長寿波 Blue.202410月号掲載_(1377文字)

美食飽食は、

健康と長寿の大敵である。

つまり美食を求めるより、

粗食に目を向け、

腹八分目こそが長命への一歩だという。

健康志向の友人も、

なるべく「丸ごと」を食し、

「加工食品」は遠ざけろと教えてくれた。

食をサーフィンに置き換えると、

加工波はウェーブプールとなる。

世界各地でさまざまなウェーブプールが登場したが、

私世代は、

ワイルドブルーヨコハマ、

スポーツワールド伊豆長岡、

宮崎シーガイヤの人口波を思い浮かべる。

そこでは、

およそ乗れる本数が決まっているので、

波一本あたりの単価が出現するのでなぜか緊張してしまう。

ちなみにケリー・スレーターの、

高性能ウェーブプール

【サーフ・ランチ(波牧場)】

は波一本あたり525ドル

(本日の貨幣価値で78,900円!)

と算出されている。

詳しく書くと、

貸し切り料金がハイシーズン7万ドル(1千万円超え!)で、

ローシーズンが5万ドル。

一日かけて120本の波が出る。

10人のサーファーがそれぞれ12本の波に乗れるとあり、

これをハイ・ローシーズンの平均値で求めてみたものが、

波一本あたり78,900円という価格で、

これはワイプアウトしても同じだ。

波単価は、

30年ほど前にも存在していた。

元暴走族の先輩に連れられて南房総の千倉に行ったとき、

先輩はその日にかかった費用を合算し、

乗った波の本数で割っていた。

そのときは波一本が800円くらいとなり、

ずいぶんと高いものだと思ったが、

「波は貴重なのだからしっかり乗りなさい」

怖い先輩は、

そう私を叱咤激励してくれた。

先日、

人気サーフ・ユーチューバーが、

「より多くの波をつかむ方法」

をYouTubeで伝授していた。

サーフィンは、

多く波に乗ればいいわけではないので、

これもいささかピントがズレている。

閑話。

九十九里浜南でサーフしていると、

これまでほぼ無人だったエリアにサーファーが来るようになった。

波情報社がこのスポットを公開したのがその理由であるが、

おかげで開国というか、

前述した

「とにかく波に多く乗ろうとする人」

も登場した。

その人は、

少しでも乗れそうだと思うと、

すべての波に漕いでいく。

乗れないとまた次の波に乗ろうとする。

ソロセッションでこういうことをするのはいいのだが、

周りのサーファーははっきり言って迷惑であるし、

ちょっとした悲劇だ。

当人は前乗りしなければいいと思っているが、

なんでも乗ろうとするので気になるし、

抜けられない波もテイクオフしていく。

で、

波斜面がなくなると即サーフボードを蹴り出し、

即座にラインナップまで戻ってきて、

また波ハンティング行為を繰り返す。

とにかく多くの波に乗ることが上達への基本だと信じ、

自身の行為がどこまで他者に不快感を与えるのかもわからない。

「ロングボード禁止」とたまに聞くが、

こういったサーファーが禁止事項を発生させているのだ。

美食、

加工食品=ウェーブプールときて、

波の乗りすぎが飽食だとわかり、

サーフィンとはやはり生き方だと確信した。

美しい波はサーファーにとって人生のご褒美であるが、

欲ばりすぎてはならないのだ。

スタイルのあるサーフィンとは、

乗っている姿のみならず、

波の待ち方、

ライフスタイル、

すべて含めての総合的なものであると、

乗りすぎ=大食いサーファーから再確認した秋の千葉。

(了、10/18/2024)

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