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【Blue.巻頭コラム2024年5月号】_三密という世界観(The three secrets)

Cosmos Surfboards TheOne6’4” Groovy Fins Twinzer Shape, Design and glass by @hiroyuki_maeda

前回は、

ここにバックドア・シュートアウトのことを書いた。

すると、

その主役のひとりである堀口真平くんから感謝のメッセージが届いた。

彼はあのイベントに出場し、

バックドアのバレルをメイクした主役の一人だ。

私の書いた文脈は、

真意は間違っていなかったのだと祝杯を上げた。

春となり、

海がにぎやかになった。

「夏日」

はかなりの確率で予測できるらしく、

多くのサーファーがやってきた。

サーファー・スタイルにもいろいろあるが、

多く見られるのが『コンテスト崇拝型』だろうか。

WSLなどの順位が気になり、

ターンやムーブメントを極めようとしている。

次は、

『そのコンテスト系にルール&マナーは寄りつつ、

進歩はあまり望んでいない』

そんな人たちだ。

狙いのサーフ・ブレイクは波情報の点数で決め、

上達はあまり望んでいないが、

見た目は大切で、

同調を善しとし、

多くの人が使うものを好む傾向にあるようだ。

市場調査でもわかるのだが、

人気を重要視する傾向があるようで、

競技こそがピナクル(トップ、頂点)だと思いこみつつ、

辛い修練などはしないというスタイルだ。

私は競技派からソウル系、

つまりフリーサーフという水域に転向した。

競わずに楽しむことをモットーとしている。

よって、

古式ボードの難度も受け入れるし、

多様さにも目を向けている。

少人数という環境を得るべく、

無名スポットに向かい、

独自のターン&トリムを展開し、

目指すサーフィン道を邁進(まいしん)している。

閑話。

日本にいまも伝わる仏教は、

空海が唐国から持ち帰った密教によって転換期となった。

その骨格のひとつに

「三密(さん-みつ)」

というパワフルな定義がある。

これこそがサーフィン世界を明確に表現しているので、

ここに紹介したい。

要点は、

身密、

口密、

意密という三世界だ。

空海によると、

身体と言葉、

そして心ですべてが成り立っており、

この境地を感得すると、

宇宙と自己が一体化するというので、

このことをサーフィンに置きかえてみた。

波に乗るアクション=身密
言霊に代表される波動思想という創造=口密
波という森羅万象=宇宙の法則=意密

私たちは、この3つの理法によって生きている。

のみならず、

宇宙もそうあり続けている。

とすると、

この世界=理法を知ることによって、

進むべき道の方向が見いだせるはずだ。

サーフィンもひとつの宗教であるとすると、

愉楽だけではなく、

苦闘があり、

もちろんその果てもある。

修練場である各サーフ・スポットは、

混沌とした多神教の場なのだ。

このことを念頭におけば、

私たちはどんな思想であろうと、

お互いにうまくいくのではないかと気づいた。

いまは宗教の押しつけみたいなのがあるから軋轢(あつれき)が生じている。

この不和はサーフィンには不要なものだろう。

だが、

人生修練という観点から見ると、

こういったものは常に障壁として存在するのかもしれない。

そこで、

ジェンダーフリー、

ジェンダーレスという言葉が定着したように、

サーフィン界でも違う派を敬って尊敬すれば、

よりすばらしいサーフ世界になるのではないだろうか?

そんなことを春の、

美しい日にしたためてみた。

(了、2024/04/12)