〜4号までのあらすじ。
1970年代、
ノースショアに住む主人公は、
タウンに向かう途中で知り合いの美女と会い、
一緒にタウンに行くことになった。
5.
1964年、
ハワイアン・ミュージックを中心に選曲するKPOIラジオでは、
“アメリカ合衆国は、
煙草は健康にとって有害だという警告を、
パッケージに印刷する決定を連邦商業委員会が発表した” と、
男性のアナウンサーは言った。
ぼくは手をのばし、
ラジオのスイッチをオフにした。
「3年ぶりにばったりと会えるとは」
「うれしいわ」
「ぼくも、うれしい」
「元気そうね」
「とっても元気さ。
きみはいちだんとステキだね。
でもなぜオアフにやってきたんだい」
「オアフの波が乗りたくなったのよ」
「たとえば、どこの?」
「そんなことは何も考えていないの。
いつもと違う波に乗ってみたくなったの」
「カウアイ島以来だね」
「あのときは、とても楽しかったわ」
「さらに波乗りに夢中になったよ」
「私もそうよ。
サーフィンは本当に最高ね」
「最近は特に調子がいいんだ。
良い波が見えるようになってきたんだよ」
「へえ、ステキね」
夏子はいまマウイ島に家を借り、
そこにひとりで住んでいるのだと教えてくれた。
その家はパイアの奥にあるという。
パイアはノースショアでヒッピー・マインドだったり、
アロハ精神をもつ人が多いのよと、
夏子は説明してくれた。
ハワイ諸島でもっとも風が強いとされるホキーパ海岸が近くにあり、
そこから東側の、
渓谷のそばだと夏子は言った。
(6に続く)