ゲートを上げ、またさらに進み、突き当たりを右に折れると、そこは岬の先端だった。
下を覗きこむと、ポイントに沿ってレフト(グーフィー)波が崩れていく。
そして波の最後は向かい側から崩れてきたライト(レギュラー)と結合し、ワイルドなエンドセクションを形成した。
その一部始終を見たみんながエキサイトしはじめた。
突然、入り江の奥にある部落から大きな黒犬が吠えながら走ってきた。
「やばい!」
こちら側からは黒犬ウイリーが立ち向かっていく。
両者(両犬)が重なると、彼らは親密にお互いをなめはじめた。
「?」
「アンディ(大きな黒犬)はウイリーのお母さんなんだ」
飼い主チャドがうれしそうに説明する。
胸をなで下ろし、もう一度海に目をやると、岬の沖に点在する大小様々な岩の上で形のいい波が崩れているのだが、追いかけると全ての波のライディングライン上には必ず岩が出現してしまう。
「あそこは8フィート以上ある西うねりならサーフ可能になるよ。でも俺と友達以外誰もサーフィングしたことがないはずだ」
と案内人チャド。
「ここは何という名前の場所なんだ?」
ドノバンが聞く。
「『ミセス・ジョンソンズ』。そして岬の先が、『ミセス・ジョンソンズ・リーフ(岩棚)』。この下のビーチブレイクが『ミセス・ジョンソンズ・プレイグラウンド(遊び場)』。で、この崖の下のレフトが『ミセス・ジョンソンズ・ロックス(多数岩)』というんだ」
そのジョンソン婦人は誰かは知らないけど、キャラクター色が強いネーミングがなんとも洒落(しゃれ)ている。
待ちきれないベーンがもうウエットスーツに着替えている。
ドノバンもサーフボードにワックスを塗り始めた。
俺もウエットを着て、水中ハウジングを密閉し、浜に降りたところでドノバンが最初の波に乗った。
崖にあたってウエッジしてくる波がなんとも楽しそうだ。
ベーンとアドルフはライト側のピークにセット。
チャドは砂浜で犬たちに囲まれながらストレッチング。
ブライアンは岬の先端に望遠レンズを立てている。
朝日の豊富な光と、凪ぎいた風の中を幸せにサーフィング。
真横を走り抜けたドノバンのレールからシュタッターと水切り音がうなる。
2時間ほどゆったりと時間が過ぎた。
風が北東からタックインしてきたところで一度上がることにした。