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naki's blog

【特大号】ハイパーソニック総括_ベストターン_春にありがとう_(4302文字)

九十九里の夜明け。

水平線に上がってくるのは、

夕陽が水平線に沈んでいくカリフォルニアとは真逆。

なるほど、

太平洋をはさんで互いが反対側にあることがわかる。

この朝陽が向こうでは夕陽となって、

向こうの夕陽がこちらの朝陽。

地球は球体であるのと、

時差を考えるとそんなところだろうと想像するが、

よく考えると違うようで、

こういうことに詳しい人はイライラするのかもしれない。

けれど、太陽のことはおいておいて、

地理的には間違っていないと思う。

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First light on what is already a beautiful day.

美しい朝陽から始まった日。

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今回の日本は、

さまざまなプロジェクトがあり、

その打ち合わせと、

NAKISURFでは、

ライアン・イングル博士の

「新開発のショートボードをテストする」

そんな使命があった。

ご存じの方ならおわかりのように、

私は10年前にショートボードを捨てた身である。

なぜならミニボードBD3を開発し、

「これ一本でどんな波でも乗れる」

そうやってスネヒザ波から

ノースショアの10フィートまでを5’0″のミニで乗り、

結果「ミニボード中毒者」となってしまった。

201012_SSR_naki_V1184

みなさんも良く知るトモボードは、

COLEが実物を見て「BD3の変形である」と断言した。

ギザギザとかノーズの形を変えているが、

コンセプトは全く同様である。

COLEはクアッドフィンを『ネオ・クアッド』として、

1980年代後半に発明し、

それが大ブームとなり、

そしてBDも10年後にこうやって流行ってしまうという

「早すぎる流行」を作ってきたシェイパーである。

サーフボードには、

料理のように特許がないので、

要はタイミングであることがわかった。

(BD3も大ブームになりました)

こんなことを書いて、保存してから外に出ると、

そのトモボードのデザインコピー(日本のシェイパー)

の試乗ボードを乗ってきた人がいて、

「これテイクオフも早いし、動くし、最高です」

そう貸し出し主に報告していた。

さらに続けて、

「これ以外乗れなくなりそうです」

そうやって、

私たちが10年前にはまってしまったように

ミニボード中毒依存の初期症状を伝えていた。(笑)

ちなみに今いるのは、

シダトラ(ノースタイガーより1.5km南。志田と東浪見の中間)であります。

閑話。

そんなこともあったのだが、

自発的な欲求もあり、

「さまざまなボードに乗ってみたい」ということになった。

で、

ミニ依存から脱却するためにCOLEが用意したのがファイヤーブレード。

幅広で、細いノーズが付いているボードに乗り、

それがフィッシュになり、

さらには自分のブレイクが緩い波質のサンオノフレに変わり、

ログ、ボックス(ブライアン・ベント)、ミッドレングス、

キャッチサーフ、さらにはボディサーフ、フィンレスとなっていった。

それぞれの世界感やサーファーたちを知り、

私は新しいサーフィンライフの扉を開けた。

そんなとき、

「ショートボードのニューモデルを作ろう」

突然そんなことになった。

なぜそうなのかというと、

日本に来ると、

特に千葉はショートボードの含有率が8割以上あって、

私は逆にオモシロボードに乗ったことで、

波乗りライフが豊かになったこともあって、

「ミッドレングスすばらしいです」

「フィッシュはいかがですか?」

「キャッチサーフはいかがっすか〜」

みなさんにそうやってお伝えしてきた。

結果、熟練者やコアサーファーには響いたが、

一般サーファーやD先輩のように

「独自路線を貫く系」の人には、

「何言っているんだよ。波乗りはショートだ」

そんなことであることがわかってきたのが去年の10月。

で、少し考えた。

ショートボードが悪いわけではなく、

貿易風を背にする、

つまり万年オフショアという日本の波が平均的に小さく、

そして遠浅地形に由来して波質が弱いので、

既存のショートボードだと、

『滑走能力』が低いのではないかと推測してみた。

ただ、多くの人がペラペラショートボードに乗っていて、

盲目的なのか右にならえなのかはわからないが、

気付いていないようである。

とにかくそこに着目してみた。

内外でよくあることだが、

上手なサーファーたちが来て、

根こそぎ波を持っていってしまうことが多々ある。

彼らは、

小さなボード浮力だと見せかけておいて、

波の弱い、または小さい日には、じつは違うボードに乗っている。

そのことにみなさんは気付いていないようだ。

でも、実際に一般サーファーが、

複数のショートボードを所有するのは難しいだろうし、

だったら「これ一本」

そんなショートボードがあればいいのでは?

そこで、

私が勝手に研究所と呼んでいるNationの、

ライアン・イングル所長に

「ショートボードの刷新をしたい」

そうお願いしてみた。

彼はコンピューターシェイプのオペレーションを長年していて、

実際にハイエンドマシンを所有し、

さらには見た目からもわかるように几帳面で真面目、

そしてオタクとも言える情報を持つシェイパーであります。

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その昔となるが、

ライアンはプロダクション、

つまり某有名シェイパーのシャドウシェイパーを何年も勤め上げ、

数年前に自身のブランドNationを立ち上げ、

長年の業界への恨み(ネタミではないかと思っている。笑)から、

「無料、または低価格サーフボードはばらまかない」

これは有名メーカーがプロや有名(セレブ)サーファーに提供することをしない、

ということを貫いている。

そして広告宣伝費はゼロ。

そんな硬派というか、時代から取り残される方法を選んだのがライアン。

こんなブランドもあります。

さて、10年前まで私はSURFER誌のフォトグラファーをしていた。

なので、

みなさんも良く知るメジャー・プロサーファーたちの家にもいることも多かったのだが、

驚いたのが、彼らにはサーフボードが20本単位で届くということ。

例えば同サイズが5本ずつ、それが4サイズで20本。

まるでイチローさんのバットのようであります。

しかもそれらは無料であり、それが大変うらやましかったことを覚えている。

その中から選び抜かれたボードが乗られ、

それ以外のは、

彼がお世話になっている人や周りのグッドサーファーたちが乗る、

それが口コミというか、

「みんなあのボードに乗っている」

そう錯覚させるマーケティングとなっていて、

サーフボードを大量に無料提供するメーカーも、

そのメジャープロサーファーが乗り、

さらにはそんなことになるので元が取れるどころか栄える仕組みとなっている。

でもライアンやNAKISURF、

そして友人たちのブランドは零細企業なので、

そんなことはできないが、

逆に零細ゆえにシャドウシェイパーが雇えないという逆スパイラルは、

ユーザーにはありがたい結果になっているのも事実です。

ここまでまた長くなってしまったが、

その刷新サーフボードが完成し、

カリフォルニアで乗ることよりも実際に乗られることになる日本でテストしよう、

そうやって持ってきたのが3週間前になります。

(日本では、波質が最も弱いとされる湘南鵠沼よりもサンオノフレの方が脆弱)

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やってきてみると、

小波でもキンキンのチューンバイクのように乗れますし、

そして柔らかく、従順な操作性。

このショートボードの斬れ味というか、

その鋭さに自身が若返っていくようで、

千葉のノースタイガー波でハッピーサーフしていたのであります。

【特大号】ハッピーサーフィン千葉_D先輩の教え_土佐文旦に知るライフスタイル_(3390文字)

そうやっていたら突然D先輩が現れて、

「キミキミ、ショートボードらしく乗りなさい」

そんな言葉を置いて奄美大島のグリーンヒル(緑道場)に旅立たれた。

私はウナクネ派であるので、

それがサーフマインドの芯を貫いている身である。

「ハテ、ショートボードらしくとは?」

そのことを考えるだけで、

哲学的なことまで考えてしまい、

サントリーハイボール7%一缶の酔いでは、

眠れない千葉の夜を過ごした。

で、気付いたのがクリティカルなターンということ。

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昨日杉本さんが来られたので、

「三本だけ撮ってクダサイ」とお願いして、

「いやいや3本と言わずに10本乗ってください」

そんな優しい言葉を背に

「ジュッポンジュッポン」と念仏のようにパドルアウトして、

ケリー・スレーターのエディ・アイカウではないが、

ジュッポンメ、最後の波がやってきた。

その波にいち早く気付いた私は堤防でカメラを構える杉本さんに、

ハンドアクションでセット到来を伝え、

そしてその波は私の前にやってきたのだった。

(川口浩探検隊シリーズ風に)

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例の玉子の殻の上に、

そしてヤモリのようにピタリと立つようにテイクオフし、

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少しトップラインに引き上げてから、

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ボトムまで加重滑走し、

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遠心力を効かせてボトムターンをした。

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ハイパーソニックの特徴は速く、

精細な操作性を持つサーフボードなので、

ボトムターンをしながら自分の向かう位置を見極めていく。

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ここでは、「ある波のシワ」を見つけ、

定めたらそこに向かってボトムターンを解放する。

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そのシワ位置にテイルを合わせるように、

誤差がないかしっかりと見ていく。

ここは1秒が10秒に感じられる瞬間でもあります。

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完全にミリ単位で合焦したので、

そこからレイルというか、テイルを沈めて左右を切り替える。

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高すぎると、フィンが抜けてヤング風になるし、

低ければ1970年代のバテンスらしきものとなって渋いので、

ここまで来たらこっちのものである。

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私は独自の位置があって、それはここ。

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波のトップ、

その内側のカーブしている側面を払うようにレイルを切り替えると、

重力が入れ変わるようで、

一瞬無重力と感じられる瞬間がここ。

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そのまま逆側のレイルが適正適所に入った瞬間、

普段の生活では感じられないほどの爽快感が出現する。

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降りながらもまたテイクオフと同じ意識で、

次のセクションの切り返し位置を見極める。

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20代の頃からこんな本格的というか、

基本に忠実なターンを夢見てきた。

トレッスルズやリンコンならば、

こんなターンをする機会はあると思う。

この奔放というか、定まらない千葉のビーチブレイク波で、

それが結実するとは思わなかった。

この新しいコンセプトのショートボードは、

私の新しい生き方にもなり、

「まだこんな鋭利なボードにも乗れる」

「もっとヤング気分で生きていくぞ」

そう実感できたすばらしい春の日。

これもまたハッピーサーフィングのひとつの形でもあります。

ありがとうライアン。

ありがとうノースタイガー。

ありがとう千葉。

ありがとう春の日。

Have a wondeful day!!


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