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昭和45年文体ボツコラム『或る夢の不思議』全文掲載です_アイランドキックアウト_(1926文字)

夢に見た鮮やかなバレル。

突然、文意がやってきた。

「よし、BLUE誌の原稿を書くぞ」

とワードを開き、

背筋を伸ばし、白紙に向かって

「バレルの本質を理解しようとすると、

深遠なる宇宙に行き着くだろう」

とタイプしてみた。

実行を押して、一度コーヒーを飲んでから読み直すと、

まるで昭和45年頃の文体であることに気づいた。

そのまま書き進めてみる。

[注:旧仮名遣い]

(提供はJR上総一ノ宮駅前、

名糖食堂の昭和48年復刻ワンタンメン)

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『或る夢の不思議』

.

夢のなかの鮮やかな、

それでいて不思議な情景を伴つている幻。

夢の織り手は波の、その斜面を織り出していく。

自身の望む高さ、そして角度と温度、速度。

波壁はどこまでも長く続き、進行方向の先は深淵で、

織り手はいつのまにか波の乗り手となつて、

そのどこまでも続く斜面を乗り続けていくのである。

乗り続けていたはずが、いつのまにか泳いでいて、

はて、夢の織り手であるはずだつたが、

夢は独創性をもつて独立を始めたようで、

些細な不思議さ、理不尽さを抱えたまま深み、

つまり困難に向かつていく。

奇妙な海中生物たち、突然滝のように落ちる海溝流。

この夢の真実も、そして終着点も見いだせないまま、

突然覚醒して目を覚ました。

というより脱出したというのが正しいのか。

この夢の中に提示されていたのは、体験の具体的事実と、

己の精神力の弱さ、不確かさだろうか。

ただ、深淵まで続く波のリアリティが本物の波にあつて欲しい。

そして波の最後は、

空の上にある暗黒の宇宙に続いていて、

海も空も表裏一体であるということを知つて愕然とした。

想像力の中に自身の秘密が多く潜んでいて、

逆説や混沌、不安という要素が根のように拡がり、

私はその根から不安要素を養分として吸い上げながらも

希望や願望を茎のように屹立させているであろうと推測し、

この多様なる精神の姿勢がさしずめ葉脈だと定義してみると、

架空の私は空高く、雲を越えて、また暗黒宇宙にまで出て、

自身がいるこの青き天体を俯瞰しているような錯覚に陥つた。

「想像力とリアリティ」

という反極する構造に支えられた世界に生きていることを再び知り、

昼間から波の夢を見て、夢の秘密を誰にも話すことのないまま、今日を過ごすのであろう。

だが、このリアリティを保証するものは何もない、今はない。(了)

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俺は酔っぱらい過ぎているのか、

昭和の作家が憑依したのかはわからないが、

こんな文章がここに書かれた。

文章とは、こんな奇妙な実体験をもたらすもので、

なんとも不思議で、

タイムスリップした白日夢みたいなコラム。

無論ボツだが、

アベンタドールJの林編集長にはお見せしないで、

ここで公開しつつ、

これから別の読み物を書いてみることとします。

次は平成文体が憑依したらいいな。

上のバレルは、

わかる人にはわかるが行き止まりです。

行き止まりのとき、

そして波が覆い被さってきても波裏に出られるターンを伝授します。

簡単なのでこんな波の日にやってみてください。

体が浅瀬に行かないので安全な波乗りとなります。

まずは波のトップから脱出するには切り立ち過ぎていて、

クローズアウトと見切りました。

ボトムターンを波の裏側、

つまり上ではなく、波腹中部に向けて強くします。

波側の腕を斜面に入れ、

ターンの回転半径を狭めます。

この腕が割と重要のようで、

波の中でも挙動を安定させてくれるので、

しっかりと壁の中に突き入れましょう。

抵抗を小さくするために体を小さくし、

ターンを続けます。

ちょうどこの位置で中間程度、

ターンの頂点、

折り返し位置と認識してください。

そのまま自身、

サーフボード全ては波の中に入ります。

波の裏に回ると、

ノーズから海面に現れるので、

速度を落とすことなく、

ターンを続けてください。

自分が浮かんできたら終了です。

パドルの姿勢に戻って沖を目指してください。

同サイズの波が来ていても、

喰らわずに軽く越えられるはずです。

このターンは、

通称アイランドキックアウトと言います。

ロッキーショアは、

バレルセクションの先(陸側)が浅く、

岩場なのでこのターンが使えると、

かなり楽に、

そして楽しく安全にサーフできますのでぜひ。

サンクレメンテは30度を超えて真夏日となり、

夕陽も夏のようにグリーンフラッシュを光らせました。

明日も夏日。

いい週末です。

さあ、原稿を書こうっと!

読んでくださってありがとうございました。

ちなみに父が大正生まれということもあって、

大正文学も大好きです。