そこには闇の中に高く昇った月だけがあった。
右手には岬が突き出し、
松がシルエットとして浮かび上がり、
その曲がりくねった枝は水平線に向かって伸ばしていた。
ほぼ満月に近い月が、
少しずつ大きくなって、
山吹色をふわりとまといながら下に降りてきている。
夜明けが近づいてきているようで、
闇に近い蒼の中、桃色の層を付け始めた。
岬の先。
海が動いた。
海の上の線状のものはうねり群で、
切り立ってきた波は、
月からの山吹色をたっぷりと含ませ、
壁をたわませ、弾け、その横に斜面を伸ばした。
それを追っていると、白いものが波の中に光った。
波上に付けられた軌跡(トラック)が月光を反射して、
曲線や直線をきらきらと輝かせている。
それはまるで波が生命という実体を受けて、
そしてそれが通り過ぎた後に官能的な響きと、
あらゆる伝言を天に向けて送っているかのようだった。
トラックは一瞬消えて、また現れた。
弧を描くように上下にひらひらと動き回るさまは、
まるで天女が舞っているかのようだった。
夜明け前、
しかも年明け前の初日の出から桃色が発せられ、
視界は球状に大きく、そしてしっかりと帯状の色彩をまとっていた。
その桃色空に舞う天女は数を増やし、
そして白だけではなく、さまざまな大きさの
桔梗色、杏、蜜柑、橙、柑子、萌黄、蜂蜜、
柿、珊瑚、翡翠、天(瑠璃)、炎色の天女がなめらかに次の波、
そして紅と、萌葱、葡萄色の天女たちがその後ろの波の上を舞う。
それを眺めていると、
瞬きするごとに恍惚となっていくのがわかった。
波世界とはこんなに美しかったものか。
目が熱くなり、涙があふれてきた。
天女の色彩が滲むとそれが円形の虹になる。
虹はからまりあいながら、
まぶたの動きと共にまた新しい色となって、
それがいくつもの重なりとなって虹を増やしていく。
遠くから音楽が聴こえる。
虹は消えていく。
薄く淡くなっていく。
音楽はまだ聴こえてくる。
。
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と、こんな夢を見て起きた。
起きた瞬間にこの全てを覚えていて、
それがあまりにもきれいな夢だったので、
どこかに書き留めておこうとした瞬間に全てが霧散してしまった。
覚えていたのは円形の虹と、今もかかっている音楽だけ。
はて。
「いつも夢はこういうことになってしまう」
あの美しかったであろう風景を描写できないのはもったいない、
そんなこともあると、あきらめながらコーヒーを淹れて、
オフィスまでやってきて、
キャッチサーフ春のサンプルリストを作成していたら突然全てを思いだした。
それが上記した話であります。
書き終わってわかったというか、示唆を受けたのでここに。
最初ひとりだった天女=サーファーが、
波を共有しはじめる。
そしてさまざまな色の天女がやってきて、
すばらしい波に乗っていたということ。
それはまるで波乗りの進化、
”これからのオルタナティヴサーフのことではないか”
とさえ思えた。
初夢、いやまだ初夢には早い。
しかし夢を夢と終わらせないように、
そしてすばらしい波に乗ることが夢ではない私たちへのお年玉なのかもしれない、
そう思いながら飲んだコーヒーのおいしかったこと。
2014年最後の大事な日にも来てくださってありがとうございました。
来年はみなさまの、すてきで幸せな年となりますように。
今年もありがとうございました。
どうぞすてきな年越し、そしてすばらしいお年をお迎えください。
Happy Surfing!!
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