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【ドラグラ文学館:新連載】火之神〈その一〉_(2845文字)

火之神
——ベテルギウス

by 夢龍

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その一

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これは、

タキビ師という存在がまだ誰も知らず、

その火を使うものが神格されていないのときの話だ。

転生輪廻(サンサーラ)を持つ魂が多くあった。

ある廻りあわせというサンサーラがあり、

めぐりめぐって、

数億年の時を経て、

カノエ(庚)が誕生した。

この誕生は、

地球上に重要なDNA=サンサーラを刷り込むために誕生したのか、

全くの偶然かはわからないが、

必然であったと思えるのは、

カノエは類い希なる性質を兼ね揃えていたからだ。

「稀なること」を語る前に、

その理由を下記してみる。

古代、

とっても昔にヴェーダ教というのがインドから発祥した。

天・地・太陽・風・火などの自然神が崇拝され、

古代人はヴェーダと共にあった。

いまからずいぶん前(紀元前1000年頃〜)にヴェーダ—の教文書が編纂され、

現在はヒンドゥー教と呼ばれている多神教だ。

このヴェーダの種子が飛んだのか、

自然発生的になのかはわからないが、

この教文書の400年後にゾロアスター教が、

古代アーリア人の心を満たした。

調べてみると、

アケメネス朝(𐏃𐎧𐎠𐎶𐎴𐎡𐏁)があり、

そのペルシア人のほとんどが信奉していたものがゾロアスター教だ。

ゾロアスターのメインテーマは

「アフラ・マズダー (Ahura Mazdā)」という翼と天使の輪を持つ神。

カーメーカーのマツダは、

これから命名されたとも言われている。

ゾロアスターは拝火教とも呼ばれているほど火を重要視する。

火の形や温度で易を見たり、相も読む。

カノエは、

火から対立する属性を持った二つの元素を対立させ、

それを統合することにより、

森羅万象の法則を説こうとしていた。

カノエにとって火は神だった。

彼は、

ありとあらゆる方法で火を立て奉った。

火は音に踊り、
カノエは火に踊っていた。
やがてカノエは炎となり、
炎がカノエとなった。
ある日、
カノエは睡りの中で天空に舞っていた。
広い空に浮かび、
落ちて、そして飛んだ。

次は、

水の夢を見た。

広く、深く、蒼く暗い果てしない先があり、

冷たくて温かくもあり、

押さえつけられるような感覚が重くなったり軽くなり、

浮いて、

とどまり(サスペンド)、

そして沈んだ。

ゆっくりと浮かび上がると、

そこには陸地があった。

大きな岩がたくさんあり、

そのあいだに砂があり、

陽が出ると暖められ、暗くなって冷えた。

雨が降って、

緑色の新芽が砂の上に生えた。

花をつけて、樹となり、

林が森へと変わっていった。

その草や果実を食べる鳥と動物が誕生し、

その動物を食べるものも現れた。

その後、

2本脚で歩行する猿がその草や果実、

道具を支配して動物を食べて人となった。

人は火を操りはじめたが、

じつのところ、

火が人を治めていたというものだった。

カノエは、

そのことを丁寧に記していった。

何日も、何年もかけて調べていくと、

その示唆のような夢は、

『シュルティ(天啓)』というもので、

全ての源だったことがわかった。

地球からおよそ197パーセク(642光年)の距離に、

ドラゴン・ヘッド(昇交点)と呼ばれる星、

赤色超巨星ベテルギウスがある。

これは、

太陽の1000倍という大きさの恒星だ。

「龍頭(ドラゴン・ヘッド)が暗くなるとき、高揚の座が誕生する」

という言い伝えがあり、

経典には、

「黄道十二宮の3番目であるこの星が、

黄経が申の方角かつ、それが獣帯のとき神が誕生する」

そう書かれていた。

さらにあったのは、

「その神は、 四大元素のひとつ。人馬宮から現れる」

ということだった。

人馬宮を調べてみると、

黄経240度から270度とあり、

その方角が縁起となり、

そこには「皇紀(西暦も)10数の倍数の年」とあり、

それは今年だった。

その言い伝え通り、

カノエは冬至日に、

明星に乗ってやってきたものから啓示を受けた。

その明星とは、

太陽であり、

この海と空があっての重要さだと、

空海は説き、

『文并(ならびに、そして)書』

としてたくさんの文献を残している。

空海が伝えた密教はいまでは仏教に属するもので、

その教典は、

『大般若波羅蜜多経』によるとされて久しい。

この元々はサンスクリット語だったのだが、

それを西国から玄奘三蔵が唐に持ち帰って翻訳し(645年)、

それを経由して四国出身の遣唐使「沙門空海」が持ち帰ったというのは、

歴史にも残り今に伝わる。

実際にここにある青龍寺

(当時は現在の奥の院が本堂)

にも多くの重要な宝が隠されたと言われている。

さて、

私たちの思想は、

『ハッピーサーフィン』を掲げていて、

その多くはゲレンデである海を護りましょうとやっている。

だが、

結果は、

奄美大島の嘉徳ビーチの悪行でさえ止められずに

「調査」という内容で、

工事を延期させているだけという世の中である。

護岸という言葉でなく、

滅岸と表記すれば市民にも伝わりそうなものだが、

土木工事を受注する側からすると、

全体主義に訴えることは得意であろう。

例えば、

「災害時に危険です」

とか、

「浸蝕防止」

「津波抑制」

そう言って多くの賛同を得るのだからたまらない。

私たちの仲間にタキビシンという神がいる。

人が神格化したものだが、

タキビ神は宇宙に還るまでは、

人間として生活することを選んでいた。

歴史帳を紐解いて調べてみると、

実際にはタキビシンではなく、

タキ・イーシだったのではないか、

という説が20世紀から有力視されている。

これは玄奘三蔵の書き写し、

またはそれ以前にさかのぼって、

語源のアラビア語で調べると、

アラビア文字のBとYはドットが1つ、

または2つかの違いである。

“ﺒ” (b)

“ﻴ” (y)

よって写本の段階、

またはラテン語に翻訳する段階で誤写されたのではないかとされている。

またはその以前の年月を経てタキ・ビシとなったと、

漢語の教典にありましたと、三蔵瀧朗が説いた。

時代がわからなくなり始めたので、

基本思想であるバラモンに戻ることにする。

バラモンを正しく言うと〈ブラーフマナ〉だ。

だが、

日本では、

音訳された漢語「婆羅門」の音読みからバラモンと定着しているので、

混同を防ぐためにここに使用している。

そのバラモンは、

神々と関わる特別な権限を持ち、

宇宙の根本原理ブラフマンに近い存在とされ敬(うやま)われる。

そのタキ・ビシは、

神格化しながらも人間の生活が大好きで、

ヤスという名を付けて千葉県いすみ市の山中に住み続けていた。

ヤスは夕刻、

そろそろ影が闇となるころに林の中で薪を拾っていた。

湿気が降りてきて、

風は全くなかった。

じきに雨が降ってくるのだろう。

林の向こうが明るくなっていた。

あちらは玉前神社側の斜面なので道も何もないはずだった。

そこに向かってみると、

明るさはみるみる光量を増し、

あたり一面が朝のように明るくなった。

明滅もしない光源があり、

それは折れた松の樹だった。

まるで竹取物語のようだったと、

古鰻記には書いてあった。

(次号へ続く)

Happy Surfing!!

by Yume Ryu / Dragon Glide Productions