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【サーフィン研究所インタビュー】タイラー・ウォーレン2021_(2862文字)

年間数十本ものサーフボードに乗っていても

パドリングした瞬間にマジックボードだとわかるものは稀だ。

その魔法の板は一年経っても評価は同様だった。

ちょうどそんなとき、

『人生で一番のマジックボード』という稿をいただいた。

マジックボードの創造主であるタイラー・ウォーレン。

彼がかける魔法についていろいろと聞いてみた。

以下はそのやりとりである。

     

【人生一番のマジックボードの報を受けて】

〈タイラー・ウォーレン:TW〉

やはり。純粋にうれしいなぁ!

65(シックス・ファイブ)、2+1だね。

あれをデザインしていたときから気に入ってくれることはわかっていたよ。

基本はベーシック・アウトラインがあり、

あなたのスタイルを加味してボードのフォルムを決定させたんだ。

〈聞き手:N〉
そうだったのか!なんだか光栄です。

〈TW〉
『ボード一本だけの旅』をするセオリーで、

さざなみ系の小波から重いバレルまでもをしっかりと乗れるボードがテーマだったね。

〈N〉
よく覚えているね。その通り!本当にありがとう。

究極の一本になりました!あなたにとってもワン・オフ・モデルの創造でしょう。

〈TW〉
イエス!

〈N〉
具体的には、どんなイメージであのボードをデザインしましたか?

 

〈TW〉
とにかく基調は、シンプルなアウトラインがあって、エッグ・ボードというフォルムだね。

〈N〉
エッグとは思わなかったよ。古典からログまで引き出しがたくさんあるタイラーならではの発想ですね。

〈TW〉
もちろんさ、エッグ系は古典でもあり、サーフボードにとって基調だから当然のことさ。

〈N〉
あのボードの詳細というか、特徴をお願いします。

〈TW〉
エントリーエリア(前足部分に相当する)はシングル(コンケイブ)で、

スパイラルVeeで抜けていく。ラウンド・テイル、ソフト・レイル。シンプルそのものさ。

〈N〉
シンプルがいちばんだね。

〈TW〉
完璧というよりは、感覚的には、それぞれが総合的に結実したと感じています。

このモデルには、

柔流体ロッカー(mellow fluid rocker)という反りが付いているはずです。

〈N〉
絶妙の浮力とバランスでした。この場合の精妙って、なんと言うのかな?

ファイン、デリケート、サトゥル(subtle)そんなレベルですごくいいんだよ。

〈TW〉
ありがとうございます。

アウトラインからの長さが決まれば、厚みから浮力を求めました。

スパイラルVeeとフィン周りに注目し、そこからの出力が大切でした。

〈N〉
出力?

〈TW〉
水流はテイル付近に集まります。

〈N〉
はい。

〈TW〉
その水流由来の揚力があり、その加減で、リフトというか、ターン角度の方向性は決定されるんだ。

〈N〉
リフトからの方向性を気にするのは、タイラーがサーフィンを知り尽くすからこその言葉だね。

〈TW〉
サーフィンを知り尽くすだなんて、私はまだまだです。

ですが、そのリフトは波に乗るからこその感覚なのは間違いありません。

〈N〉
「このくらいレイルを寝かせて」みたいなことだよね。

〈TW〉
そうです。

〈N〉
ボードのアウトラインや水流について教えてください。

〈TW〉
イエス。ソフトレイルでありながら、私のどのボードにも水流出口にはエッジが付いているはずです。

けれどその答えはアウトラインがあって、水流があるという考えです。

N〉
なるほど。シェイプする際にはすでにデザインは決まっていると思いますが、

そんなリフトみたいな詳細なる表現こそが、タイラーのサーフボードには重要だと考えますか?

〈TW〉
いや、そうではあるし、そうではないです。サーフボードにはさまざまなことが重要なんだ。

視点であり、方向だったり、大きなことから細部だったり、リズムというか起伏を感じて作業していくんだ。

〈N〉
他には何を考えますか?

〈TW〉
うーん、いろいろだけど、

例えばトム・カレンなら昨日のローワーズをどう乗るのか、

彼が乗ったら?そう膨らませていくかな。

そしてストール、アクセル等いろいろだよ。

〈N〉
なるほど、そうですよね。

アクセルというのはもちろんですが、ストール(失速)ということに興味が湧きました。

〈TW〉
ストールというのは、悪い意味で捉えられがちだけど、そんなことはない。

これを使って斜面を切り立たせたりもできる。

〈N〉
波の上で切り立つのを待つということですよね。

〈TW〉
イエス。

でね、このストールがノーズライドの距離を出したり、バレル内は加速と同等程度で活躍するんだ。
トップにコミットするときも速度を得たくてストールをするときもある。

〈N〉
トップに行くのに失速させるのですか?

〈TW〉
ウィ(イエス)。ボトムターンの前のことです。

あそこでストールさせ、斜面の切り立ちを待って、急斜面を降りて行けば、容易に速度が出る。

それはまたトップへコミットさせるための範囲と可能性を高めるものでしょう。

〈N〉
なるほど。その通りだね。

フィンのセット・アップはどうやって決めましたか?

〈TW〉
私はかねがね2+1が最も汎用性の高いフィンシステムだと公言しています。

〈N〉
もちろん知っています。それは乗り手にとっての汎用性ということですか?

〈TW〉
そうです。

例えば、このクラシカルなアウトラインのサーフボードに2+1というフィンをセットすることによって、

さまざまなターンを可能とし、そしてさっきも話したアクセレーションの関係を保ち、高い操作性を支えます。

〈N〉
それでは、あのボードに乗れば、私でもマイケル・フェブラリーのようなターンが可能になりますか?(笑)

〈TW〉
笑。もちろんです。それと、シングルボックスとFCSサイドにしたのは、他国での互換性ということも考えました。

〈N〉
シングルボックスとFCSがあれば、どの国に行ってもどちらかは手に入るね。

〈TW〉
完全なフィンが見つからなくてもサーフィンはできるでしょ。

〈N〉
旅先でフィンの全てを失ってしまったとしても、

最終的にはシングルフィンスロットがあれば、

適当なものを見つけてそこに接着しちゃえばいいしね。

〈TW〉
木片を見つけてきて、のこぎりでフィンの形にしてくっつけちゃえみたいな。

〈N〉
笑。サーフィンって楽しいね。

〈TW〉
スピード、パワー、フロー。 全てがあるものって(サーフボードのこと)あるよね。
Speed , power n flow. Something that works in everything.

〈N〉
この6’5”-2+1 に乗り続け、サーフィンがもっと楽しくなり、そしてすばらしい波に乗ることができました。
ありがとう!
I continued to ride that 6’5”-2+1 felt enjoyed surfing more and was able to ride the amazing waves. Thank you!

〈TW〉

タイラーは、

トム・カレンとメキシコ・トリップに行くのを毎年心待ちにしている。