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naki's blog

世界初のサーフ文学『珠丸』執筆開始_(2600文字)

トロピカル松村くん近影。

このブログではトロちゃん。

Blue誌の辣腕編集者として知られていたが、

最近はポパイの記事を書いていたり、

ブルータスにも出没している。

さて、本題。

このブログは毎日たいてい正午頃、

正確には12時10分に投稿しているのだが、

本日は遅く、

これを書き始めたのは午後4時。

都内にいて、

山手線に乗って原宿に行ったり、

東急、カレー、イタリアントマト、

急行だったり、改札、

南口とかそんなのを通過してきた。

外はいまだ北風が割と強く吹き、

そして見事なまでの晴天。

沖縄奄美方面はどうかな?

そうやって天気を見ると、

気温はこちらより遙かに高いが、

冬独特の曇空という。

そんな日の波を思い出してもいた。

昨日はトロちゃんこと、

トロピカル松村くんと話していたら、

表現が膨張するようになってきた。

で、ならばこういうときに

『サーフ文学』

というものを書いてみようかと奮闘し始めた。

これを原作としてコミック化、

映画化されるようなものを。

そんなことを考えていると、

喉が天井を向くようになり、

背中が反ったのは、

それがパドリングの姿勢だからでありました。

パドリングはサーフィンで

『最も大切な動作』だと信じている。

これがケリー・スレーターでも同じことを言うだろう。

なので、

太郎くん、二郎くんを含めて指導したいし、

指導できると100%感じている。

なので、

いつかプール等でパドリング教室をしますので、

よい子はもちろん、

パドリングだけで波乗り上達200%を目指したい方はぜひ。

さて、そのサーフブンガクだが、

一節はこんなものになっている。

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全く音が聞こえなかった。

 

突然切り立ってきた波は、
まるで襲いかかろうとする猛獣と同様の静けさを持っているかのようだった。

 

鈍器のような重さを蓄えたトップ(波先)は、
まるでとんでもない力がそこでピークを迎え、
振り上がるように高く持ち上がった。
振りかざす瞬間のトップは巨大な斧の刃先のように、
少しだけ薄くなり、
太陽からの反射が幾千も輝いていた。
その色彩の豊かさは虹色なんてものではなく、
超高性能望遠鏡で見る天の川を司る星々が、
これを表現するのには一番近いのかもしれない。
漆黒に浮き出るように輝く星雲群、
星々が連動するような明滅の色彩。

 

その次の瞬間、
間髪を入れずに視野が広がった。
このとき珠丸(ずまる)は、
天上界からのお迎えが来たのだと、
錯覚を起こしたことを後に、
しかもずいぶんと経ってから思い出したという。

 

さて、波。
珠丸は視界の上で、
ピークモーメントを迎えたまま速度が落ちない波を見ていた。
うねりの間隔は10秒を超えると台風波となり、
11、12秒。
そのたった1秒の間隔は震度数値単位のように性格を変え、
もしうねり間隔が14秒あって水深差があれば、
ハワイのノースショアのような猛烈な波質となる。
16秒となると、
これは一年でも稀な数字なので、
こんな計測値が発表されると、
ビッグウエーバーたちが息を飲む日となる。
そして20秒を超えると…、
それはとんでもない波となる。

 

この波はその20秒を遙かに超えていた。
しかもうねり髙が、
20フィート(約6m)もあり、
このコンビネーションが’、
数十年に一度のモンスター超値を叩き出していた。
天変地異のようだが、
南極か北極寄りで、
誰も近づけない尋常でない激轟風(げき・ごうふう)が、
何日も吹き続けてこの波群が発生していた。
いや、
誕生と呼んだほうがふさわしいのかもしれない。

 

巨うねりの突進は、
交わって合わさって行進となる。
同方向に連なって、
速度を落とすことなく、
およそ180時間をかけて
4400海里(約8000km)休むことなく、
猛烈に、強烈に走らせてきた。
この波はもはや波とは言えず、
ーーまさに大自然の創り出した怪物なのだが、
相対している珠丸には、
それが猛獣に見えているのかもしれなかった。
または海の獣にも見えたのだろうか。
波のトップがこちら側に加速度的に崩れてくる。
これは崩壊ではなく、
二次元連続力学に基づいたきちんとした軌道なのだが、
この波獣はあまりにもかけはなれて強靱で猛烈だったので、
人生をかけて波を見てきた珠丸でさえも、
「倍ほど速く襲いかかってきた」
そう言った。

 

「ヴゥグ!」

 

ヴゥググ!』

 

短い距離を全力で漕ぐ、
腕に力を入れ、
引き絞るように真下に持っていくとき、
全身の筋肉を張り詰めながら、
全ての気を水の中にある腕に集中させるように手前に引いてくる。
最後には手首の上から
ヴゥグ!』
と低い音を発しながら腕が現れ、
しなやかな指先が海面を素早く通り、
また次のストロークを目指す。
これを上から映像を撮り、
早回しで見たら円弧、
つまり回転するリコプターの羽根軌道に見える精緻さだった。

 

さて、珠丸。
彼は一漕ぎにありったけの重さと、
自分自身を乗せて、
その波、いや獣の攻撃をかわして、
内側に飛び込みながら沈んでしまおうとしていた。
獣(こいつら)はたいてい群れているので、
この次にも来ているはずだった。
なので、どこもぶれずに、
どこにも当たらずにこの裏に出たかった。

 

落ちてくる

 

もう一回だけ腕を引き絞った珠丸は、
ボードの上に手をおき、
絶妙のタイミングで先端から沈めていく。
膝から押し出されたつま先が、
先端を追うように、波の奥に少しでも入ろうと、
的確にそして強いトルクで伸ばしていく、
獣が覆い被さってくる。
トップが蓄えてきた風圧が珠丸を走り抜けた瞬間、
そいつは8000kmも蓄えてきたパワーを、
6mのうねりを数倍にも跳ね上げ、
海面に叩きつけるように果てた。

 

低音の絶叫に似た音が海中に轟いた。
それはまるで至近距離から放たれた砲弾が、
真後ろに着弾したかのような威力だった。
珠丸はボードを握りしめたまま、
海面に上がるのを待っていた。
次の波は来ているかもしれない。
いや、
きっと来ている。
そんな予言めいたものが頭の中を疾っていた。

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Happy Surfing!!