯車”に再び還っている自分を再発見する。

これはジャック・マイヨールJacques Mayolさんの著書冒頭にあった言葉。

これで海はいかに宇宙的かが伝わる。

ジャック・マイヨールは1976年11月23日、人類史上初めて素潜りで100メートルを超える記録をマークした。

その記念日に俺は波に乗っていた。

6ftはあるピーク。
黒い影はリーフだ。
そこに浅く砂が付き、深い水深から急浅となるため、美しいバレルとなった。

バレルの多くは速すぎて、俺にはなかなかメイクできなかった。
この写真のように出口は遠ざかり、泡がボードを掬(すく)う、または沈めてしまうのだ。

【夜明け】

その後、回転運動をしている波に巻かれるわけだが、ここでは浅いのでそのままリーフを転がってしまう。
当然足や背中は切り傷だらけとなる。

一度、トップから巻き上げられ、変な角度で波下辺にたたき落とされた。
岩に激突を覚悟し、意識を閉じた。

すると、インパクト後にもどこにも当たらず、俺は柔らかな砂地に押さえつけられていた。

轟音の下の静寂エリア。
「やった!」とゆっくりと目を開けるとピントの合わない広い視界が拡がっていた。

泡の塊である白い波は真上を通り過ぎている。

遠くで太陽の白色が揺らいで、光線が差し込んでいる。

ここは砂で満たされた大きな穴だった。

ものすごく落ち着いた俺はその宇宙空間みたいな海を見ながら、ジャック・マイヨールのことを考えていた。

ゆらゆらと海面に上がる。

こんな時にいつも彼はこの世界を見ていたのだなあ、と。

宇宙からのパワーなのか、人間の潜在能力なのか、全く苦しくならなかったワイプアウト。

波乗りとは実に不思議で深く、こうして宇宙的な感性まで感じさせてくれる。

宗教的なものはこの世に数多くあるけれど、俺は海教にどっぷり入信しているのだろう。

拡大版↓

この後、Qちゃんはプリンスビルのリックに渡したので、この波が最後のライディングとなった。

さよならQちゃん。

「Le Grand Bleu_Qフィッシュ」への24件のフィードバック

  1. アートな波ですね。
    静止画で見れば綺麗ですが、そこに自分がいるとなると、恐ろしいです。
    ジャックマイヨールの潜水技術、体力、センスもすごいと思いますが、このアタックもすごいです!

  2. ヴィナカ・インサイダ~ズ

    11月23日!息子の誕生日だ!なんと奴は毎日風呂で潜ってます(笑

    一番好きな映画なんだよな・・・

  3. マーボーさん、
    何を言いますか。
    ヤップ島ですごいのを乗っていたという証言あります。

    markee.さん、
    この場所がひさしぶりに地形が決まったのです。
    暗いときから浜で時間をすごしているとかけがえのない場所となります。
    海はアートそのものですね。

  4. ヴィナカ・インサイダ~ズさん、
    そうなのですか!
    将来有望ですね。
    竜ちゃんみたいです。

  5. 波の長いトンネルを抜けると、朝日に手が届きそうな『未来』を感じました。
    水中の写真は、水の中なのに滝があるようで不思議です。不思議だけど、とても好きです!!

  6. 実は先日、後輩がサーフィン中に自分の板が目に刺さり
    失明してしまったんです。 なにか励みになったり、前向きになれるようなお勧めの本があったら教えて下さい。

  7. この、白い丸いカタチはQちゃんですか?
    しかし、なぜこの波にQちゃんなのですか?
    ロマン過ぎるでしょー!
    本物のオバケでしょー!
    スゴスギますってほんまに。
    涙出そうですよこのスケール、壮大さ…。
    そして、連日これでもかと打ち寄せる、ふなきブンガクと写真のうねりに、連日ワイプアウトでビーチに打ち上げられています。

    今、『永劫』に絡んだ原稿を書こうとしているのですが、なかなか、いえ、スケールでかすぎてマッタクまとまりません。
    助けてください(笑)。

    今日、日本が生んだ世紀の大学者、白川静氏が書かれた原稿と出遭ったのでした。
    『永劫回帰』と題された、そのたかがA4一面のみの文章が、あまりにも深いので、深く感銘して、それは公共の場所にあった待合用の書物だったのですが、事務員さんに無理を言ってコピーしてもらってきたのでした。
    事務員さんも偉いさんも困っていました(笑)。

    むむ!?これを今日の原稿にすればいいのですね!
    おおおおお!
    これはスバラシイ展開!
    お導きありがとうございます!

  8. ほんと波いいですね。というかテイクオフの瞬間の写真はは気合いが伝わってきて緊張します。こっちではしばらく大きい波に出くわしてないです。。。

  9. 海と解け合うその刹那のために今日も海に向かうのですね
    私は本当にそう感じられたのは一度きり
    そしてまた海に向かいます

  10. こんばんわ。こちらでは初めてですね。
    『海教』是非わたしも入信させてください!(笑)

  11. pkさん、
    湖面みたいですか?
    ふむふむ。

    むらっちさん、
    波のシステム自体が俺にとっても不思議です。
    季節の変わりはじめですね。
    秋=フォール。
    滝=フォールがシンクロしました。
    すごいな。

  12. go.surfさん、
    そうだったんですか…。
    そんな時にこんな話題ですいませんでした。
    目は使いたくないと思うので、音楽などいかがでしょうか?
    やさしい曲がいいですね。
    私にメイルをいただければ何か送ります。
    読書好きな方でしたら、朗読のCDが発売されています。
    またはこの朗読CDは図書館にずらりと並んでいるはずなので、ご利用してみてはいかがでしょうか。

    とおるさん、
    『永劫回帰』ですか。
    空も永劫、海も永劫で、宇宙もそうなのでしょうね。
    Qちゃんでなんとかやっています。
    ワサビもここにあるんですが、まだ試していません。
    今日乗ってみよう。

  13. dcskさん、
    小文字になりましたね。
    そーです。
    テイクオフする前までは怖くて怖くて。
    けれど、決めてこぎ出す瞬間に全てを無にして、波の中に入ることだけを集中しました。

    よしさん、
    海は何か魔物か神様的なもので、そこで時間を過ごせば過ごすほど、何かを与えてくれるような気がしています。

  14. たけさん、
    海教はいつでも入信可能です。
    信心あるのみです。
    愛ですね。

  15. ひのえうま

    ぉワ??、すごい!
    こんな感じの、自然と海と波の姿と、
    何か(人でも、人工物でも、自然物でも・・)が良い感じのバランスででき上がってる画が好きです。
    ちなみに、いつも思ってるんですが、こんな場合のフォトグラファーは?

  16. この現象も、不思議ですよね!?
    ふなきさんとシンクロ!なんか、嬉しいですね♪

  17. 水しぶきが噴水の様で1枚目はイルミネーション!
    なぜかラスベガスへ行きたくなってきた。

    佳人薄命 お気を付けて!

  18. ひのえうまさん、
    バランスですね。
    こういう時は友人と交代で撮っています。
    または上がってから「3本だけ撮って」とお願いしています。

    むらっちさん、
    シンクロナイズドサーフィンですね。
    ありがとうございます。

  19. じーじさん、
    佳人薄命かあ、だったら死に方を考えないと。
    オーシャンズ6’0"

  20. あっという間に4日間、過ぎてることを、
    このブログで解らされます。。。
    船木のライディングは誰が撮影してるんですか?
    波、めっちゃいいですね、気になりまくりです。
    数枚の波の穴と光の写真、やばすぎです。
    波の写真だけ、という気持ち、諒解です。
    紙質と印刷、最上級でないと無理だと
    わかりました。

  21. kenbokuさん、
    モクレアのBBQいかがでしたか?
    まんがさんは登場しましたか?
    虹に気が付いたのですね。
    一度オバケが割れた時、波のトップに壮大なる虹が出ました。
    潜る寸前にその虹は冥界からお迎えではないことを祈りました。

    波はようやく収まってきました。
    すると今度は南南西から3?4ftがやってきました。
    今週末には12ftの北西が届くそうです。
    すごい冬です。
    風も無風で、島じゃないみたいですよ。
    エルニーニョの影響だそうです。
    写真はセルフタイマーで、嘘です。
    友人と交代で撮っています。

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