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A Rainbow dragon / 龍の虹 / ミヤサバ&宮鯖賢治_(1765文字)【ドラグラ・プロダクションズ製作】



A Rainbow dragon

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ミヤサバ

「風」という獣が創り出した龍たちは、

海原に横たわり、

転がるように陸地へと動いていた。

月夜の鈍い光のなかに龍の影がうねるように通り過ぎていった。

そらは東から淡くなり、

やがて、

暖色の光子を伝え、壮大なる世界をひらく。

龍の群れは、

止まることなく、

海の上を辰の方角(南東126°)に転がっていた。

龍が、暖気を吸い込み、

淡い紅(べに)と、

緑の虹彩を蒸気の中に出す。

いくつかの島が見えてきた。

最初の島。

南海岸に突き出た岬。

青龍が切り立ち、

波先が彈(はじ)けた。

波の脇には、

深いチャンネルがあり、

底に黄鰭のブダイが泳いでいる。

海底の玉石敷が、

点滅するように滲(にじ)んでいた。

小魚の群れ。

波間の海面に、美しい雲が映っている。

岬からつながる湾があり、その腹部分に海岸が見えた。

そこには、

天子を閉じこめておくような檻や、

塀のようにコンクリートを立ち並ばせていて、

私は突然悲しくなって、視界が潤んだ。

丙方向につらつらと堤防が並び、

その上を白い鳥が飛んでいる。

太陽の光に照らされた堤防と消波ブロックを見ながら、

私の魂は遠くに彷徨っている。

7月の台風の波が届いた。

台風の波は満開の花のように咲き、

青い燦めきと、

白いしぶきを点じさせながら、

うれしさに震え、全身に太陽を受けた。

ぴょーんと小魚が跳ねて、

足ではさんだサーフボードに当たってきた。

小魚はデッキの上で体をくねらせてから、

どこかに飛んでいった。

水平線の上、

龍の形の雲が浮いていた。

金色の龍が、縦に浮いている。

こっちを見て、

ニヤニヤわらっている。

笑って、歌っている。

金の龍。

「小さな魚
陽のあかりも 白色小花の
点すあかりも 眼に入らず
波斜面から飛び立って
人の顔に突きあたり
あわててよろよろ
瞬間的に向きを変え、
太陽も眼に入らず
途方もない方に 飛んで行く」

海の上に小さな魚が消える。

視線を合わせて飛んで消えて行く。

そらにはさらなる陽の龍雲が湧き、

そこにある虹と、

シングルフィンが柔らかく光り、

そらがこちらを見ている。

磨かれたような海の天を

壮大な月と、

紅色をした火星が音もなく動いていく。

あらゆる夢がめぐり、

その行方を探そうとしている。

龍の虹

宮鯖賢治

(新字旧仮名)

天の海のなかで

ゆるやかに龍が体を横たえてゐます

聖玻璃の風が行き交ひ

たしかに月の白い光を

その暗いくろぐろとした龍の光素を虹色にし

どしどしどしどし燃えてゐます

(かげろふの波と虹色光)

その一切れである波は鈍い虹を掲げる。

南の岬にある浅瀬は、

龍のうねりを受け、

高くその柔らかな波先を青く動かしてゐるのだ。

波の下の深みに沿って黄色の魚が泳いでゐる。

重く流れる波の底をその小さな魚が尾をふってゐる。

玉石の陰影だけで出來あがった波底層。

空の雲は立派な姿を波間に映し、

私は寂しく煙る陸地にかすかな泪をながす。

海はまことに諒闇の籠や檻の塀のように防臺が立ち、

これもまた上総国の海であります。

南側に並べられた臺(うてな)の上を白い鳥がふわりと飛ぶ。

石で疊んだ防臺が白くほのびかりしてならび、

私の心はどこかずうっと遠くの方を慕ってゐる。

もう台風の波が咲いた。

さうだ。

一面の台風の花、

青白いともしびを點じ微かな悦びをくゆらし、

それから陽光を燦めかせる。

小さな魚群がまっすぐに跳ねて來て私の浪乗板に突き當り、

ヒョロヒョロ危く墮ちようとして途方もない方へ飛び戻る。

海のむかふに小さな龍が昇ってゐる。

金の龍が立ってゐる。

よこめでこっちを見ながら立ってゐる。

にやにやわらってゐる。

にやにや笑ってうたってゐる。

金の龍。

「小さな魚
陽のあかりも つめくさの
ともすあかりも 眼に入らず
波の上下をとび截って
ひとのひたひに突きあたり
あわててよろよろ
落ちるをやっとふみとまり
いそんでかぢを立てなほし
太陽のあかりも
途方もない方に 飛んで行く。」

海のむかふに小さな魚が消える。

よこめでこっちを見ながら飛んだまま消えて行く。

西に黄色い龍雲が一杯にかかる。

そのはらわたにある虹、

それから浪乗板がさびしく光り、

そらの執念が、

幽靈になってじっとそらからこちらを眺めてゐる。

空がはれて、

そのみがかれたような浪乗板の天を

貴族風の月と紅い火星とが少しの軋りの聲もなく滑って行く。

夢がめぐってゐる。