何か訴へてゐる。
艶なるあるものを訴へてゐる。
さうして正しく官能に訴へてゐる。
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夏目漱石著『三四郎』1908年(明治41年)
Buey-1 is 10feet @ 14 seconds. 006°(N)
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ハワイの冬にサーフするということは、
「自問すること」
なのだとよくわかった。
目の前に拡がる波の壁。
それがすごい勢いで迫ってくるときに、
俺は何を自分に問いかけているのか?
そんなことを考えていた。
「自分がここに生きている、
そしてもう少しここに生きていたい」
と願い、
そして意識を閉じて暗い海に潜っていく。
それがテン・フォーティンの日であってもだ。
「波はサイズではない」
とあちこちで伝えてきたが、
生き方も、人生もサイズではないのだろう。
潜りながら今朝見た夢を一瞬だけ思い出した。
雲のような波の中に吸い込まれ、
なんとか耐え、息を戻すように呼吸を止め、
波から外れたら上を、上界を目指して泳ぐ。
視界一面に拡がった泡の上で大事なボードを掴む。
海に浮きあがると、ボードの上に乗り、
沖だけを目指して、
「波よ来るな」
と真から願い、無心で懸命に漕ぐ。
やがて目的の場所に到達し、
陸を見やると、俺は遙か遠くまで来ていた。
車、電話、免許書、お金、
食べもの、飲み水までも陸に置いてきていた。
こちらにあるのは、
そら、海、そしてボードと俺。
それだけ。
でも自分で求めた時間がここにある。
よし、俺の波が来た。
艶なる波。
切り立った壁の上から漕ぎ入ると、
動く波面が、ギラリと太陽を反射させる。
「今ここに生きている」
そんなことを改めて知った日。
波乗りって、すばらしすぎる。
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