新品・中古サーフボード販売、カスタムオーダー、ウェットスーツ、サーフィン用品など。NAKISURFは、プロサーファー、フォトグラファー、サーフライターで知られるNAKIのコンセプトサーフショップです。

naki's blog

三浦さん初登場の巻『もう一回言ってくれぃ』

5’10”

無人のカリチェ岬。

I LOVE COSTA RICA!!

.

今朝のことだ。

サーフボードにワックスを塗っている間、

これに薄い茶色のスプレーペイントを塗って、

10年落ちのサーフボードを表現しようと考えた。

「修理後風のステッカーとかあったらいいのに」

などと、

「見た目旧式」へと好みが変わってきた。

話が変わるけど、

江戸時代の武士は商人より階級が高く、

物質的な豊かさより、

精神的な「名誉」があったと聞いた。

サーフボードは俺たちに取って刀そのものだけど、

この刀は武士と同じく名誉そのもの。

その時代に生まれて、

武士をしていたのなら国中を奔走し、

銘刀を手に入れていたのだろうか。

名誉とは各自がそれぞれ違う形で持つものだけど、

サーファーはそれぞれの名誉を心に秘めている。

その昔、

6歳年上の三浦先輩(後のDセンパイ)という人が鎌倉七里ヶ浜にいて、

波乗りを始めたばかりのボクの面倒を見てくれた。

彼はサーフボードを刀と同じように大事にして、

刃こぼれ(傷)が付こうものなら、

すぐに乾かして、

修理していたのをおぼえている。

彼の車も毎日のように洗車していたので、

やはりいつもピカピカだった。

先輩はもうサーフィンをやめてしまったという。

(2006年10月、正面での三浦さん)

その先輩こと三浦さんが、

ーーそれは1983年(昭和58年)のことだーー

七里の正面(マサモ)で、

ものすごい打点のバックサイド・リッピングを決めた。

私はそれを真後ろで見た。

見たのは当然というか強制ごとだった。

三浦さんの後輩は、

先輩の波乗りを見ないと、

「なぜ先輩が乗っているのに見ないのか」

そう叱られた。

ボクだけではなく、

カクもノンベも、

ヤマトのコアラも松原も三浦さんのサーフィンを見ないと、

みんな怒られていた。

もっと書くと、

三浦さんは自分のサーフィンを他人に見られるのが好きだった。

そんなこともあり、

波が出ると、

七里ヶ浜の人出が最大となる夕陽頃にやってきて、

自分のステージだとばかりにロアのインサイド(ショアブレイク)でやっていた。

で、

その先輩のリッピングだけど、

「サーフボードが波の後ろに全部出て、波の中に戻っていった」

という当時ではありえないことが起きた。

だが、

この事実に遭遇し、

その偶然というか、

そんなことにも感動した。

三浦さんの技術もあるが、

それ以上に何万分の1かの偶然が重なったように見えた。

ご当人がパドルで戻ってくると、

「なんだ、この野郎〜〜!」

なぜかめちゃくちゃ怒っていた。

後で考えると、

三浦さんは、

スゴイのを決めてしまい、

湧き上がってくるうれしくさをこらえるために猛烈に怒っていたようだ。(笑)

あれほどまで怒るほど、

うれしかったのだと今はわかる。

それでもひるまずに、

「いやあすごかったです。

残像でバックフィンの下に付いているテイルロゴまで見えました!」

詳細報告すると、

「本当か!そうかそーか。てめぇ〜くぬやろ〜!」

と、

さらにさらに怒った。

いつものように真っ暗の海から上がり、

海前のゲルゲさんのお店のシャワー&ロッカー会員だったので、

そこにシャワーを浴びに行くと、

さきほどの三浦さんが待ちかまえていた。

「おい、今晩どうする?焼鳥でも行くか?」

と聞かれたが、

その頃は金銭的なヒッピーだったので、

正直にお金がありませんと言うと、

「いいよ〜俺がおごってやんよ〜」

そんなことになった。

そしてボクたちは腰越の江ノ電通りの、

「かきや食堂」の裏にあった

「きよい」のおいしい焼き鳥を食べたところで、

「あのね、あれだけどさ、もう一回状況を説明してくれるかな?」

私が飲めないビールを注ぎながら言った。

(30歳までお酒が飲めなかった)

予想していたことなので、

すぐにこう答えた。

「ぼくはゲッティングアウト中だったので、

ボトムターンをした瞬間、先輩は見えなくなりました」

「そうか〜もっと先を言え。

それからホンスジがあるだろホンスジが〜〜!」

「はい、

すぐにボードが波の裏からものすごい勢いで出てきて、

テイル先の1cm程度だけ残して波の中に戻っていきました。

残像みたいな速さでした」

それを聞いた先輩は、

そのヨロコビからか、

瞬時に酔いが回ったようで、

顔が、

茹でタコ並に真っ赤になっていた。

しかも、

「あれも食え、これはどうだ?」

と大盤振る舞いは珍しい。

なんてったって、

先輩の嫌いなものトップ3が、

下請け

たかり

オゴリ

なのをボクは知っていた。

これはその一本柱の「オゴリ」なのに珍しい。

そして、

「親父!ビールもう一本くれぃ!」

声も大きくなってきた。

この瞬間、

先輩のボードが全部波裏から見えたことはもはや事件となった。

当時はボードの性能だったり、

サーファーの技術的なこともあり、

ボードが全部波のトップの裏側から見えるのは本当に稀だった。

ポッツやアーチが「エア・ボーン」をして、

ボクたちがひれ伏すのは、

5年後とか、

まだまだずいぶん先のことだ。

で、

新しいキリンラガーの瓶が届くたびに、

「あれさ、もう一回言ってくれない?」

と、

先ほどからの詳細報告を繰り返し強要された。

で、

その「もう一回言ってくれ」

の4回目だったかな、

センパイは突然やさしくなって、

「すいません、もう一回言ってください」

そんな文体で要求されたころには、

ボクは相当酔っ払ってしまっていたようで、

「(ボードが)空を飛んでました」

と誇張表現をすると、

「くぬー、クヌヤロ、

俺はシンジツが知りたいのシンジツが!」

と大声で怒り出した。

これには周りのお客さんも

「何ごとか!」となり、

「すいません脚色してしまいました!」

正直に謝りつつ先輩をなだめていると、

そのまま、

「もいかい言ってくれぃぃ」と、

声も小さく、

左腕を下にカウンターの上で酔いつぶれてしまっていた。

最高の酔い方だったのだろう。

(2008年10月30日加筆)

この三浦さんは昨年波乗りに復帰し、

ノースハワイまで来て「ドドゲの三浦さん」

ドドゲの条件(加筆しました)_浮浪のすすめ_(1011文字、短編です)

としてこのブログの登場人物として登場いただいています。

2008年の松風王国は、平塚七夕にも来ていただきました。

2013年はジャワ旅への合計2万字という紀行文を三部作で寄せていただきました。

http://blog.nakisurf.com/naki/archives/43450


18 thoughts on “三浦さん初登場の巻『もう一回言ってくれぃ』

  1. チャンキン

    良いお話ですね。

    わたしも貴方が20年前にキンチャンズにて、
    とてつもない場所からテイクオフをする姿を見て、感動していました!
    懐かしいな~・・・
    予言としては、細野晴臣さんは長生きすることと、
    フランダースの犬は死んじゃうし、
    野茂がメジャーに行ってもサーフボードは進化せずに1970年代に逆行するぞ。
    野球では二刀流が出るね。

    今度法王を誘ってさ、タキビの神さまに会いに行こうってね!ダメ??

  2. GO

    ついに現れましたね!スターが!
    この話はいつ聞いても面白いです!
    しかし本当にいい時代だったんですね。
    今は取り合いなどでぴりぴりした雰囲気の中での波乗りばかりでコミュニケーションが少なくなっているような気がします。

    ちなみに三浦さん、この間もロアでビクンビクンしてました。白いウェットで。

  3. jun

    いい時代かぁ、、、面白い話ですね。

    僕も波乗り覚えたての頃、友人と焼き鳥屋で互いを讃え合ったことを思い出しました。
    酔った勢いで朝まで褒め合う…..端から見たら異常な雰囲気ですね。友達はノーズの折れた板で俺は12月なのにスプリングで、ほんとヘタクソで。

    カリチェの名誉、大雨のアッパー、落差のあるカーブetc。いろんな名誉を見てきましたよ。
    ヨロコビながら怒ってる、笑えました。

  4. 得♪

    超笑わせもらいました!
    そして、愛を感じました!
    そして、ビクンビクン、白ウェット!

  5. four mile

    精神の豊かさは何事にも代え難い。ひとつのことを突き詰めていくというある種”自己満足の世界”に美を見出す武士の精神はとても気高く、なおかつ職人的で、現代を生きる波乗り人にも精通しているかの如く、基本的には海と自分であって、あの周りの世界から切り離される瞬間というのは何とも中毒的であります。ひとたびそれに気づいたときからはあまり他人や世間の動きというものががさほど気にならなくなったといいますか、良い意味で自身の精神の落ち着きとこだわりを知ったように思います。物質的に満たされようと思えばリミットのないこのご時世ですが、あの瞬間があるからこそ流されずに行けるように思います。
    PURA VIDA!

  6. markee.

    いい話ですね。
    私の地元にも、50代の波中毒の方たちがいまして、いまだに波乗りについて人生について、飲みながらいろいろ教えて頂いてます。
    海でのいいライディングとか飲んだ場で伝えると、上機嫌にて焼酎をグビグビ飲まれるんです。
    年齢関係なく、同じ波の話できて、サーフィンっていいですよね。
    白プロフィニッシュは見た目普通で、実はハイテク素材ってとこが、かっこいいです。
    外見普通、中身!!ってのにそそられます!
    プルメリアきれいですね

  7. ふなき

    チャンキンさん、
    ありがとうございます。
    チャンキンさん=キンチャンさんあっての俺です。
    今度恵比寿の音音で「石鍋ごはん」をごちそうさせてください。
    あのご飯、本当においしいですね。
    キンチャンが「んー!家のばあさんに食べさせたい!」と言ったのが、まだ忘れられません。

    GOさん、
    ロアーズでばっちりでしたか。
    三浦さんは本当に白いウエット似合いますよね。
    10年ひと昔、22年前の話ですからふた昔前の話です。
    当時三浦さんはポッツと同様の鎌倉のスターでした。

  8. ふなき

    junさん、
    気のおけない仲間と飲みながら小さな名誉を讃えるのって、たまらないですね。
    またコンボイ通りの「但馬」に行きましょう。
    あんまおいしくないけど….。(笑)
    カリチェでも待ってます。

    いやあ、すごい先輩たちがいました。
    ゲルゲさん、佐藤くん、ナチくん、裏さん、小島さん、キンチャン、松岡さん、湯山ミサくん、モリたん、ツー、のんべに松原(そばや)、陳コクリュー、杉さん、太郎さん、泰介さん、薫さん、他27名、お世話になりました。
    下のJJモンクスさんも閉めちゃうし、どうなるのかなあ?

    ムスターファーというネコもここに。

  9. ふなき

    four mileさん、
    この文体も中毒的であります。
    私たちサーファーは物質的ではなく、精神的に満たされているのですね。
    サンディエゴの波はいかがですか?

    よしさん、
    見た目旧式ボードでものすごいパワフルな波に乗ってきました。
    喰らいましたが、その分すごい波も得ました。
    名誉名誉。(笑)

  10. ふなき

    markee.さん、
    プルメリアもうすぐ届きますよ。
    外見がフェラーリで中身AE86というのもいいなあ、と思っています。

  11. マーボー

    良い時代でしたねー。
    グライド、豪華キャストでしたね。
    三浦君板大事にするんだけど、たまーにロアインサイドのショアブレイクに当てこんで板折っちゃうんですよね。基本は白いウェット、ライディング中は拳をがっちり握って手錠ムーブメント。あの時代に戻りたいなぁ、皆波乗り上手でしたね。松岡君のロアのチューブ、モリタンの正面インサイドのスープワーク、ナチ君のパワフルなライディング、ジョージ君のパワフル&ヘビーなゴリラーチックなライディング。今とは違って砂浜も残ってたし、、、。

    あ、あと僕でも解からない英語、沢山ありますよ。今日もこれから「総勘定残高試算表」とか「繰り延べ税金資産」とか痺れちゃう単語をカンニングシート片手に通訳です。

  12. ふなき

    マーボーさん、
    ドロップアウトはエドさんに笹原さん、土井さん、マーボーさんにマーカスさん。
    ナガヌマは下田さん、大友さんに抱井さん、オガマさんに下重さん、しげにかめにまるちゃん、税所さん、水尻さんにダーワーさん、そしてナガヌマさん。他16名。
    坂巻商店の調理パンマカロニサラダパン90円を頬張りながら、波を見ていたっけ。
    あとむさんにそうちゃん、カツカワミナミさんに美佐くんに岡本さん、デビルマン、よっちん先輩、法王にタキローと、他28名以上。
    今から思うとオールスターですね。

    markee.さん、
    プルメリアをお楽しみに!

  13. じーじ

    見た目旧式好いですね!
    以前ベランダに置きっぱなし計画があったのですが、もったいなくてやめました!
    春ASRあたりでの登場期待しています。

  14. ふなき

    じーじさん、
    考えたのは
    1. 3年日焼け風
    2. 海の家で貸し出された風
    3. 喫茶店の看板風
    4. サンエーハイツ101号室
    (〒251-0032 神奈川県藤沢市片瀬3丁目9−22)
    5. 鈴木畳店
    でした。
    ASRでぜひ!