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naki's blog

ハワイの冬にサーフするという意味_(707文字、短編です)

何か訴へてゐる。

艶なるあるものを訴へてゐる。

さうして正しく官能に訴へてゐる。

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夏目漱石著『三四郎』1908年(明治41年)

Buey-1 is 10feet @ 14 seconds. 006°(N)

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ハワイの冬にサーフするということは、

「自問すること」

なのだとよくわかった。

目の前に拡がる波の壁。

それがすごい勢いで迫ってくるときに、

俺は何を自分に問いかけているのか?

そんなことを考えていた。

「自分がここに生きている、

そしてもう少しここに生きていたい」

と願い、

そして意識を閉じて暗い海に潜っていく。

それがテン・フォーティンの日であってもだ。

「波はサイズではない」

とあちこちで伝えてきたが、

生き方も、人生もサイズではないのだろう。

潜りながら今朝見た夢を一瞬だけ思い出した。

雲のような波の中に吸い込まれ、

なんとか耐え、息を戻すように呼吸を止め、

波から外れたら上を、上界を目指して泳ぐ。

視界一面に拡がった泡の上で大事なボードを掴む。

海に浮きあがると、ボードの上に乗り、

沖だけを目指して、

「波よ来るな」

と真から願い、無心で懸命に漕ぐ。

やがて目的の場所に到達し、

陸を見やると、俺は遙か遠くまで来ていた。

車、電話、免許書、お金、

食べもの、飲み水までも陸に置いてきていた。

こちらにあるのは、

そら、海、そしてボードと俺。

それだけ。

でも自分で求めた時間がここにある。

よし、俺の波が来た。

艶なる波。

切り立った壁の上から漕ぎ入ると、

動く波面が、ギラリと太陽を反射させる。

「今ここに生きている」

そんなことを改めて知った日。

波乗りって、すばらしすぎる。