[フィンレス親方近影]
シンジツは真実と書く。
この真実、世の中にはあふれていて、
広告世界でその字面を良く見ることになる。
例えば、
スピーカーの真実
V37型の真実
カーボンロッドの真実
ストラトキャスターの真実
そんなキャッチコピーが並び、
とかく世の中は真実だらけだが、
重要なのは形だけでなく、
中味、芯を知ろうということだろう。
芯実と表記しても良いのかもしれない。
私の最近はユル波を好んでいるとはここで何度も書いている。
そのために出現したミッドレングスやキャッチサーフなどは、
現在世界のオルタナティブ・サーファーでは主流になっているようにも見える。
ただ、サーフィング界の本当の主流は、
ペラペラのショートボードであるようで、
これはそうではなく、サブカルチャー系での主流ということだ。
そのサブカルチャー系にはいろいろあって、
最近ではフィンレス世界の門を叩き、
新入門生として新しい道場着に白帯の気分だが、
とても愉しく、そして新しい滑走感覚であります。
これはフィンレスビーター師範について修行したNAKISURFハギウダが、
(これはフィンレスビーターで多くの時間をサーフしてきたという意味)
その集大成をフォードアーズで模範実行披露している一コマ。
キャッチサーフ・フィンレスでマンライ(満足ライディングのこと)
を決めに決めて、大満足のハギウダ師範代近影。
ちなみにボードは私のプランク7’
□
ただ、同業者は、
「フィンレスに乗っても良いが、大々的に打ち出すのは止めたほうがいい」
そう言う。
つまりフィンレスボードはフィンを外すだけなので、
新品ボードが売れなくなるらしい。
だが、私は目先の売上よりも、
波乗りの発展を願っているひとりでもあるので、
業界ではタブーとされているフィンレスの紹介に挑みます。(笑)
事実、
@clubfinlessなどのインスタグラムアカウントでは、
メーカーなどのタグ付けが自粛されているようです。
そのくらい純粋なる『フィンレス・サーフィング』。
ここは、デレック・ハインドが、
南アフリカのJベイでやっているような本格的なものでなく、
普段波、
しかも満潮や干潮時の波の良くないときに実行できるフィンレス。
みなさんになぜ、
どんなところがおもしろく、
そして通常のフィン有サーフィングと違うのかをお伝えします。
なので、これから解説文章を書く長い旅に出るが、
あり余るほどの魅力と、
独自なる世界が明確にわかるシークエンスを撮っていただいたのを機会に、
そのやたら文字数がある解説と合わせて、
このフィンレスの魅力を感じていただけたら幸いです。
(これからのキャプションは全て上の写真のためのものです)
まずはテイクオフ。
フィンレスでのテイクオフは速い。
速すぎると、一瞬でボードは波側に流れてしまうので、
速度が付く前に立ちあがるようにしている。
レフトへの進行方向(向かって右)に岬から跳ね返ってきた波があって、
それを越えなくてはならなかった。
跳ね返ってくる横波、
この場合の斜め波も含めて、波乗り界では『ウェッジ』と言う。
そのウェッジを越えた瞬間に、
ボードは波壁に向けて滑り始める。
波壁を良く見るとわかるが、
私のテイルの先から、
進行方向に見えるおよそ3m幅のデコボコ起伏がウェッジのそれである。
最後のコブを越えると、
本フェイスがせり上がってくるので、
速度が増すことに備えて、
両手でボードを掴み、体勢を低くした。
来ました来ました最後の段。
これを過ぎると、ボードは瞬時に底に落ちていく。
さらには波のピークが前方からやってきていて、
自分が思っていたよりも切り立ちそうな波上。
じつは絶体絶命の瞬間であった。
(こういう些細な波を感じることも魅力なんです)
終わりだと思っていたが、なぜかまだウェッジの段は増え続け、
ため込まれた波が切り立とうとしている。
そこで内側のレイルだけを使い、
ブレーキをかけようと、内側の手を離した。
だが、
ブレーキをかける前に波内に滑り降りなくてはならない。
よって、外側のレイルに加重していく。
これはフィンが付いたサーフボードでは存在しない事項だ。
再びデコボコと迫るピークが一緒にやってきて、
一瞬でボードはテイルから流れていく。
しかし私は用意が良いので、
この瞬間に後ろ、つまり波側のレイルを立てて急ブレーキをかけた。
(これもフィンがあるサーフボードでは決して存在しないこと)
ブレーキ成功。
波の中に降りすぎずに止まることができた。
流れたテイルの影響で、
ボードが180度反転し、
テイル側から滑走が始まろうとしている。
これまでは背中側に集中していたが、
ここからは右足(私にとって逆足)が進行方向を向く寸前の一枚。
無重力状態その①
この逆向きのおもしろさがフィンレスの魅力であります。
スノーボードやスケートボードでのフェイキーがこれに同等するだろう。
あちらもフィンがないからフィンレスの仲間か親戚なのだと今知った。
一般生活ではなかなかこういう機会もないから、
興奮する瞬間でもありました。
ウェッジの最後にボードが合わさったので、
ピークに合わせて、今度はライト方向に進む。
テイルを前に、
背中側のレイルを今度は逆向きに進むように立てる。
(満潮バックウォッシュで)
突然波が弱くなったので、体勢をさらに低くする。
そのバックウォッシュが去った。
前足、
この場合は逆に向いているので、
普段後ろ足である右足を加重し、速度を上げていく。
今までの波乗りでは存在しなかった愉楽の瞬間であります。
振り落とされないように両手でボードをつかみ、
進行方向を向いていく。
速度を付きながらこのクロスオーバーセクションを通過。
フェイキー人生。
もっとレイルを立てて、
さらに速度を上げる。
思ったよりもセクションの距離があったので、
レイル加重を強めて、脱出速度を確保していく。
ずっとキャプション不要だったが、
ついにセクションの出口に到達した。
立ち上がっていく波壁。
だが、件のウェッジがまた跳ね返ってきた。
ここはウナクネ流派独特の
「クネクネムーブ」を入れて、
メジャーとの差別化を計る。
あ、でもフィンレス自体がメジャーではありませんね。
クネクネ。
クンネクネ〜。
浮かんだのが、
クネらない
クネろう
クネろ
クネります
クネる
クネれば
クネるとき
動詞のカ行五段活用。
(またはラ行五段活用:校閲ベンチュラセイジ)
しかも未然形まで網羅しているのは、
中学生でなくても喜ばれるブログとなった。
サブカルバンザイ!
ここからついにフロントサイド側に向こうと思い、
テイル側を踏むように加重する。
滑らせながらの加重、
しかもウェッジとバックウォッシュで波面が荒れているから、
それに合わせてレイルを立てたりもする。
野球でもなんでも球技は「ボールをよーく見て」とあるが、
波乗り界でも「波をよーく見て」という原則を実行する。
こんなサイズでもスリル満点。
なので私は遊園地いらずであります。
方向が戻ってきた。
野球は打った場所(ホームプレート)に戻ってくると、
得点になるが、波乗りは始まった向きに戻っても得点にはならない。
当たり前か。
ここでも前半と同じく、
ウェッジ後に波壁が切り立つだろうから、
今度は逆向きに背中側のレイル加重で、ブレーキの準備を。
行きすぎるよりは、
カットバックのようなアクションがこのセクションには望ましいので、
そのまま背中&後ろ足荷重していく。
内側の手を入れて、
テイルを滑らせよう。
ここでとても大切なテクニックを授けます。
『ボードの中央よりも波側にスタンスすること』
これでフィンレスサーフィングはかなり安定され、
そして結実するのであります。
写真のように、
ほぼインサイド(内側)レイルに加重し、
波側に入れた手でそのままテイルを滑らせていく。
ものすごいGが体を襲う。
モーターサイクルならヘアピンカーブのクリッピングポイントだろうか。
そのGを耐えると、
ボードは吹き飛ぶように波の外に弾き出される。
かなりの興奮。
そのままだと本当に吹き飛ぶので、
勢いを利用してノーズを波の中に入れてしまう。
そうすることによって、
強烈なブレーキとなり、
さらには波の下に行かずに波内に止まることができる。
波の下に行ってしまうと、
後は失速して泡波が来るのを待つだけという受け身状態になるので、
通常のフィン有サーフィングもそうだが、
常に波の中にいるのが最良であります。
ノーズを波に差せば、
自然にテイルが躍進するのは自然の定理。
無重力②の瞬間。
しかも1本の波で2度目の無重力。
これもフィンレスの醍醐味。
緩斜面での背面滑走。
フェイキーくん、再びようこそ。
じつはこれ、
かなり難しいのだが、沖からここまでフィンレスで乗ってくると、
体の感覚が発達されるようで、不思議と難しくはない。
同じように後ろ向きで、ライトの進行方向を選択。
フェイキー時代全盛。
ここもメイクしました。
今までと同じ向きと加重だが、
違うのは泡波が後ろから迫っていること。
泡はやっかいなので、
慌てず騒がず、そのままの姿勢を保とう。
さらにはノーズとテイルを入れ替えられるニュートラル位置の体勢に。
そろそろショアブレイク。
しかも玉石ぎっしりの満潮丘が迫ってきている。
フィンレスでむずかしいのがキックアウト(プルアウト)。
波の中に入るモメンタム(慣性)で乗ってきているので、
このくらい速度が付いていると、
ワイプアウトでもしない限り、波から外れることはない。
しかし、
上記してきたテクニックがあれば、
波から外れるのは簡単です。
ここがいわゆるニュートラルポジション。
ニュートラ、ハマトラのそれではなく、
『中立の」という意味であります。
ニュートラル位置から波側に手を入れ、
それを支点とし、さらには体全身を波側に倒す。
「うりゃ」
こんな感じの弱すぎず、強すぎない加重を与えたら、
テイルは見事に抜ける。
ここから1秒ほどそのままでいると、ボードは波から外れます。
波から外れたら、
そのまま後ろ向きにパドリングの姿勢となります。
これで完全終了。
うまく説明できているといいのですが、
フィンレスの愉しさが詰まったライディングです。
ご存じのように特製フィンレスボードがあった方が、
バイト(引っかかり)があるので簡単になりますが、
私のようにキャッチサーフのフィンを外すのがコスパ高いです。
最初はワイプアウトの雨だと思います。
なのでぶつけても怪我をしづらいキャッチサーフ。
宣伝ではなくそうなんですよ。
もちろんどんなボードでもフィンを外してしまえば、
フィンレスになるので、
波が弱かったり、
波的に前向きになれないときは、
このフィンレスサーフィングをお持ちのサーフボードでお試しください!
新世界突入です。
いや、新章か。
◎