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コラム 【森羅  shin-ra】 2003年作

”彼はいつも海のことを「ラ・マル」と思っていた。それは人々が愛をこめて呼ぶときのスペイン語だ。ときには海を愛するものでも海を悪しきざまに言うこともあるが、いつでも海は女であるかのように語るのである. . . . 。老人はいつも海を女性と考え、また大きな恵みを与えたり与えなかったりするものと考えていた。たとえ荒れ狂ったり、禍いをもたらしたりしても、それは海にはどうしようもないことなのだ。月が人間の女を支配しているように、海も月が支配しているのだと思った。”——-ヘミングウエイ、老人と海(1952/9/1)

暑。

陽が傾き、視界全てに色づく、穏やかで柔らかき暖色。

それはやがて陰り、大きな、薄い橙色を染みこませた満月が左手から登ってきた。

「ズバン!!」という音を発するショアブレイクの炸裂。まるで砂浜は波に怯えているように震えている。

蒼くなった海が、そらと混ざり、同化し始めた。

生命が詰まった空間、インスピレーション(霊性)の訪れ。

次々とやってくる霊性に、意識は天地創造まで遡(さかのぼ)ろうとする。

遥か遠き昔。

宇宙の拡がりは過去だという。数万光年離れている星の瞬きは、その距離と同じ遠い過去の光にしか過ぎない。

星間の闇、深さが怖い。

それは「死」と関係しているのだろうか?と暗さを畏(おそ)れ、あるであろう終着点に悟り、迷い、覚悟する。

波は寄せ、返し、海は蒸発し、雨雲となり、地に水分を落とし、生命を育む。雨は集まって河となり、海に注ぎ込む。

永遠回帰の繰り返しの中で、私たちは微かな息をしている。

生はときに優しく、ときに厳しい無数に起きる様々なドラマ。

森羅万象。

この世に存在する全てのことを理解してみたい。

波、海を通して知ったことは数多くある。

その邂逅(かいこう)に感謝し、眉を開く。

すると、さらなる新世界に足を運び入れる。

永劫(えいごう)に続く千古不易(せんこふえき)なメッセージとは何だろう?

そのメッセージはきっと何億、何兆もある、不変の解答か。

陽は昇り、雲と水平線を浮かび上がらせた。鳥群が山陰から現れて、砂浜の上を飛んでいる。

サーフボードを抱え、波と交わる。

波に滑り込む瞬間に俺は何を感じるのだろう、何を感じられるのだろうか?

海を愛する、その意味を知りたい。

■(了、8/14/03)