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naki's blog

【特大号:サーフィン研究所結実報告】波乗道を燃やすバックドアでテッタとのセッション_(3285文字)

京都にいて、

ラッコ旦那とプロジェクトをこなしている。

そしてここは、

いまだに歴史が続く古都なのだと、

しみじみ実感している。

Kyoto Sakagurakan, Kyoto

.

歳を重ねて分かることがある。

歳を重ねたからこそ感じるものがある。

そんな京都旅。

すばらしい。

さて、

奄美大島に話は戻る。

島にはバックドアそっくりの波があり、

オーバーヘッドくらいからその真価を発揮してくる。

Amamian Backdoor,  Amami Oshima

.

台風2号波が終わり、

小波日を迎えたと思っていたら、

突然サイズアップした。

そんな日。

このサイズならバックドアでサーフしたいと、

突然インスピレーションが降ってきた。

潮が上げてくるのを待ってから波を見に行くと、

いわゆるクローズアウトだった。

ならば、

もう少し潮が上げてくるのを待とうと、

重野玉里店で古典名作弁当を求め、

およそ30分後に戻ってくると、

クローズアウトの中、

ラインナップで波を待っているサーファーが見えた。

2人いたが、

乗るとそれが誰なのかはすぐにわかった。

テッタだった。

テッタは森哲太くんと言い、

プロサーファーであり、

一流のフィッシャーマンであり、

奄美中のGTはテッタと聞くだけで、

リーフの影に隠れてしまうほどであるという。

彼がサーフィンを始めたときのことを緑くんが覚えていて、

「異常な初心者でした」

「それどういうこと?」

「最初からめちゃくちゃ上手かったです」

「ほう」

「ボロボロの板を持ってきて、

干潮のゴボゴボのところを平気でテイクオフしていました」

「手広で」

「はい、もう初心者の頃にこいつは世界に出るな。

みんなそう思っていました」

「すごいんだね」

「はい異常ですテッタは….」

野生児とか、異能人、

そう呼ばれて、奄美大島で生まれ育ち、

湘南に引っ越し、

沖縄にも住んで、

奄美大島に戻ってきていた。

そんなテッタも36歳になっていた。

そんな彼がサーフバディとしてイッセイくんを連れ、

バックドアの沖で激掘れ波を待っていたのだった。

こちらがテッタのサーフバディのイッセイ。

彼もバックドア好きで、

いつだかのセッションでも一緒で今回も一緒という奇遇。

「ナキさんが、ここをアマミアン・バックドアと言うのでそれが定着してきました」イッセイ

「でしょ。似ているよ」私

「テッタ、ハワイのバックドアに似ているの?」

無言でうなずくテッタくん。

「そっくりだよ。インサイドの危険なほどの浅さとか、

まるでバックドアが奄美に移転してきたかと思ったほどだよ」私

「波を選ばないとダンパーというのも似てますよね」テッタ

「そうそう、ハワイはローカルが良いのをみんな乗っちゃってさ。

ビジターにはダンパーの良くないのをGOGOと言うんだよ」

「行かないとどうなるんですか?」

「まあ当分順番が回ってこないだろうね」

「でももしかしたらメイクしてヒーローになりますね」

「そう簡単だったらいいんだけど」

ーーーーーーーーーーーーーーーー

「イッセイ、お前ビビってプルアウトばかりしとるぞ。

しっかりチューブ入らんと」テッタ

「あれに突っ込めるのはテッタだけがね」イッセイ

「大丈夫。行け行け」

一同笑う。

そんなセッション。

テッタくんと一緒にサーフするのが好きなのは、

いろんなことを教えてくれるから。

この日も

「あの黒い岩の上から待って行くと、

ギリギリで浅いところに当たらずに抜けられます」

とか、

「見て理解してください」

とばかりにリップの下からテイクオフしたりと、

すばらしいものを得ることができる。

これが噂のクローズアウト。

簡単ではない。

なぜなら高速で、

切れ上がった斜面から脱出しなくてはならない。

これをミスすると、

膝腰程度の水深で、

その先にあるナイフ級に研がれた刃先リーフの餌食となる。

砂が巻き上がっているのは、

今回の台風2号で、

3Dウエッジ(手広)方面から流れてきた砂がここに推砂したのだろう。

セットの一番良い波が入った。

これをずっと待っていたテッタ。

リップの下部で一瞬待ち、

そこからインパクトパドル全開とした。

グワッガシッと2回漕いだら、

リップの下の位置でテイクオフ動作が開始された。

完璧である。

テイクオフの動作はスバヤク、

低く、年季と度胸とテクニックは、

軽くワールドクラス。

惚れ惚れするほどさすがです。

それでもスタンドアップ時には、

フリーフォールに近いほど斜面が切れ上がるバックドア。

テッタであろうと、

ジャック・ロビンソンであろうと容赦ない。

ズドンと、

レイル加重だけでドロップインをメイクし、

ファーストセクションを狙う。

波の中に段が出現して、

——折り紙の折れ線のように——

バレルはここから折れるように丸まる。

バレルを目指しているのだが、

わざと遅らせるボトムターンがテッタの真骨頂。

すごい。

そこからフルボトムターンで、

バレル面を目指す。

ボトムで、

レイルを入れ替えてストールした。

すごすぎる。

普通のサーファーがこんなことをしたら、

失速して、

野性のトラが渾身の力で振り下ろした一撃のような魔獣リップを喰らい、

飛ばされて、

そして例のリーフに叩きつけられるだろう。

テッタは違う。

ストールからレイルを使って、

今度は進行方向にフロウさせた。

そのままセットアップ。

ボトムでセットしているので、

スタンディングで入れるほど大きなバレルだと分かるが、

異様に斜面が硬いので、

体勢を低くしないと軽く吹き飛ばされてしまう。

フルレイルでバレルイン。

ノーズにも加重していますね。

レイルワークで減速加速という技術。

今度はテイル側に加重してストールしている。

出口が大きいので、

あえて減速させたのだろう。

丸まった魔獣。

下から吸い上がるように出現するフォームボール。

フォームボールというのは、

リップ(波先)がボトムにヒットすると、

波面に泡の層が出現するものである。

これに乗ると、

ボードは滑るか沈んでしまうので、

バレルメイクには最も厄介なものである。

引田天功ではないが、

フォームボール70%くらいとなり、

滑るところがほとんどなくなっている。

これで80%フォームボール。

残りの20%はバレル内の上部。

上に行けば行くほど傾斜はすごく、

ボード操作の難易度が段違いに上がっていく。

ここで残り10%程度だろうか。

もうメイクすることはむずかしい。

5%だけの斜面。

テッタは泡の中に吸い込まれてしまったのだろうか。

後ろからの爆発で、

泡が前方にウエッジ(合わさって押し出す)している。

出口封鎖寸前。

その隙間から出てきたテッタ。

ボルコムパイププロなら12点のマキシマムポイントであります。

誰もいないバックドア浜が、

パイプラインマスターズのファイナルのようにどっと沸いたように感じた。

さすがテッタ。

すごい!

あいかわらずのワールドクラスの、

野性時代バレルの猛獣使い。

拙者感服つかまつった。

そう古語になるほど感激してしまった。

一緒に入って良かった。

これを見られて良かった。

Catch Surf ®Skipper Fish Taji Barrow PRO 6’0″

TW Captain Twin + Vektor VT trailer

.

私もスキッパーフィッシュで、

全てのテイクオフをメイクし、

忘れられない波の数々を得た。

このシークエンスはそのひとつであります。

ハイラインだったが、

悪くはないストールとグライドだった。

テッタとサーフして、

また自分の波乗道がぐっと延伸したのを感じた。

体が熱くなった。

自分の中にあるありったけのものが波乗りの熱となり、

それは当分の燃料として燃やしていけるほど熱い。

テッタも燃やし続け、

私も燃やす。

すばらしい奄美の、

忘れることのできないセッションだった。

テッタ36歳、私が53歳。

波乗りは執念でもあり、

修行であり、

そして絶やさない胸の高鳴り——鼓動。

さあ、今から波乗り魂を燃やすぞと、

背中を反らし、

腕立て伏せを京都のゲストハウス橘屋でした朝。

Happy Surfing!!