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naki's blog

飢える?_1000円が2万円価値説_(2333文字)

こちらエルサルバドル。

ようやく波が小さくなってきた。

夜明け前から何本か波に乗り、

大好きなアボカド朝食。

おいしいアボカドは安価で、

今日も紙袋いっぱいでたった2ドルだった。

アボカドをただ半分に割って、

何もつけずにそれをスプーンですくって食べる。

こんなシンプルフードが体調を整えるようで、

やさしく体の中に入っていく。

カリフォルニアの日系書店で購入した雑誌

『ニューズウイーク』でワーキングプア、

つまり働く貧困層という記事を読む。

それには、

「週に短時間しか働けず、家賃を払えずに飢えていく若者」

とあった。

日本で飢える?

本当?

と疑問符がふたつ付いた。

だって、

今はどこにでも求人の張り紙がしてあり、

働く気になればいくらでも職がある日本だと思っている。

今いるここは、

発展途上国そのものであり、

国からも保護は何もなく、

闇夜は危険、

そして病気になっても金銭的な理由で医者にかかれない。

いわばこの国全体が飢えているようだ。

この地を一瞬だけ通過している私のような旅人が書くのもおこがましいが、

少し気になったので以下は私見として綴らせていただく。

前にも書いたが、

「両足がない男が、両肘を使って這ってきて、

こころから乞うように

ーー哀しい目でーー両手を俺の前に差し出した」

少なからず驚いた。

俺は当然のように持っていた小銭を全て彼に差し出した。

そして「温室育ち」の自分はああなったとき、

彼のように路に出て物を乞えるのか?

と問うと、

そんな勇気はもちろん、

この熱帯の不快な湿気と、

うだるような暑さに俺はきっと生きていく気力すらなくなってしまうのだろうな、

と、自身のか弱さを知った。

とすると、

その飢えるワーキングプアの人たちは一度発展途上国に来て、

「生きていく」という熱き使命を知るといい。

されば、どんな仕事もあるだけ良い、

または土でない床がある幸せ、

水道水が出る爽快さ、

電気が使える便利さ、

雨が降っても濡れない家がある、

激烈でない気候がある、

夜間襲われない安全がある、

という幸せに気づくだろう。

田舎暮らしがいい、

と騒がれているが、

田舎は田舎の不便さがあって、

それを受け入れてからようやくその暮らしを愛することとなるのだろう。

ここでは何日間も波の良さを書いたけど、

吐きたくなるような下水の匂い、

いつまでも乾かない床や、

雨漏りでずぶ濡れになった寝床のことは書かなかった。

けれど、

ここで旅の幻想を打ち消すためにこんなことを書いてみる。

すると、

この波がまた輝いて見えてきた。

生きていることの価値を見いだすような旅。

4週間前に来た前回の旅では朝陽に溶ける斜面を感じ、

その豊かさについて触れた。

今回はこんな足が汚れるような旅がしたく、

やってきて実際に足を汚してみると、

その汚れがいかにオーガニックなのかを知った。

良い意味でも悪い意味でもだ。

そんなことを考えていた。

家に戻ると、

宿のマネジャーのチャーリーがやってきた。

彼はサーフィンが大好きで、

目を輝かせて毎日乗っている。

だぁ〜

うれしすぎる彼がライムばかり食べている口でキスをしまくるので、

カーボンファイバーが溶けてきてしまった。(嘘です)

にわか雨が通って、

すごい音と湿り気と涼しさを運んできた。

午後からはお気に入りの洞窟バーにデザートを食べに行く。

さきほど貧困の話をして、

こんなホットケーキが400円もする店に行ってしまうのは論点がぼけるが、

旅は忙しいからか時間毎に別人格になるようで、

その贅沢な感覚に眉を開いてしまう。

↓これが噂のおいしいホットケーキ。

洞窟バーはエアコンの爽快さに浸り、

文明人であることを恥じるが、

その気持ちよさにうっとりしながらラム酒がたっぷり入ったピニャコラーダを飲む。

500円もするが、

やはりこの価値は、

エルサルバドルでは道路工事人の日当と同額だ。

このバーで亮太くんとこの国の物価計算について提議したが、

ここは日本と比較してちょうど1/20であるという計算が正しいようだ。

5000円は地元の人にとっては1万円であり、

すると5円のププーザ(お好み焼き)が100円であることに気づいた。

とするとこのポケットに入っている20ドル札は4万円札に等しく、

とすると、

宿が10ドルであることは決して安いわけではなく、

2万円の高級値だと納得する。

白人の多くが泊まっているエアコン、

朝食、

温水シャワー付きの高級ホテルは、

一泊60ドルであるから地元の人には一泊12万円もする価値なのだとわかった。

しかし、

アメリカ人にとってはバケーションで家族が一泊60ドルとはバーゲン並に安く、

いわゆるセレブ旅をここで楽しんでいるようだ。

貨幣価値が違うと、

こんなコントラスト(著しい対照をなすもの)が登場し、

そこからビジネスが発生している。

一昨日見かけたのが、

白人の女の子にダブルオーバーのスープ波でサーフレッスンをする地元サーファー。

彼は教えると1時間で10ドル、

つまり彼らの価値で2万円になる仕事なので、

「波が大きすぎる」と言って断らないのだろう。

前出したチャーリーが、

生徒を連れてインストラクターたちが浜を歩いているところを見つけたので、

「ヨー、アサシンー(殺人)」

と野次っていたのが記憶に新しい。

結局この白人の子は腿から足首までをリーフで傷つけ、

血だらけでボードを抱えて帰っていったが、

報酬の10ドルは払われたのだろうか?

と気になった。

とまあ、

こちらのビジネスは日々こんな調子だ。

だからあまり憐れむことはなく、

熱い彼らの日々は今日も明日も続いていくのだろう。

今日のブログ、これにておしまいです。

いつもも読んで下さり、ありがとうございました。


8 thoughts on “飢える?_1000円が2万円価値説_(2333文字)

  1. 橙雲紫月

    勝手な解釈をお許しいただくと、自分の軸探しの旅に出かけ、五感を研ぎ澄ませて、言葉に発するNakiさんの二元論に共感を覚えます。また、批判の対象に自分も含める客観性、内省力に敬服します。「行き」続けて夢と現実をこれからも投げかけてください。

  2. のり

    飽食の国に生まれ、何不自由もない暮らしの中で育ってきた、自分の行き方を見つめ直す事が出来ました。
    何事も、足るを知るって事が大切ですね。。

  3. BD3検討中

    人間としての基本的なところを再確認させていただいた感じです・・・・平和であることのありがたさと豊か過ぎる生活におぼれる愚かさを常に切り分けた意識を持たなければと痛感しています。こちらでは体験できないブログをありがとうございます。
    日本も30℃に迫る暑さになり、デスクワークをしながら暑いからとエアコンを入ようとする自分にブレーキをかけました・・・・

  4. おいなりさん

    Lala, how the life goes on, bro…

    こういうのって知っているのと知らないのとでは大分違いますよ。やっとようやく鎖国主義国日本から国際化への一歩を踏み出した感あります。まだまだ世界平均的マナーには及ばないけど徐々に追いついていってます。果たしてこれが良いのか悪いのかは風のみぞ知るって感じですが。

    開国するのが良いのか、鎖国するのが良いのか、社会主義が良いのか、民主主義が良いのか、アメリカが良いのか、アメリカが悪いのか、自分はどうなのか?こればっかりは答えが出ないです。

    そこで割れている波は間違いなく真実だと思います。Enjoy da ride.

    Cos, only the surfer knows the feeling.

  5. ふなき

    じつは俺も何が悪いのか、良いのか決めあぐんでいます。
    二元論しかり、飽食、平和、民主主義、さまざまな論がありますが、人間のもつエネルギーをコントロールすればああなり、しなければこうなる、ということでしょうか。
    波乗りとはエンターテイメントでもあり、しかし、これがあるから俺を遙かなる地まで導いてくれることである。
    そうやってなんとか自己肯定しながら旅を続けていますが、たまにこのように精神的に台風に遭ったようにうちひしがれます。
    でもそんな時思うのは、誕生国が先進国で良かったなあ、ということ。
    パスポートにはICチップ、懐には豊かな貨幣、そんなことがあるからこんな考えにもなるのでしょう。
    ある意味ぜいたくです。

    まあ、2008年5月、みなさんの、そして俺の旅はまだまだ続いていきます。

  6. t

    日本は、特に。
    で、そこに行きたいって思います。
    洞窟バー、惹かれますね?、特に!